2020年1月6日

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答3)

2020年の人材需要と採用の課題を、企業の人材採用を支援する主要コンサルティング会社の事業責任者を対象にアンケート調査で聞いた。【回答社名:Apex、キーンバウム ジャパン、エリメントHRC、ロバート・ウォルターズ・ジャパン、パーソルキャリア】

回答(1)企業の人材需要

回答(2)企業の人材採用の課題

回答(3)人材業界の展望、自社の事業・サービス展開

 (26085)

Apex 橋本和久 代表取締役

(1)採用ニーズは総じて前年よりやや減少すると思われるが、当社が得意とする不動産金融業界の採用意欲は引き続き旺盛だ。国内では低金利に悩む地銀等の金融機関から不動産をはじめとするオルタナティブ・アセットへの投資資金が流れ込み、また調達金利が低い日本の不動産への海外投資家の意欲も衰えてないことが要因となっている。
 アセットクラス別に見ると引き続きホテル・物流施設に投資するファンドからの求人数が多く、太陽光などのインフラ施設に投資するファンドから求人が増えた。職種別に見るとそれらアセットの取得(アクイジション)業務と取得後のアセットマネジメント業務の採用意欲が高い。

(2)優秀な人材は複数の企業から内定を獲得するケースが大半であり、せっかく内定を出しても他社の内定を受諾され逃げられてしまうケースが増えている。投資検討物件の決済同様に人材採用においても意思決定のスピードが重要であるが、その重要性を理解しながらも臨機応変な対応ができず小回りの利く企業に競り負けている。
 売り手市場においては受け身ではなく書類選考の段階から確度の高そうな人材に関しては、1次面接を通過すると仮定し事前に面接官にスケジュールを抑えたり、人材の他社の面接進捗状況を随時確認するなど積極的な対応が求められる。

(3)人材業界は、ここ数年は右肩上がりに売上を伸ばしてきたが2019年夏頃から売上を徐々に落としている大手エージェントもあり、2020年にはその余波が中小エージェントにも及ぶと考えられる。当社は金融・不動産・インフラ・コンサル・ITの領域をカバーしてきたが事業会社を担当するコンサルタントが最近入社したこともあり、今後は紹介第1部(金融・不動産・インフラ)、紹介第2部(コンサル・IT・事業会社その他)の2部門に編成し、より機動的に動きで顧客のニーズに応えていきたい。
 (26088)

キーンバウム ジャパン/ K.J. コンサルタンツ 鈴木悦司 代表取締役社長

(1)中国や韓国の景気後退、また消費増税の影響で工作機械などの投資財・消費財共に売り上げ減が予想され、昨年のような企業の採用意欲の高まりは期待できない。ただし、売り手市場が続くエンジニアの職種については、技術イノベーションの製品応用などで引き続き高いレベルの人材需要が続くと思われる。最近の傾向としてオープンイノベーションの必要性の高まりを背景に、欧米では重要な産業分野であるエンジニアリングサービスの業種が国内でもようやく認知され、採用意欲も旺盛だ。

(2)マクロの視点から労働市場を俯瞰すると、生産年齢人口が7629万人(2015年)から7341万人(2020年)に減少する一方、労働力人口は6625万人(2015年)から6830万人(2018年)と3%増となった(総務省)。これは女性、高齢者の就業率が増加したことが背景にある。企業の人材採用において、女性、高齢者就業者、急増している外国人就業者にとって快適で魅力的な労働環境、労働条件の整備が重要課題となっている。

(3)これまでの売り手市場一辺倒の人材市場から変化の兆しが現れるのではないか。そんな中で、人材紹介各社とも切磋琢磨し、サービス、ノウハウの向上に努めることができればと思う。
 当社としては引き続き、海外市場への展開を企図する国内中小企業へのグローバル人材の発掘、また当社の持つグローバルネットワークという強みを活かし、海外での現地マネジャーの採用のお役に立ちたいと念じている。また、在日外資系企業に対しては、本社のマネジメント、担当部署と円滑なコミュニケーションが可能な「異文化コミュニケーション能力」に富んだ人材を発掘することを目標としたい。
 (26092)

エリメントHRC 清水潤次 執行役員 Principal

(1)2019年は「内定辞退率予測」に端を発するAI活用のリスクなどが問題となった。新卒大量採用においては、エントリーシートでのAI活用などは慎重に検討すべきである。2020年の人材需要では特に中途採用のマーケットは引き続き堅調に推移していくと思われる。上記のようなAI活用にはモラルや課題感は残すが「IT」を駆使した人材需要は、IT業界のみならず、多方面において需要はさらなる加速が予想される。

(2)以前から指摘されているIT人材不足をどう補填していくか=解決していくかは2020年問題含めて、各企業の課題。ヤフー・LINE統合は「GAFA」「BAT」とどう向き合っていくかは見ものであり、期待感もある。優秀なIT人材は引く手あまたな状態であるため、待遇や働き方は然ることながら、企業としての独自優位性を出していかねば、この戦国時代を生き抜いていくのは難しいであろう。

