2019年1月11日

働き方改革でHRテック導入本格化

HRテックの市場規模は拡大しており、新たなサービスが次々とリリースされている。クラウドにより安価で高機能なサービスの提供が可能であるため、今までコスト面で導入を躊躇していた中小企業も含め普及し始めている。4月1日から順次施行される働き方改革関連法への対応にもHR テックの活用が期待される。

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 近年、さまざまなメディアで目にするようになったHRテック。HRテックとは「ヒューマン・リソーステクノロジー」のことであり、採用や労務管理、組織開発、タレントマネジメント、教育・研修といった人事業務のプロセスをITに置き換えたサービスのことである。HRテックの市場規模は急速に拡大しているとされ、企業の投資額は年間2000億円に達したという試算もある。

クラウド活用により 安価・高機能を実現

 HRテックが急速に拡大してきたのは、クラウドによるサービス提供基盤が整ってきたからだ。一昔前であれば、クラウドのセキュリティーの脆弱性を危惧する声が聞かれることがあったが、ここ数年で劇的に改善しており、大手企業でもオンプレミスからクラウドに移行する動きが出つつある。

 クラウドは企業にとってコストメリットが大きい。ご存知の通り、クラウドはオンプレミスと異なり、サーバーを自社で保有する必要がない。サーバーがなければ管理者を置く必要もなく、導入・運用コストを削減したい中小企業を中心にHRテックが利活用されている。

 実際、今回の取材では、情報感度の高いベンチャー企業に導入されている例が目立った。

 ベンチャー企業の場合、人事を強化する必要性は感じているものの、それに投資する余力はそれほどない。オンプレミスであれば数百万円の初期投資は免れない一方で、クラウドであれば数百円から使えるサービスもある。

 しかも、クラウドの場合、必要な機能に絞って導入することができるため、使い勝手もよい。別の機能が必要となったら、サービスを追加すればいいからだ。

 オンプレミスの場合、いったん導入したら、解約することはなかなか難しいが、クラウドは解約も簡単に行える。中小企業を中心に普及しているのも頷ける話だ。

 HRテックは導入が安価なことに加えて高機能であることも拡大の理由だ。TwitterやFacebook、LINEに代表されるSNSやSlack、Chatworkなどのチャットツールとの連携機能のほか、求職者などが行う問い合わせに対し、自動で応答する便利な機能も備えている。

 経年で人事データを蓄積できることもHRテックの魅力である。近年注目されているタレントマネジメントを行うためには人事データの収集は必要不可欠だが、システマティックに人事データを収集するための手段がこれまで少なかった。そのため、総務・人事担当者が人力で集めるしかなかなく、膨大な手間がかかっていた。HRテックにより、この状況は一変するだろう。

総務・人事部門の 生産性向上に役立つ

 HRテックが拡大している背景はクラウド以外にもある。それは社会環境の変化だ。今後、HRテック界隈でホットな話題になりそうなのが、2019年4月1日より順次施行される働き方改革関連法だ。

 企業は今後、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務化、勤務間インターバル制度の普及促進などに対応しなければならない。法改正に対応するためには、労務管理を適切に行う必要があるのは言うまでもない。

 しかし、多くの中小企業はいまだアナログな方法で労務管理を行っているのが実態だ。

 勤怠データは紙ベースで記録し、総務・人事担当者が締め日以降、必死に残業してエクセルで集計していることも珍しくない。締めてみないと残業時間がどれくらい発生しているのかわからないケースも多く、知らず知らずのうちに従業員が過労になっていることもある。従業員の健康管理の重要性も声高に叫ばれるなか、このような状態は望ましくない。

 HRテックは、いつでもどこでも手軽に使えて情報共有もスムーズなため、企業の労務管理に貢献するだろう。前述したような、「従業員の残業時間がわからない」という課題も一掃される可能性がある。

 しかも、働き方改革が進展するなか、エクセルによる集計作業や人事データの分析作業などが効率化されるため、HRテックは総務・人事部門の生産性向上にも役立つ。人口が減少している日本において、生産性向上は喫緊の課題である。勤怠管理はもちろん、採用や人事評価など、HRテックが活躍する土壌は広いと言える。

 今後HRテックが企業に普及することで人事データを経年で蓄積できれば、AI(人工知能)を中心とした最新テクノロジーを駆使し、取得したデータを活用したさらに利便性の高いサービスが増えてくるだろう。

 今回は現在広がりつつあるHRテックサービスの最新動向について、各社へ取材を行った。

生産性向上へHRテックの活用が期待される

●働き方改革を推進するにあたって重視すべきこと(複数回答)

●働き方改革を推進するにあたって重視すべきこと(複数回答)

(出所)日本能率協会「日本企業の経営課題2017調査結果」

◆組織開発・組織変革

 人手不足が深刻化し、採用難が続くなか、従業員の定着率を上げる必要がある。そのためには、働きやすい就労環境を整えることに加えて、働きがいのある組織を開発しなければならない。組織開発のプロセスはさまざまだが、鍵を握るのが従業員のエンゲージメントだ。エンゲージメントとは、会社と従業員が一体となって双方の成長に貢献しあう関係のことをいう。

