2016年9月1日

イノベーションを生み出す人材と組織の条件とは

IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)などによって、これまでのビジネスモデルが大きく変わろうとしている。経営戦略の実現のために新たなビジネスモデルをつくりだすイノベーション人材の獲得や組織づくりは、経営トップや人材マネジメントにとって喫緊の課題となっている。イノベーションを生み出す人材と組織づくりの現状を取材した。

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 少子高齢化による国内市場の縮小、グローバルな競争激化、技術革新などによって日本の企業は様々なフェーズで変革を迫られている。国内市場の変化に合わせた新サービスの開発や、グローバルでは現地ニーズに合わせた商品や販売体制の構築など対応を急がなければならない課題は多い。
 しかし、技術革新によってビジネスの変革にスピードが求められる時代になり、従来のビジネスリソースだけでは解決が難しい状況だ。
 特に最近は、AI(人工知能)の活用のように、これまでのビジネスモデルにデジタル技術が結合して新しいビジネスモデルが次々と生み出されるようになった。
 あらゆるモノがネットにつながるIoT、様々なサービスの大量の利用データから利用者の行動などを分析して社会や経済の問題解決や事業の付加価値向上を支援するビッグデータ活用、そしてこれらの情報を処理・応用するAIが新しいビジネスモデルの創出を急加速させているのだ。
 従来のビジネスにデジタルテクノロジーを結合させた新しいイノベーションの波が、自動車業界が開発を競う自動運転車、金融分野のフィンテック、医療分野のヘルステック、教育分野のエドテックなど様々な分
野で起き、新ビジネスが生み出され始めている。
 新しいビジネスモデルによる競争は、これまでの競合とは違う分野からの参入で業界そのものが消滅してしまう可能性もはらむ。
 代表的なのがスマートフォンを利用した配車サービスのUber(ウーバー)。スマートフォンにアプリをダウンロードし、現在地を知らせると近くにいる登録ドライバーの車が配車されるシェアサービスだ。登録ドライバーは個人の自家用車を使い収入を得ることができる。業界の枠を越えて参入してきた競合に、タクシー業界は危機感を募らせる。

多くの経営者が業界の境界線の消滅を意識している

今後数年間に最も注視すべき潮流

今後数年間に最も注視すべき潮流

(出所)IBM「グローバル経営層スタディ」

デジタル技術者などのイノベーションを生み出す人材の採用が過熱

 このようなイノベーションを生み出すための人材の採用も過熱している。M&Aが実行できるコンサルティング会社や投資銀行の出身者、ゼロから新サービスを立ち上げるような起業家人材、新サービスに欠かせないデジタル技術者などだ。
 特に、AI技術者の企業の採用意欲は異常といえるほど高まっており、様々な業界が入り乱れて人材争奪戦の様相を呈している。
 日立製作所やリクルートは米国に拠点を設けて世界規模でAI技術者の採用を行う。国内ではトヨタ自動車やホンダが東京都心部に環境を整えた拠点を設けて、AIの研究開発を促進する計画だ。AI技術者のヘッドハンティングを手がけてきた人材紹介会社テクノブレーンの能勢賢太郎社長は、AI技術者の採用の実情を次のように話す。
 「AI技術者は求人に対して候補者数が圧倒的に少ないため、採用は困難を極めています。これまでも優秀なエンジニアの採用は難しかったのですが、今回については自動車、電機、インターネット、ウェブサービスなどあらゆる業界でAI技術者の採用ニーズが高まり、これまで経験したことがないような人材の獲得競争が起きています」

 また、採用が難しいのは候補者数が少ないだけではない。「AI技術者は報酬や処遇だけでは動きません。それ以上に、やりがいのある仕事や研究に最大の関心を持っているのです。そのため、入社後にどのような仕事をしてもらうのか、きちんと説明することができなければ採用に至りません」(能勢氏)
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