2009年5月31日

2010年新卒就職活動 就活戦線に異変アリ!?、内定獲得は4月でまだ2割

2010年3月新卒学生の就職活動が最初の山場を迎えている。ゴールデンウィークまでにすべての内定を出す企業がある一方、昨年に比べて内定を出す時期が遅れているという声も聞かれ、じっくりと学生を見極めようとする企業も多く、昨年と一転して超買い手市場の様相を呈している。

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求人倍率1.62倍、昨年から大幅ダウン

 日本経団連の倫理憲章を意識した大手企業は4月から採用選考を本格的にスタートさせた。昨年後半からの不況で採用計画を見直した企業も多く、採用人数を絞り込んで優秀な学生を見極めようとする企業も多い。内定のハードルが高くなり、学生の苦戦が伝えられている。
 昨年までの売り手市場から一変し、学生には厳しい就職活動になっていることが各種の調査からも明らかになっている。リクルートワークス研究所が発表した2010年大卒の求人倍率は1.62倍で、昨年からマイナス0.52ポイントの急落となった。
 就職氷河期と言われた1996年卒(1.08倍)、IT バブル崩壊後の2000年卒(0.99倍)に比べると高い水準にあるが、前年(2.14倍)からの減少幅は大きく、企業の採用意欲の急速な低下を反映する結果となっている。
 求人倍率を従業員規模別にみると、「従業員1000人未満企業」で3.63倍、「従業員1000人以上企業」で0.55倍。従業員1000人以上企業への就職希望者は昨年より増加しており、学生の就職希望が大手企業に移行していることがうかがえる。

エントリーシートや1次選考で大量に脱落

 また、例年通り業種別の求人倍率は格差が著しく、「流通業」4.66倍、「製造業」1.97倍、「サービス・情報業」0.67倍、「金融業」0.21倍となっている。
 この傾向をクロスしてみると、従業員1000人未満の中堅・中小企業で、「流通業」「製造業」が最も入りやすい会社ということになる。そして、最も入り難い業種が、従業員1000人以上の「金融業」、いわゆるメガバンクだ。
 エン・ジャパンが4月13日までに就職活動中の学生に調査した結果によると、内定取得者は19.4%で、前年同期(35.0%) に比べ、15.6ポイントも低下した。同じく、日本経済新聞社が4月27日までに実施した調査でも、内定取得者は全体の2割弱にとどまっている。
 昨年秋の就職活動開始当初から厳しい活動になることを予想していた学生も多く、説明会への参加やエントリーが昨年より増加傾向にあった分、エントリーシートや1次選考で脱落する人数も多くなり、次の選考になかなか進めない学生が大量に発生しているようだ。

大学全入時代、学生の質が変化

 企業の新卒採用の代行業務で学生のカウンセリングを行っている就職エージェントの下薗博康社長は、「4月以降、カウンセリング希望者が急増して、12人のカウンセラーの面談予約がパンク寸前です」と悲鳴を上げる。企業が内定を出さないために、学生が殺到しているのだ。
 しかし、学生は昨年までの売り手市場の就職活動の感覚から抜け出せずにいる。「自分が入れる会社はどこですか」と受け身の姿勢だ。「就職活動が大学入試感覚で、内定が出ないことによる悲愴感やがむしゃらさは薄い」(下薗氏)
 ここ数年、企業側が学生をお客様扱いしていたことにも問題があるが、大学側も学生に入学してもらうことがミッションとなりがちだ。「大学全入時代で競争を経験していない学生も多く、学生がサービスを受ける立場になってしまっていることも影響しているのでは」と下薗氏は指摘する。

