2018年5月30日

労務リスクを回避する 3つの取組テーマ

働き方改革を実行する上で、無期転換ルール、同一労働同一賃金、時間外労働の上限規制への対応は避けては通れない。「働き方改革関連法案」はまだ国会審議前だが、今から対応すべきことを中心に解説していく。(文・溝上憲文編集委員)

 大きく変わったのは基本給以外の部分で、旧総合職にあった賞与などの手当、退職金制度、福利厚生も同一処遇とした。同社の賞与は年初に業績目標を設定し、その達成度を評価する目標管理の結果で決まる。G1、G2に多く所属する旧メイト社員も同様の仕組みで支給される。
また同社の退職金制度は04年に確定給付型から確定拠出年金に移行しているが、会社拠出分として年収の7%を12カ月に分割して支給している。しかも拠出金は全額を確定拠出に振り向けるか、あるいは前払いとして受け取ることもできる(確定拠出50%、前払い50%の選択も可能)。それ以外の手当として「子女教育手当」も支給される。

 同社は昨年5月の制度改定でいわゆる属人手当を基本的に廃止している。従来の配偶者と子どもを持つ社員に扶養手当を支給していたが、配偶者分の手当を廃止し、子どもの数に応じて支給する子女教育手当に再編した。この手当は扶養義務に関係なく支給される。
 もう一つの注目点は労働時間も全社員統一の仕組みに整備したことだ。前述したように旧メイト社員は5.5 〜7.5時間の間の勤務が多かった。また旧総合職の所定労働時間は7.75時間。そして育児・介護を理由にした2時間、1.5時間、1時間短縮の短時間制度があった。これをメイト社員に合わせる形で所定労働時間7.5時間に短縮。さらに育児・介護以外の理由でも5.5 〜7.5時間の間で30分単位で短縮できる短時間勤務制度に変えている。

 今回、同社が人事処遇制度を1本化し、同一労働同一処遇に踏み切った最大の理由は、主力のクレジットカード事業のビジネスモデルの変革に伴う社員の活用と戦力化にある。人件費は以前より4%膨らむが、新制度の運用によってこれまで以上に社員の仕事への意欲を引き出したいとの狙いがある。

正規と非正規の不合理な格差是正が求められる

●政府の「同一労働同一賃金ガイドライン案」の主なポイント

●政府の「同一労働同一賃金ガイドライン案」の主なポイント

時間外労働の上限規制で労働時間管理が求められる

 時間外労働の削減はすでにだいぶ前から多くの企業がノー残業デーや定時退社の奨励などの施策を実施しており、全体の残業時間も徐々に減少している。ただ改正労働基準法の「罰則付き時間外労働の上限規制」が法制化されると、1人の違反者が発生するだけで労基法違反になる。今以上により徹底した労働時間管理が求められてくる。

 今春闘で日本労働組合総連合会は(連合)は①36協定は「月45時間、年360時間以内」を原則に締結する、②やむをえず特別条項を締結する場合は年720時間以内とし、より抑制的な時間となるよう取り組む、③休日労働を含め、年720時間以内となるように取り組むことを求めている。3つ目の休日労働を含む720時間以内とは、法律案要綱の「年720時間以内」が休日労働以外の時間外労働しか含まれないことを意識したもの。つまり1カ月100時間未満および月平均80時間以内という制限の範囲内であれば、休日労働時間は自由に設定できることになる。結果として、時間外労働時間と休日労働時間の合計が80時間×12カ月=年960時間の労働が可能になる。
 大手電機メーカーの産別組織の電機連合の2016年度の総実労働時間は2018.3時間。13年度以降、4年連続で2000時間を超えている。36協定の締結状況では、1カ月の時間外労働時間は80 〜100時間以下が製造業全体では15.8%であるの対し、電機連合は22.0%も存在する。100時間超は製造業の事業場が4.0%であるのに対し、電機連合は14.0%。年間の労働時間でも800 〜1000時間以下が製造業の12.2%を上回る23.0%も存在し、上限規制の年720時間を超えている企業も多い。

 電機連合の野中孝泰委員長は「他産業に比べて時間労働の協定締結時間が長いのは問題。1年間720時間以下の締結は急務な課題だ」と語る。残業時間以外でも電機連合加盟組合の日立製作所の労組が特別条項の限度時間の年960時間の上限を720時間に引き下げるとともに、終業と始業の間に最低11時間の休息を確保する勤務間インターバルの導入を要求し、合意している。

残業時間削減には、抜本的な仕事量の削減が必要

● 所定労働時間を超えて働いている理由

● 所定労働時間を超えて働いている理由

(出所)厚生労働省「従業員の労働時間と休暇に関する調査(労働者調査)」(2013 年)

法制化を前向きにとらえ、施策を実践することが重要

 法改正に伴う36協定の見直しは当然としても、さらに踏み込んだ対応が進んでいることは評価できる。労働力人口が長期的に減少する中で、若者、女性、高齢者をいかに活用していくかが企業の成長力のカギを握っている。無期雇用への転換と同一労働同一賃金は、多くを占める女性労働者の戦力化につながる。時間外労働の削減や短時間勤務などの多様な働き方は、労働環境に敏感な新卒学生の確保だけではなく、女性の正社員の長期就業や高齢者の活用策としても有効だ。

 政府の法制化に対する後ろ向きな対応では、今後の人材獲得にも支障を来すだろう。この機会を前向きにとらえて長期的な人材活用方針を打ち出し、それに対応した自社の働き方を検証し、具体的な施策を実践していくことが人的基盤を強化することにつながることは間違いない。
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