2019年6月12日

【会員限定記事】パワハラ、痴漢、不倫・・・、企業が直面する社員の不祥事への対応実態

パワハラ防止法の成立を受け、企業は今まで以上に社員犯罪やコンプライアンス違反などへの厳しい対応を迫られる。社員の不祥事にどう対応しているのかを企業の人事担当者に取材した。(文・溝上憲文編集委員)

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パワハラ防止法成立

 自動車メーカーの不正検査問題をはじめ企業の不祥事が目立っている。また、パワーハラスメント(パワハラ規制)やセクハラ規制の強化策を盛り込んだ法律が通常国会で成立するなど、従来以上に企業に対するコンプライアンスの視線が厳しくなっている。

 民間企業では社員の不祥事に対しどのように対応しているのか。すでに社内にパワハラ規制を設けている会社も少なくない。大手食品メーカーの法務課長はパワハラをした社員の処分についてこう語る。

 「すでに就業規則に『職務上の地位や人間関係の優位性において業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的に傷つける行為をしてはいけない』という規定がある。でも社員のパワハラの通報のうち、明らかに人権侵害のパワハラは半分、残りの半分は言われた本人も責任があり、処分まで発展しないケースだ。部下を育てたい思いで上司が多少きつい言い方をした場合は注意だけに留める。でもなかなか部下は納得しない。処分されるのは継続的に暴言を吐き、被害者だけではなく周囲もその人の言動に嫌な思いをしている場合に限る。懲戒解雇まではいかないが、減給処分に至るケースもある」

中には上司を追い落とすためのウソも

 ただし、多くの上司はパワハラの事実を否定する。

 IT企業の人事部長は「パワハラの加害者はどんなにひどい言動をしていても大体『僕はそんなことは言っていません』と否定する。そのためにも被害者本人や周囲の信頼できる人の話を事前に聞いて問いただす。具体的な発言した日時の状況をぶつけていくと、上司もしぶしぶ認める。事実関係がはっきりし、周囲にも悪影響を与えていたら降格処分もあり得る」と指摘する。

 だが、中には上司を追い落とすためにウソの告発をする場合もあるという。製薬の人事部長はこう語る。

 「気に食わない上司を追い出すためにパワハラをされた、という通報があった。しかも説得力を持たせるために複数の社員が同時に告発してきた。だが、よく調べてみたらパワハラの事実はなかった。告発した社員に『どういうつもりで告発したのか』と問い詰めて、そのときは注意だけにした。ただし、同じことをやったら『職場の秩序を乱した』という理由で厳正に処罰するからと警告した」

逮捕された社員は懲戒解雇か諭旨解雇が主流

 会社の法律である就業規則には犯罪の種類に応じて処罰を定めた懲戒規定がある。最も重いのが懲戒解雇、続いて諭旨解雇、降格、減給、出勤停止、譴責だ。

 懲戒解雇は「刑法その他刑事罰に該当する行為」に限定され、犯罪事実が明白になれば解雇される。一般的には社員の告発があれば社内の倫理委員会や懲罰委員会に報告し、それから調査に入る。いきなり加害者に接触することはなく、被害者や周囲の人間の話を聞いて証拠を固めてから本人を尋問するという流れだ。

 最近では総合商社の社員が就活中の女子学生に対し性的暴行をしたことが話題になったが、当然、懲戒解雇となる。

 製薬業の人事部長は「社員が刑事事件を起こして逮捕されると懲戒解雇か諭旨退職になる。比較的軽い罪でも諭旨退職を迫るが、それでも聞き入れない場合は懲戒解雇にする。たとえば児童買春で逮捕されたら即解雇だ」と指摘する。
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