2017年2月9日

2017年 労働法改正 人事担当者が押さえるべき注目ポイント

2017年は人事・労務に関する重要な法改正も行われる予定だ。その中でも最大の注目点は何といっても長時間労働の是正と同一労働同一賃金を目指した動きだろう。法改正によって何が変わってくるのか。人事担当者が押さえるべき注目ポイントを解説する。(文・溝上憲文編集委員)

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政府は時間外労働の上限を規制する方針

 安倍首相を議長とする「働き方改革実現会議」で時間外労働の上限を規制する方針が打ち出された。安倍首相も「時間外労働の上限を何時間にするかがポイント。しっかり検討し、必要な法案をなるべく早く提出したい」とことあるごとに発言している。

 上限規制とは労基法36条に基づく労使協定、いわゆる36(サブロク)協定における時間外労働規制の見直しである。36協定には1週間15時間、1カ月45時間、1年間360時間という限度時間が設定されている。
 だが、特別延長時間に関する「特別条項付36協定」を労使で結べば限度時間を超えて事実上無制限に働かせることができる。
 実際に厚生労働省の調査では1カ月の特別延長時間の内訳で最も多い時間帯は月間「70時間超80時間以下」でその比率は36.2%。ところが過労死基準といわれる「80時間超100時間以下」が16.0%、さらに「100時間超」の会社が5.5%も存在する。しかもその割合は大企業ほど高い。

 EU加盟国では「7日ごとの平均労働時間が、時間外労働を含めて48時間を超えない」(EU労働指令)こととされている。この48時間は日本の法定労働時間とは意味が違う。
 残業時間を含めて法定労働時間を超える48時間以上働かせてはならないとする“絶対的規制”だ。日本のように無制限ではなく、週8時間の残業しか許されないのである。

 今回の上限規制を含む労働時間管理のあり方については現在、厚生労働省の有識者による検討会で審議されているが、与党の自民党も独自の検討を行うことにしている。
 では時間外労働の上限はどうなるのか。現行の36協定の1カ月45時間が1つの目安になるだろうが、業種・職種・企業規模によって時限的な若干の例外規定を設けることも考えられる。

 ある政府関係者は「上限規制は経営側だけではなく、労働組合も残業の極端な抑制を考えていない。落としどころは過労死ラインの月80時間になるだろう」と言うが、まだ推測の域を出ていない。

過労死基準を超えている割合は大企業ほど高い

特別条項付36協定のある事業場の1カ月の特別延長時間

特別条項付36協定のある事業場の1カ月の特別延長時間

(出所)厚生労働省「平成25 年度労働時間等総合実態調査」

労基法改正案と上限規制をセットで国会提出か

 政府の「ニッポン一億総活躍プラン」の工程表によると制度の検討期間は18年度までとされている。安倍首相の最近の発言を聞いていると、17年中の改正法案の国会提出もあり得るかもしれない。

 だが、そうなると問題になるのはすでに国会に提出されている労働基準法改正法案をどうするかである。同法案には有給休暇の取得の義務付けをはじめ「高度プロフェッショナル制度の創設」と「企画業務型裁量労働制の対象者の拡大」が盛り込まれている。
 高度プロフェッショナル制度とは、管理職を除く労働者の時間外・深夜・休日労働に関する労働時間規制の適用を外そうというものだ。対象業務の例としては金融商品の開発、ディーリング、アナリスト、コンサルタント、研究開発業務など。年収要件は1075万円以上とされている。

 もう1つの企画業務型裁量労働制の対象者の拡大は、現行の「企画・立案・調査・分析」業務に加えて、①提案型営業と②プロジェクト業務の2つにも適用し、労働基準監督署への報告など手続きも簡素化しようというものだ。
 政府関係者は「今の労働基準法改正法案を修正するのか、一度引っ込めて出し直すのか、廃案にして労働時間に上限をつけることを主眼にした法案として出すのか、決まっていない。場合によっては労基法改正案に上限規制を入れたものを17年の臨時国会に提出するかもしれない」と指摘する。

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