2008年2月1日

ヘッドハンティングの現状 専門性高い若手人材にスカウト拡大 グローバル化、技術革新が市場創出

これまでは、主に経営幹部の採用に活用されてきたヘッドハンティング(サーチ)だが、いまサーチの対象が若年層に広がりをみせるようになっている。どのような人材がスカウトの対象となっているのか、エグゼクティブ・サーチによる採用事情を人材紹介会社に取材した。

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 ヘッドハンティング会社のサーチファーム・ジャパン(東京都千代田区、古賀辰男会長)と楽天リサーチ(東京都品川区、森学社長)が共同で実施した「企業のヘッドハンティング利用動向調査」で、ヘッドハンティングで採用したいポジションが、「部長クラス」(35.5%)、「研究開発職」(25.3%)、「事業部長」(24.3%)、「課長クラス」(22.8%)、「営業」(22.8%)、「スペシャリスト」(20.0%)であることが判明した。
 これまで主流であった「役員クラス」でのヘッドハンティングの利用はわずか10.5%。ポジションでいえば部長・課長クラスが多数を占めるようになってきている。
 グローバル化の流れを受けて急増しているM&Aや事業再編による事業の再構築では多くの場合、経営陣の刷新が行われる。新体制におけるCEO・COOなどの経営者や経営幹部が求められるため、一般的にはこうしたケースでサーチが活用されることが多い。
 M&Aや事業再編にかかわる人材採用事情について、ヒューマン・アソシエイツ(東京都港区)の渡部昭彦社長は、「最近は現経営陣を残したまま、MBO(マネジメント・バイ・アウト)で経営の建て直しを図るケースが多い」と話す。
 これまでは、企業が経営不振に陥り、ファンドの資金が入ると経営陣を刷新するやり方が主流だったが、CEOをはずしてしまうと、ファンド受け入れを嫌う企業が増えることが要因だという。
 そのためエグゼクティブ層で求められる人材は、「営業・マーケティング系はいつでも求められているが、ガバナンスを重視して、CFOや内部監査に対応できる人材が必要とされるようになってきている」(渡部氏)。
 CFOや内部監査では、経験や専門的な知識が重視されるため、必然的に40後半~50歳前半で、年収1千万超の人材が中心となってくる。
 新しい事業立ち上げや外資系企業の進出でスカウトが拡大していると話すのは、イーストウエストコンサルティング(東京都千代田区)の室松信子社長だ。
 外資系コンサルティング、IT会社でマーケティング・営業部長、エンジニアの採用が拡大しているという。こうした分野でのサーチのポイントは、経験や専門性と同時に、「責任や重要な役割・ポジションを任せてくれる仕事に、やりがいやロマンを感じて、チャレンジしていこうとするマインドをもった人材」(室松氏)を発掘することだ。
 規制緩和が進んだ金融業界でもサーチの利用が増えた。グローバル化により、ファンドマネージャーやトレーディングの専門家の求人が拡大した。
 技術革新でサーチ案件が急増しているのがインターネット業界だ。今年1月リクルートのグループ会社となったCDS社(東京都渋谷区、サイモン・チャイルズ、ジェイソン・ダカレット代表取締役)は、インターネット上のオンラインメディアという新しい分野に着目し、「オンラインメディア&テクノロジー」という新たなチームを設けた。
 google、MSN、Yahoo! などネットメディアに代表されるように、これまでのメディア利用がインターネットにシフトしつつある。「ITと消費財の中間に、業界をまたいだ様々なネットマーケティング分野が出現しつつある。
 広告業界では、マス広告とインターネットの融合が進んでいる」と同社コンサルタントの安田祐介オンラインメディア&テクノロジー プラクティスリーダーは解説する。
 電通総研の調べでは、2005年のインターネット広告費は2808億円、06年に3630億円(前年比129.3%)を記録して続伸。さらに2011年には7558億円と06年の2倍以上に市場が拡大すると予測されている。
 「ネットメディアはスピードが速い。特にネット広告では、宣伝分野に人脈があるマーケティング・マネージャーで、チャレンジ精神があり、メンタル的にも強い人材が求められている」(安田氏)。
 採用ポジションは専門職も多く、経験10年程度の30~39歳までの人材で、大手企業から転職した場合でも200万円程度の年収アップが可能だという。
 IT・ソフトウェアの分野でも若手人材のスカウトが進んでいる。日本におけるソフトウェア技術者は増加しているのだが、家電、自動車などあらゆる分野で広がるソフトウェアの需要にエンジニアの数が追いつかない状況が続いている。
 マイクロソフト、オラクルなどのIT関連の資格も多く、他の職種と違って比較的スキルを測りやすいため、20代の若手エンジニアにも声がかかるようになっている。
 サーチ会社の老舗である東京エグゼクティブ・サーチ(東京都千代田区)の加藤春一社長は、「IT、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどの新規プレーヤーや金融、株、為替のディーリングでは、高度化・専門化された多様な能力が必要とされている。年齢・性別に関係なく、グローバライゼーションの中で競争に勝つために、日本の企業も優秀な人材を獲得しつつある」と指摘する。
 グローバル化と技術革新は、新たな成長分野や新サービスを生み出しており、高度な専門性を持つ人材の獲得が不可欠だ。若年層に対するスカウトは、高い専門性とチャレンジ精神を持った人材が対象となっている。
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