グローバル化で年功要素を廃した 「職務・役割給」導入
2014年から15年にかけて日立製作所、パナソニック、ソニーといった大手企業が年功要素を廃した「職務・役割等級」に賃金制度を一本化する動きが相次いだ。
パナソニックは14年10月から、「主事」「参事」などの資格に基づく職能資格等級を軸とした制度を廃止して、担当する役割の大きさに応じて処遇を決定する役割等級制度を全社員に導入。同様に日立製作所も14年10月から、国内管理職1万1000人を対象に「役割等級制度」を導入している。
ソニーは2015年度から新制度を導入し、「現在果たしている役割」のみに着目した「ジョブグレード制度」によって年功要素を完全に排除した。新制度の対象者はソニー本体に勤める約1万4千人の全社員だ。
いずれの企業もビジネスのグローバル化に対応した人材マネジメント構築の一環と、65歳雇用時代を見据えた人事・賃金制度改革という点で共通している。
グローバル共通の賃金・評価制度と若手の登用を促す人事のフレキシビリティを確保するには「役割給一本化」による運用しかないと腹を括っている部分もある。
電機メーカーに限らず食品会社のカゴメも2年前から年功的要素を排除した職務等級制度を導入している。初年度は社長、取締役、執行役員の全役員、14年から部長職、15年4月から課長職と対象者を徐々に拡げてきた。
制度のメリットとして、役割・ポストが決まる職務等級に転換することによってグローバルな人材活用が可能になることを挙げている。
すでに米国、オーストラリア、ポルトガルではポストごとにジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を作成して運用を実施している。
事業のグローバル化や少子高齢化に対応できる人事制度が求められている
大手事務機販売会社の人事担当役員は「日本のマーケットだけで勝負することが難しくなり、海外市場に目を向けた動きは避けられない。
そうなると日本の職能給は残念ながら世界では通用しない。海外でも理解しているもらえる人事体系として職務給制度を導入する企業が増えるだろう」と指摘する。
海外企業としのぎを削る日本企業にとって固定費の増加や若手の抜擢が難しい年功色の強い人事制度が大きな足枷になっている面も否めない。従来の日本独自の職能資格制度から職務・役割等級に一本化する動きは加速していくだろう。