2019年9月13日

遅すぎた就職氷河期世代の就労支援 ~ 政府は人手不足業界への誘導を狙う

30代半ばから40代半ばの就職氷河期世代に対して政府が就職支援に本格的に乗り出すことになった。政府が掲げる目標は果たして実現可能なものなのか、支援内容を踏まえて解説していく。(文・溝上憲文編集委員)

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就職氷河期世代の就労を本格的に支援

 就職支援の内容は、非正規社員や長期無業者、ひきこもりを含む100万人規模の人たちを3年間かけて支援し、30万人の正社員化を目指すというものだ。

 具体的な支援の対象は①正社員になりたいのに不本意ながら非正規雇用で働く人(約50万人、35~44歳)、②就職希望はあるが「希望する仕事がありそうにないという理由で就職活動をしていない長期無業者(約40万人)、③ひきこもりなど、社会参加に向けた丁寧な支援を必要とする人の3つだ。厚生労働省が8月30日に公表した2020年度予算の概算要求額の就職氷河期世代の就職支援や助成金として653億円を計上している。

対策は果たして効果があるのか

 しかし、30万人の正社員化が本当に可能なのだろうか。そうでなくても非正規社員は2148万人(総務省労働力調査2019年6月期)と雇用者総数の37.8%を占め、年々増え続けている。厚労省はこれまでも若者や非正規社員の正社員化に向けた対策を実施してきたが、目立った成果を上げていない。今回は就職氷河期世代に絞った対策だが、どんな特効薬があるというのか。

 厚労省の「就職氷河期世代支援プラン」には、ハローワークに専門窓口を設置し、職業訓練や求人開拓のチームを設けることをはじめ、幅広いメニューを用意している。

 その中でも主な支援の目玉は以下の2つだ。
 ①民間事業者を活用して、教育訓練、職場実習等を行い、正社員就職につなげる成果連動型委託事業の創設
 ②短期資格等習得コースによる正社員就職を支援

目玉は主な支援の2つ

 ①では、全国10カ所程度の厚労省の都道府県労働局が民間の教育事業者に委託。2ヶ月程度の専門知識などの教育訓練や職場実習等を実施する場合、それにかかる費用(10万円)を支給する。さらに訓練を経て就職し、半年間勤務していれば、成果に連動した委託費として50万円を支給する。

 短期資格習得コースは、「(人手不足)業界団体等と連携し、短期間で取得でき、安定就労に有効な資格等の習得を支援」することになっている。具体的業界団体の事例として「建設」「運輸」「農業」などが挙げられ、業界団体を通じて正社員に転換するスキームが描かれている。

 たとえば厚生労働省が委託した建設業の団体が短期の訓練(小型クレーン、フォークリフト等も修了資格取得)を経て、各企業で半日~3日間程度の職場見学・職場体験後に正社員として就職するという流れになっている。運輸業の場合は、大型一種、大型二種などの免許を取得し、業界団体傘下の求人事業所において、半日から3日程度の職場見学・職場体験を通じて正社員として就職する。こんな短期間にすんなりと就職できるのかわからないが、厚労省は出口一体型の「業界団体等と連携した即効性のある就職支援」と呼んでいる。

 実はこうした業界団体との連携は、都道府県ごとで構成するプラットフォームづくりを推進することにしている。その構成メンバーに都道府県、市町村、経済団体などと並んで「人手不足業界団体」が登場する。経済団体以外にあえて「人手不足業界団体」を入れているが、就職氷河期世代を人手不足業界に誘導したいとの政府の真意が透けて見える。
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