2019年8月2日

【会員限定記事】「年休の時季指定義務」と企業の実務対応

本稿では年次有給休暇の時期指定義務において、企業がどのように対応すべきかを解説します。

 (25168)

年休の時季指定義務とは

平成31年4月、改正労働基準法(以下「労基法」といいます。)が施行され、使用者は、年10日以上の年次有給休暇(以下「年休」といいます。)が付与される労働者に対して、そのうち5日の年休について時季を指定して取得させることが必要になりました(年休の時季指定義務〔労基法39条7項〕)。

 この時季指定義務の対象となる労働者は、労基法上の年休が10日以上付与される労働者で、管理監督者や有期雇用労働者、パートタイム労働者も、労基法上の年休が10日以上付与される場合には、時季指定義務の対象となります(パートタイム労働者については、週所定労働日数が4日のパートタイム労働者は勤続年数3年6カ月以上、週所定労働日数が3日のパートタイム労働者は勤続年数5年6カ月以上の場合に、時季指定義務の対象となります〔労基法39条3項、労基法施行規則24条の3参照〕)。
この10日の年休は、基準日に付与される年休の日数が10日以上であることとされていますので、前年度の基準日に付与され未消化の年休と合算して初めて年休の日数が10日以上になる場合は、時季指定義務の対象ではありません(厚生労働省労働基準局 平成31年4月〔改正労働基準法に関するQ&A〕3-2)。

 また、この基準日とは、労基法39条7項では、「継続勤務した期間を6カ月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日」とされています。すなわち、この法定の基準日は、雇入れの日から半年後(4月1日入社であれば10月1日)であり、使用者は、10月1日から翌年の9月30日までに、5日の年休について時季指定をしなければなりません(図1)。
図1:基準日と期間の考え方

図1:基準日と期間の考え方

(出所)厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」より抜粋
以上の概要を整理すると、次の通りです。

使用者は、
 ① 労基法上の年休が10日以上付与される労働者に対して、
 ② 年休が付与される基準日から1年以内に、
 ③ 労基法上の年休のうち5日について時季を指定して取得させることが必要

 なお、半日単位年休については、労働者に対する意見聴取を行った際に労働者から半日単位の年休取得の希望があった場合に限り、時季指定が可能となり、この場合、年休は0.5日として取り扱います(前掲Q&A3-3)。

 他方で、時間単位年休については、使用者による時季指定はできません(前掲Q&A3-3)。

使用者による時季指定

(1) 労働者の意見聴取と労働者の意見の尊重

使用者は、時季指定を行うにあたっては、あらかじめ、その時季について労働者の意見を聴取する必要があり(労基法施行規則24条の6第1項)、労働者から聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません(同2項 図2)。

 また、使用者は、一度時季指定を行った後においても、再度、労働者の意見聴取を行えば、指定した時季を変更することが可能です(前掲Q&A3-5)。なお、労働者は、使用者が指定した時季を変更することはできません(同)。
図2:時季指定の方法

図2:時季指定の方法

(出所)厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」より抜粋

(2) 年休管理簿

使用者は、労基法上の年休を与えたときは、「基準日」、基準日から1年以内の期間における年休取得「日数」、取得した年休の「時季」(年休の取得日)を労働者ごとに明らかにした「年次有給休暇管理簿」を作成しなければならず、作成した年休管理簿を3年間保存しなければなりません(労基法施行規則24条の7)。

 なお、この「日数」には、労働者が自ら請求して取得した年休の日数、使用者が時季を指定して取得した年休の日数、計画年休により取得した年休の日数、半日単位で取得した回数、時間単位で取得した時間数を記載する必要があります(前掲Q&A3-13)。

 この年休管理簿は、労働者名簿及び賃金台帳とあわせて調製することができ(労基法施行規則55条の2)、労働者名簿・賃金台帳と同様の要件を満たした上で、電子機器を用いて磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク等により調整することも可能です(前掲Q&A3-13)。なお、ここでいう、労働者名簿・賃金台帳と同様の要件とは、①法定必要記載事項を具備し、かつ、事業場ごとに画面に表示し、及び印字するための装置を備えつける等の措置を講ずること、②労働基準監督官の臨検時等、閲覧・提出等が必要とされる場合に、直ちに必要事項が明らかにされ、かつ、写しを提出し得るシステムとなっていることをいいます(平7.3.10基収94号)。
13 件

人事向け限定情報を配信中