2015年6月30日

新卒・中途採用の売り手市場化で始まった人材採用の新手法

慢性的に人材が不足する時代が訪れつつある。リーマン・ショック後の買い手市場はなりを潜め、景気回復とともに企業の求人数が急増して企業の人材採用は一層困難になっている。売り手市場化で始まった採用手法の変化を取材した。

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新卒採用の手法として注目されるインターンシップ

 新卒採用では、2016年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率は1.73倍で前年の1.61倍より0.12ポイント上昇した(リクルートワークス調べ)。
 応募者が集まりすぎる大手の人気企業はこれまで通りの採用方針で十分だろうが、知名度の低い企業や中小ベンチャー企業では昨年と同様の採用活動では人材が集まらない。採用計画数を充足させるためには、採用手法の見直しを含め一層の工夫が必要だ。
 今年、新卒採用の手法として注目されているのがインターンシップだ。マイナビの調査によれば、2016年新卒採用から22.5%の企業が体験型インターンシップを新たに始めている。
 参加した学生に会社の実態をより深く理解してもらえる、会社と学生双方のミスマッチをなくすことができるなどがその理由だ。インターンシップの実施で重要なことは内容の充実度と実施体制だ。単なるワンデー・インターンシップでは、エントリーを得るだけの結果に終わってしまうだろう。
 社員約90人、上場を目前に控えたインターネット関連のベンチャー企業では昨年からインターンシップに取り組み始めた。
 2016年新卒採用は12人の入社を計画し、大手企業の内々定出しが集中することが予想される8月までに、25%の内定辞退者を想定して15人に内定を出す予定だ。
 5月にはすでにMARCHクラスの学生10人に内定を出し内諾を得た。このうちの6人は昨年のインターンシップへの参加者だった。この規模の企業でインターンシップ参加者6人に内定を出すことができたのは大成功といえる。
 同社では、今年から新卒求人サイトへの掲載を取りやめた。採用担当者は「少しでも認知されている企業であれば会社情報を検索してエントリーしてもらえますが、ほぼ無名な当社ではそもそも検索されることもなく、あまり効果がありませんでした」と話す。
 一方で、まずは会社をよく知ってもらうため始めたのがインターンシップだった。インターンの募集はベンチャーへの人材支援を専門にしている人材会社に依頼し、ベンチャーを志向する学生20人強から応募があったという。
 インターンシップの期間は5日間で、経営理念や具体的な事業の説明のほか事業に関連する社長主催のビジネスコンテストなどを実施している。インターンシップ期間は4人程度のグループに若手社員1人が付き、たえずコミュニケーションを図ったという。
 「若手社員は学生との年齢や考え方も近く相談しやすい存在ですからインターンシップ期間中に信頼関係ができ、連絡先を交換したりして実際に就職活動に入るまで就職の相談にのるなど関係性を深めていました」(採用担当者)。
 この若手社員はインターンシップ期間終了後には、本来の業務以外に2016年新卒採用チームのリクルーターとして採用活動に携わり、インターンシップ参加者を中心に学生をスカウトして内定につなげた。内定出し後も入社まで引き続きサポートする。
 インターンシップをきっかけに若手社員が学生と信頼関係を築けたことが内定につながっている。「やる気のある学生の就職の決め手となるのは給与や福利厚生ではなく、経営理念への共感やこの人と一緒に働きたいという思いです」と採用担当者は指摘する。
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