選考指標は二極化 「共通化」と「多様化」
もう1つの変化は面接官の選考指標の二極化だ。面接官の恣意的な判断を避けるために“目線を合わせる”共通のチェックポイントを設ける企業もあれば、あえて「一緒に仕事をしたいか」といったモノサシのみで基準を設けない企業もある。
たとえば、従来個々の面接官の判断に任せていた製薬会社は、今年から共通の基準を設定して面接に臨んだ。
その理由は「今までは見所があるとか個人的な感覚で判断を下していたが、どうしてもブレが生じてしまう。これを排除し、面接官の目線を合わせ、どのプロセスで何を見るかということを明確にした」(同社採用担当者)
同様に大手外食企業は事前に面接官研修を実施し、学生のどこをチェックするのかという基準を明確化した。
「たとえば人事面接ではオペレーション能力、リーダーシップ、ストレス耐性の有無をポイントに面接する。次の役員面接では、総合判断力や店長以外の仕事も担えるかどうか、将来的な配置も含めて本人の資質を見極めるようにしている」(同社採用担当者)
これに対し、あえて基準を設定しない企業は、目線を統一化することで同質のタイプを採用してしまうことをその理由に挙げる。
メガバンクの採用担当者は「学生はいろんな個性を持っている。必要な要素だけを取り出して人物を見極めることで、逆に見失ってしまう要素もある。面接を繰り返すことで本人の持つ長所を引き出していくことが重要だ」と指摘する。
また、面接を人事部員のみで行うというサービス業の採用担当者は「人事部員は長年の採用経験もある面接のプロ。学生一人ひとりの資質を見極めつつ、彼はどこの部署なら活躍しそうだと、多角的な視点で判断している。共通の基準を設けることは、逆に同じようなタイプの人間が集まりやすく、組織としてつまらないものになるのではないか」と指摘する。
経営環境やビジネスモデルが大きく変わる中で求める人材像が変化すれば、当然、会社を変えてくれる「変革人材」も必要になる。新たに人材指標を設ける企業もあれば、面接に数多くの他部署のリーダーを参加させる企業もある。
攻めの人材開拓 地方大学を積極訪問
もう一つの変化は、エントリーを待つだけではなく、多様な人材の発掘を目的とする攻めの人材開拓だ。首都圏以外の全国の大学を訪問し、精力的な採用活動を展開する企業が増えている。
たとえば大手食品会社の採用数は120人程度であるにもかかわらず、100校以上の大学を訪問。09年度入社者120人のうち、出身大学数は約60大学、1大学平均約2人の採用者を出した。
また、外資系大手製薬会社も採用数は営業職100人程度であるが、北海道から九州の大学を20校近く訪問。同社の採用担当者は「地方の営業拠点の要請もあり、大学訪問を強化している。
地方の大学に行くと、熱心に質問をしてくるし、眠れる原石ではないが質の高い学生も多い。こちらから待っているだけではいい人材は採れない」と指摘する。