2011年11月26日

非正規労働者の待遇改善へ新たな規制強化で労使対立 均等処遇や正社員転換を規定する法改正もあり得る

年末にかけて非正規労働者に関する雇用政策の議論が本格化する。論点は、非正規労働者の雇用の安定と待遇の改善だ。今後の労働市場、企業の人材マネジメントや日本人の働き方に大きな影響を与えることになる議論の行方が注目される。

 (4739)

非正規労働者が4割、雇用政策の議論が本格化

 先ごろ発表された厚生労働省の「平成22年就業形態の多様化に関する総合実態調査」によると、2010年の非正規労働者の割合が38.7%に増えた。正社員と異なる働き方をする労働者が約4割も存在するという二極化の時代を裏付けるものであり、改めて正規と非正規の雇用政策のあり方が問われる事態といえよう。
 非正規労働者の雇用の安定や待遇改善はリーマン・ショック以降、社会的課題になっている。非正規労働者には派遣とパートなどの有期契約労働者に分かれるが、法令上は労働者派遣法、パート労働法、労働基準法で保護されている。
 折しも厚労省では非正規問題について、3つの会議で検討が進められている。1つ目は、6月に発足した職業安定局の非正規労働者の雇用の安定や待遇改善を目指した「非正規雇用ビジョン」の策定に向けた有識者懇談会(以下、懇談会)。
 2つ目は、有期契約労働者の雇用の安定と待遇改善を目指した労働基準局が主管する労働政策審議会の労働条件分科会(以下、分科会)。3つ目は、雇用均等・児童家庭局の「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」(以下、研究会)だ。
 テーマは微妙に異なるが、共通するのは正規と非正規の均等待遇に関する議論であり、そこには今後の政策の方向性が示唆されている。
 懇談会での議論は始まったばかりであるが、①非正規雇用の概念整理②非正規雇用をめぐる問題点や課題③非正規雇用をめぐる問題への基本姿勢④非正規雇用に関する施策の方向性――の4つを論点に議論することにしている。
 そして最終的には「公正な待遇の確保に必要な施策の方向性を理念として示す」非正規雇用ビジョンを策定することになっている。

有期労働の契約理由を限定する規制強化で労使対立

 分科会は、この8月に「有期労働契約に関する議論の中間的な整理」(以下、「中間整理」)を公表している。最大の論点は契約期間に縛りをかける法的規制にある。具体的には、①締結事由②更新回数・利用可能期間、解雇権濫用法理の類推適用③契約締結時および終了時の手続き④契約終了時の経済支援――の4つ。
 ①の締結事由の規制とは、安易な雇止めを防止するために入口の契約段階で縛りをかける方法だ。有期労働契約を締結できる範囲を季節的・一時的業務のケースなど一定の目的や理由がある場合に限定することである。締結事由については他の論点に比べて労使が真っ向から対立している。
 ②は更新回数や利用可能期間の上限を設定する出口規制と言われるものだ。労働基準法では1回の契約期間の上限が3年という規制しかなく、何回でも更新が可能。これに対し、たとえば更新回数を3回に制限し、1年契約であれば4年までの就労が可能となり、それ以降は無期雇用とするものである。
 一方、雇止めについては労働者保護の観点から判例法理(雇止め法理)が現実に存在している。
 有期契約労働者であっても、契約更新を繰り返し、5年、10年と長期に就労し、実質的に無期雇用と変わらない状態にあり、労働者もずっと雇ってもらえるという合理的期待がある場合、客観的・合理的理由がなければ雇止めできないという「解雇権濫用法理」が類推適用されている。
41 件

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう

日本人材ニュース|人材採用と人材育成の人事専門誌

関連する記事

国内からグローバルへ、 非正規から正社員へ、 一気通貫の育成システムを構築

国内からグローバルへ、 非正規から正社員へ、 一気通貫の育成システムを構築

人口減少社会に入り、あらゆる産業で優秀な人材の確保と定着の重要性が増している。若手人材の育成や非正規社員から正社員への転換などの一貫した育成システムの再構築に取り組む動きが相次いでいる。
深刻な「人手不足」 限定正社員化の動き

深刻な「人手不足」 限定正社員化の動き

小売・飲食業界を中心にパート・アルバイトなどの非正規社員の人手不足が深刻化している。人手不足が広がる中で、少子化による若年世代の減少という構造的問題に対応していくために、人事・雇用戦略の見直しに着手する企業の動きが始まっている。
派遣スタッフ平均時給1626円、オフィスワーク系は過去最高値更新 リクルート調べ

派遣スタッフ平均時給1626円、オフィスワーク系は過去最高値更新 リクルート調べ

 4月度の三大都市圏(関東・東海・関西)の派遣スタッフ募集時平均時給は、前年同月比0.4%減(6円減)の1626円となったことが、リクルートジョブズ(東京・中央、柳川昌紀社長)の調査で分かった。
アルバイト・パート平均時給999円、すべてのエリアで前年同月比増加 リクルート調べ

アルバイト・パート平均時給999円、すべてのエリアで前年同月比増加 リクルート調べ

リクルートジョブズ(東京・中央、柳川昌紀社長)の調査によると、3月度のアルバイト・パートの募集時平均時給は999円となった。1000円を超えた前月(1001円)と比べると0.2%減となったものの、前年同月比は2.3%増となった。
3月の完全失業率2.8%、正規雇用26万人増

3月の完全失業率2.8%、正規雇用26万人増

 総務省が発表した労働力調査(速報)によると、3月の完全失業率(季節調整値)は前月と同率となる2.8%だった。男女別にみると、男性の完全失業率は3カ月連続で改善傾向が続いている。

この記事のキーワード

この記事のライター

溝上憲文 溝上憲文

セミナー・イベント

プレスリリース