2017年5月22日

時間外労働の上限規制に人事の危機感高まる

政府の働き方改革で注目されていた「時間外労働の上限規制」の議論が進み、2年後には法改正が行われる予定だ。生産性向上や社員の健康確保に向けて、形式的な残業規制にとどまらない人事の取り組みが必要になっている。(文・溝上憲文編集委員)

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残業の上限は「月100時間未満」で決着

 安倍政権の働き方改革実現会議が「働き方改革実行計画」を発表した。 最大の目玉は「時間外労働の上限規制」と「同一労働同一賃金原則」の法制化であることは間違いない。

 これまで法的に青天井だった残業時間に年間720時間(月平均60時間)を上限とする労働基準法の改正議論がすでに厚労省の審議会で始まっている。一方、同一労働同一賃金については昨年末に「ガイドライン案」が出されたが、ガイドラインとして施行されるのは法改正の施行時(工程表では2019年4月予定)である。
 その法改正の議論は今後、労働政策審議会の労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法を所管する各分科会の下に「同一労働同一賃金部会」を新たに設置して行われる。ただし、裁判の立証責任を使用者側に持たせるのかどうかを含めて、法律案を巡っては労使の利害が絡むいくつかの論点が存在し、その行方は混沌としている。

 それに対して上限規制は働き方改革実現会議で大枠が決定され、最後は1カ月の残業時間の上限を100時間までなのか、それ以下にするのか揉めていた労使の議論が続いていた。
 その結果、安倍晋三首相が日本経済団体連合会(経団連)の榊原定征会長、日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生会長と首相官邸で会談を行い、残業の上限を「月100時間未満」にするように要請したことで決着した。

 その内容は現行の労使で結ぶ協定(36協定)の限度基準告示である月45時間、かつ年間360時間を法律に明記し、これを超えた場合は罰則を科す。さらに特例として、次の労使合意内容も労基法に明記することになった。
1.年間の時間外労働は月平均60時間(年720時間)以内とする
2.休日労働を含んで、2カ月ないし6カ月平均は80時間以内とする
3.休日労働を含んで、単月は100時間未満とする
4.月45時間を超える時間外労働は年半分を超えないものとする
 この上限を超えたら罰則が付くことになる。つまりに特例として労使協定を前提に年間の時間外労働時間の上限を720時間とし、その範囲内で月45時間を超えるのは6カ月までとし、繁忙期は「2~6カ月の平均で80時間を超えない」かつ「きわめて忙しい1カ月の上限は100時間未満」とする歯止めをかけることになった。

 つまり残業時間が年間720時間を超えた場合に限らず、1カ月100時間超、2カ月や3カ月平均でも80時間を社員が1人でも超えた場合、確実に摘発・送検される絶対的な上限規制になる。
 だが、この規定が法制化されても企業が運用するとなると混乱するかもしれない。

 特例の年間720時間の様々な条件に加えて「時間外労働」と「休日を含んで…」の2つに区分されている。なぜか。労基法は法定労働時間を超える時間外労働と法定休日の休日労働を別の規定で規制している。時間外労働という場合は休日労働を含まない。
 一方、いわゆる過労死認定基準が時間外・休日労働を含めたものとしているため2カ月80時間、単月100時間未満は「休日労働を含む」としたものだ。

 法律の根拠はともかく、企業の労務担当者には分かりにくい。時間外労働時間と休日労働時間を分けて会社の上限時間を設定しなくてはならなくなる。

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