2018年11月29日

2018年 人事動向の振り返り

2018年は無期転換ルールの本格化、同一労働同一賃金で初の最高裁判断、働き方改革関連法の成立と、対応に追われた人事担当者も多いのではないか。本稿では今年1年間の人事動向を振り返る。(文・溝上憲文編集委員)

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2018年は日本の雇用のあり方を見直す転機の年

 人手不足を反映し、2018年は過去最高の有効求人倍率となった。有効求人倍率は今年5月以降、1.6倍台が続き、9月は1.64倍となり、1974年以来の高水準となった。正社員も1.14倍で過去最高となった。

 生産年齢人口が減少し続ける中で、従来の日本の雇用のあり方を見直す転機の年でもあった。その一つは4月1日から本格化した無期転換ルールだ。改正労働契約法18条は有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えると労働者に無期転換権が発生する。今年4月はその5年目にあたる。

無期転換ルールの対象者は893万人

 4月に無期転換ルールの対象となる5年超の有期契約労働者は893万人という調査もある(リクルートワークス研究所)。だが、無期転換ルールを知らないパート社員や契約社員も少なくない。それに便乗し、周知しないでスルーしようという企業もある。

 中堅飲食業の人事部長は「事前に想定問答を用意するなどしっかりと準備し、有期のパート・アルバイトを対象に説明会を開催したが、なんとほとんどが無期転換ルールを知らなかった。飲食・物販業界には“寝た子を起こすな理論”というのがある。有給休暇が取得できることも知らないアルバイトも多く、黙っていれば全然申請してこない。実際に業界内には無期転換でも同じように周知しない企業もある」と語る。

 連合や産業別労働組合は今春闘で無期契約転換だけではなく、正社員化や処遇向上を目標に掲げた。だが、組合員約35万人を擁する機械・金属労組のJAMの幹部は「処遇向上を訴えても大手労組の役員ですらも正社員化は無理だし、処遇改善も難しいと反発しているのが実状だ。中小企業の現場は女性事務員が多いが、無期転換の周知すらされていない可能性もある」と実態を明かす。

同一労働同一賃金で最高裁が初判断

 その一方で国会では「時間外労働の罰則付き上限規制」「同一労働同一賃金」「高度プロフェッショナル制度」などを盛り込んだ「働き方改革関連法」が6月29日に可決・成立した。今年の秋から時間外労働の上限規制などの改正労基法、同一労働同一賃金に関わるパートタイム・有期雇用労働法と改正労働者派遣法の施行に向けて政省令や指針が整備された。

 また、同一労働同一賃金に関しては6月1日、正規社員と非正規社員の待遇差を巡って争われていた長澤運輸・ハマキョウレックス訴訟の最高裁判決が下された。とくに定年後再雇用者の賃金を引き下げることの是非が争われた長澤運輸訴訟は、賃金減額は不合理と認定した一審判決が出た後、2審判決は再雇用者の賃金減額は社会的に容認されており、不合理ではないとの逆転判決が出され、最高裁の判決が注目されていた。

 最高裁は定年後再雇用の嘱託社員と正社員の賃金格差の大半については不合理とはいえないとした。だが、最高裁は判断の基準として、定年後再雇用者について労働条件の違いが「不合理な格差」にあたるかどうかを判断する際は、労働契約法20条の「その他の事情」として考慮されることとした。これは同一労働同一賃金の均等・均衡待遇の考慮要素である職務内容、転勤などの配置の変更範囲、その他の事情の3つのうち「その他の事情」に定年後再雇用が含まれるとした。

 もう一つは、正規と非正規の労働条件の違いが「不合理な格差」にあたるかどうかを判断する際は、両者の賃金の総額を比較するだけではなく、個々の賃金項目の趣旨を個別に考慮して判断すべきとしたことだ。つまり、有期と無期の賃金の総額を比較するだけではなく、個々の賃金項目の性質・目的に照らして判断しなければいけないと言っている。実際にハマキョウレックス事件では争点となった手当を趣旨・目的に照らして個別に審査し、皆勤手当、無事故手当、作業手当、給食手当、通勤手当を非正規に支給しないのは違法と判断した。
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