大手志向がより強まる、ブランド企業にエントリーが集中

 体育会学生の就職を支援するインダスの蔭山尊アスリート事業部グループリーダーは、就職活動の状況を「4月前半には5社から内定を得たという学生がいる一方で、全く内定を得られない学生も例年より多く、学生による格差が大きい」と話す。
 「大手企業志向が昨年以上に強く、大手企業に就職できないなら、いっそ公務員や大学院への進学に切り替える」というあきらめムードの学生も増えてきているようだ。
 本紙が4月24日に就職活動中の学生を対象に行ったヒアリング調査でも、ほぼ同様の結果がでている。
 4月の初旬に大手生保、2週目からメガバンク、商社が内定を出し始め、以後、4月中旬からゴールデンウィーク直前にかけて大手企業の内定出しが集中した。だが、4月24日の時点で、内定を得た学生は全体のわずか5分の1程度。大多数の学生は内定を得られていない実態が浮かび上がった。
 内定数が増えない背景には、学生の就職活動の方法にも原因がある。最大の理由は、本格的な就職活動に入る前の「企業研究」が不足しているためエントリーする会社が偏ってしまっていることだ。
 学生の企業選びは、日頃利用するサービスを行っている企業、ブランディングに成功している企業、そして安定性を感じさせる企業に集中しているようだ。
 具体的には、みずほ、三井住友、三菱東京UFJといったメガバンク、三井物産、三菱商事などの商社、次にANA、JAL、トヨタ自動車、ソニーといったブランディングに成功している企業が顔を出す。ただし、安定性はあるが学生には馴染みのないBtoB企業はたとえ大手企業であっても志望者は少ない。

大手企業の採用減で内定獲得は困難

 ところが、日本経済新聞社がまとめた2010年度主要企業の採用計画をみると、みずほ2350人→1370人、三井住友2105人→ 1100人、三菱東京UFJ1500人→650人、トヨタ自動車2166人→ 1080人、ソニー500人→280 人、キヤノン1127人→400人と昨年まで1000人を超えていた採用数が軒並み半減し、この7社でほぼ5000人も採用数が減少しているのだ。
 こうした状況にもかかわらず採用数が激減した企業に相変わらず志望者が殺到し、その結果、内定が出ないという悪循環に陥っている。そうかといって、別の企業は急には思い浮かばない。
 企業や仕事内容がほとんど分かっていない状態で、自己分析ばかりが先行した結果、自らの方向性を見失ってしまい、どの会社を受けたらいいのかが分からない。内定獲得が遅れている要因は、企業の採用数の減少、学生の企業研究不足と安定志向の高まりが複雑に絡み合っている。
 金融危機による不況で、安定感を求めて学生は迷走し始めた。「メガバンクや大手企業は、政府が助けてくれるから決して潰れることはない」皮肉にもこんな声が学生から聞こえてきた。

優秀な人材は争奪戦、ゴールが難しい採用活動

 一方で、企業の採用は厳選化し、長期化しそうだ。「昨年なら採用したような学生を最終選考で落とす傾向が顕著です。迷ったらまず落とす経営者が増えている」(下薗氏)
 「説明会参加者やエントリーシート提出者は多いが、選考してみると採用基準に達する学生が少ない。買い手市場と言われているが、優秀な学生の取り合いになっている」(蔭山氏)
 こうした傾向を受けて、ソニーやトヨタ自動車では5月初めまで、みずほ、三井住友銀行は6月初めまでエントリーを受け付けており、引き続き採用活動を続ける。採用活動のゴールをどこに置くかで、採用担当者もまた難しい判断を強いられそうだ。
 2010年入社の採用活動のゴールはどこにあるのだろうか。前出の主要企業の採用計画調査では、新卒採用数は前年比21.8%の大幅な低下となる。中堅・中小企業を対象に東京商工会議所が3月にまとめた調査でも、「採用予定なし」は29.2%で前年比10.6ポイント増加と企業の採用意欲は大幅に低下している。
 今後の景気動向次第では、就職氷河期が再来する可能性すらある。前回の就職氷河期では、派遣という当時は新しい働き方が雇用を吸収した。顧みて10年余、今、派遣という働き方は岐路にさしかかっている。
 しかし、この雇用環境で派遣を禁止すれば失業者があふれかえるだろう。若年者雇用という喫緊の課題を突きつけられ、難しいとは分かりつつも、早期の景気回復と雇用を吸収できる新しい産業の創出を願わずにはいられない。
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