 ヒューマンバリュー社が提供する組織変革プロセス指標「Ocapi」は、チームの状態を可視化するアンケートツールでエンゲージメントの向上に役立つ。

 チームの関係や思考、行動の質の現状を示した詳細なレポートと会議進行用スライド資料を併せて提供することで、チームメンバーの自発的なアクションを促す仕組みになっている。

 従業員同士の結びつきを橋渡しすることでエンゲージメントを高めるサービスもある。それはUnipos社が提供している、ピアボーナスを簡単に実現するサービス「Unipos」だ。

 ピアボーナスとは、日常的に同僚から感謝の気持ちとして送られる少額のボーナスのこと。例えば、営業担当者が経費処理を行う経理担当者に対し、ピアボーナスを送る。こうすることで、経理担当者のモチベーションがアップし、従業員のエンゲージメントの向上が見込めるという。

◆採用

 テクノロジーを活用した採用支援サービスには、応募から選考、評価、合否判定までを一元管理する多くのツールが出ている。しかし、採用ツールを駆使しても採用難にあえぐ企業は思いのほか多い。やはり、採用ツールだけで解決できない課題があるからだろう。

 アルバイト採用では、応募から選考のプロセスで苦戦しているケースが目立つ。飲食店などでは、求人広告を出して問い合わせがあっても、マンパワー不足などから、電話に出ることも、応募者のメールに返信することもできない場合がある。こうした状況を改善する案のひとつとして、HRテックの活用が挙げられる。

 トッピ社が提供する「ラク面」は、アルバイト採用の応募受付から日程調整までの面倒なやりとりを解消するサービスだ。応募者との電話対応から面接日時の調整まで、一連のプロセスをチャットにより自動化することで、24時間365日受付することが可能だ。

 新卒採用も企業の課題だ。総務・人事担当者から「自社に適しているのはどんな人材かわからない」という声が頻繁に聞かれる。暗中模索のなかで採用活動を行ってもうまくいく可能性は低い。採用を成功させるためには、求める人材を可視化することが必要だろう。

 日本データビジョン社が提供する「TAIS」は、企業の新卒採用力を強化するツールだ。

 同サービスは、合格可能性の高い層に絞って採用の進捗管理ができる。ビッグデータをAIが分析し、学生の属性や自社に合うかを判断することで、合格可能性をランク付けして獲得すべき学生を可視化する。

 これにより自社のターゲットとなる学生を効率的に抽出することで、合格可能生の低い学生の各選考参加数を減らし、採用の手間を省くことが可能。

◆労務管理

 働き方改革関連法案の施行により、労務リスクがこれまでになく高まってきた。適切に勤怠管理を行い、従業員の労働時間を把握しつつ、健康管理措置を講じなければならない。しかし、中小企業の多くは依然として紙で勤怠管理を行っているのが実態だ。

 ソニックガーデン社が提供する「ラクロー」は、業務で利用するクラウドサービスと連携し、各種ログデータや勤怠データを取り込むことで、未払い残業や36協定違反のリスクを可視化するクラウド型の労務リスク管理サービス。勤怠データと実際の労働時間の乖離をなくすことで、従業員とのトラブルなどの労務リスクを予防することができる。

 労務リスクを管理するためには、従業員の労働負荷の状況を可視化する必要がある。メディアナビ社が提供する「ReTask」は「業務を見える化」するマルチプラットフォーム対応のタスク管理ツールだ。

 プロジェクトの進行状況と予実管理が可能なガントチャート機能や従業員の労働負荷の状況を視覚的に把握できるワークロード機能などを備え、労働負荷の状況把握に役立つ。労働負荷がわかれば、リスケジュールやリアサインが容易になるため、チームの生産性向上はもちろん、労働時間の削減も期待できる。

◆ クラウドソーシング サービス

 働き方が多様化するなか、企業と個人を結びつけるクラウドソーシングサービスが多数登場している。そんななか、企業とフリーコンサルタントを直接つなぐダイレクトマッチングサービス「VIREC」を提供しているのがRIT社だ。

 自己PRを動画で用意して人柄を事前に見ることができたり、応募者のレジュメを複数の面接官で簡単に共有できる仕組みなど、クラウドソーシングサービスでは難しいマッチングの精度を高める仕様になっている。動画を使用した面接機能もある。HRテックの進展は、クラウドソーシングサービスの普及を後押しするだろう。

 HRテックは各分野ごとに開発が進んでおり、クラウドの特性を生かしてサービス同士の連携を行うことで、自社に合った総合的な人事管理システムを構築することができる。

 その反面、クラウドにより導入・解約が容易に行えるため、さらに各社の競争は激化しており、日々新しい機能の追加や独自の特色を強めている企業も多い。今後人事担当者は、数多いサービス・機能の中から、自社に必要なサービスを選定して使用することが求められる。

HRテックサービスを強化する企業が増えている

●最近のHRテックサービスに関する各社の取り組み

●最近のHRテックサービスに関する各社の取り組み

HRテック 分野別サービス紹介

HRテック 分野別サービス紹介
HRテックの市場規模は拡大しており、新たなサービスが次々とリリースされている。最新のHRテックサービスを提供している企業に取材を行った。
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