(3)専門職人材やハイキャリア層は引き続き活性化していく。ダイレクタークラスであれば、50代半ば~後半でも積極採用している企業も複数あり、シニア・エグゼクティブクラスの一定需要も継続。また、昨今のバイオベンチャーや医療×ITスタートアップの動きが活性化~開発部隊の強化・拠点の拡充等、さらなる活発化が見込まれる。外資系医療機器メーカーはロボティクス事業へのドライブが加速していく。
 (26175)

ロバート・ウォルターズ・ジャパン ジェレミー・サンプソン 代表取締役社長

(1)東京五輪を目前に控える日本では、ラグビーW杯が開催されたことも寄与して国際化がさらに加速している。外資系企業や海外事業の進む国内大手企業はもとより、あらゆる職場で、英語に堪能で国際感覚の優れたグローバル人材の需要が高まっている。クラウドコンピューティング、AI、モビリティ(コネクテッドカー・自動運転)、医療テック、フィンテックなど、新興分野での人材採用の盛り上がりは継続するだろう。
 IT・通信・オンライン業界では開発者、セキュリティ・スペシャリスト、エンジニア、コンサルタント、営業人材への引き合いは大変強くなっている。オンライン分野では特にスマホ決済サービスの開始が相次ぎ、クレジットカード会社など金融分野の出身者、アプリ開発者、セキュリティーの専門性が高いなど多様な経験・スキルを備えた人材がこの分野に移る動きが見られている。
 5Gなどによる先進技術の勢いは製造業などにも広がり半導体、化学・素材、機械、ロボティックス、サプライチェーン分野の人材ニーズにも及んでいる。特に、製造業全域では、テクニカルサポート職、フィールドサービスエンジニア職など技術的な専門性を備えた営業職の求人が引き続き増えるだろう。
 高齢化社会の日本では認知症、アルツハイマー病などの中枢神経系、腫瘍分野(オンコロジー)の診断・治療、ライフサイエンス分野などを中心にヘルスケア業界での人材需要も高止まりが続いており、レギュラトリーアフェアーズ、メディカルアフェアーズ、安全性情報などを専門とするスペシャリストの引き合いは引き続き強まるだろう。人生100年時代という言葉とともに健康・美容志向が広がり、栄養補助食品・飲料の原料、オーガニック原料を扱う化学・原料メーカーでも求人を増やしている。
 データの集積・利活用の広まりによる個人情報保護法の順守や、内部管理・セキュリティー対策の不十分による仮想通貨・スマホ決済での問題を受けて厳格化が進む金融規制などに対応するようセキュリティー、監査、リスク・コンプライアンス関連職では専門性の高い人材の採用が増えている。この傾向は今年も続くだろう。

(2)長期的な人手不足が深刻で、英語を扱えるバイリンガルの少ない日本では、引き続き国際感覚と語学力に優れた日本人、そして技術職などの高い専門スキルを持った外国人の売り手優勢な環境が続くことが見込まれる。優秀なトップ人材の獲得に際しては、内定通知までの採用プロセスの迅速化・効率化がとても効果的。
 また、引き合いの強い人材ほど、報酬面の充実だけではなく専門スキルをアップデートし続けられる環境を好む。そのため、ラーニング&デベロップメント(人材育成・開発)の機会・環境を明確に提示し、売り込むことが大切。新規プロジェクトの立ち上げや新規参入時などに、スキル・経験の豊富な専門人材を確保する際に、まずは短い採用プロセスで派遣社員として確保し、その後に能力・業務成績を見極めて正社員に登用することで人材確保に成功している企業も多くみられる。

(3)当社では世界最大級の日英バイリンガル人材データベースと40の専門分野に特化したチーム体制で、見識の深いコンサルタントが企業の採用ニーズに寄り添ったトータル・ソリューションを提供する。
 (26097)

パーソルキャリア 勝野大 常務執行役員 エージェント事業本部長

(1)昨年度に続き、製造業を中心に企業の人材需要は上がらない見込み。

(2)専門職・管理職のニーズは比較的高い中で、対象者の発掘が引き続き企業の課題となる。採用チャネルが増える中で、取捨選択と効率的な採用体制の構築が必要となる。

(3)昨年度後半から業界自体がダウントレンドの兆しが見られ、今年度も明確な復調の材料がない中、企業の人材需要に沿ったサービスの提供がテーマとなる。

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(1)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(1)
回答社名:アクシアム、KMF PARTNERS、ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス、アンテロープキャリアコンサルティング、フジキャリアデザイン

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(2)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(2)
回答社名:イーストウエストコンサルティング、ジェイ エイ シー リクルートメント、キャリアエピソード、島本パートナーズ、A・ヒューマン

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(4)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(4)
回答社名:リクルートキャリア、ヒューマンリソシア、みらいワークス、コンコードエグゼクティブグループ、レックスアドバイザーズ

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(5)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(5)
回答社名:リネアコンサルティング、エンワールド・ジャパン、パソナ、経営者JP、MS-Japan、プライマリー・アシスト
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