2020年6月8日

コロナ対応で導入進む Web面接 オンライン教育

新型コロナウイルス感染防止への対応は、企業の人材採用や教育研修にも大きな影響を及ぼしている。そうした中で導入が進んでいるのがWeb面接とオンライン教育だ。導入事情や活用のポイントなどを取材した。

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Web説明会・面接で学生との接点を確保

 新型コロナウイルス感染を防止するための対面業務の自粛や政府の緊急事態宣言が新卒採用活動の時期と重なったため、採用担当者は緊急対応を迫られている。2月20日には就職情報サービス最大手のリクルートキャリアが合同企業説明会の中止を発表、マイナビやディスコなどの主要人材会社も同様の対応となった。

 会社説明会や対面での面接の実施が困難となる中、各社は学生との接点を確保するためにWeb説明会・面接システムの導入を急いでいる。

 例えば、オンライン申し込み後すぐに利用できる会社説明会・面接システム「playse web面接」を提供するmanebiへの2月の問い合わせ数は、1月の10倍以上に達した。同社の田島智也社長は「経営トップや人事責任者の強い指示で導入が決まるケースも相次ぎ、そうした企業では2月はWeb会社説明会の実施方法、3月以降はWeb面接の実施の相談がメインでした」と説明する。

 就職情報サービス会社ディスコが実施した3月下旬の新卒採用の動向調査によると、Webセミナーを実施した企業のうち、6割近くが「コロナウイルスの収束後も活用したい」と回答するなど好評で、利用ニーズの拡大とともにサービス提供会社も増えている。また、提供される機能の幅も広がっており、「playseweb面接」のように1カ月単位で気軽に利用できる利便性を打ち出すサービスもあれば、主に大手企業を顧客とするタレンタの「HireVue」はAIによる応募者のアセスメント機能まで備えている。

 Web説明会・面接システムの有効性が認知されることでこれまで以上に多くの企業で利用が広がりそうだが、自社に必要な機能やサービス提供会社のサポート力などを見極めて導入することが重要だ。

6割が新型コロナウイルス収束後も継続利用の意向

● Webセミナーの効果

● Webセミナーの効果

(出所)ディスコ「新卒採用に関する緊急企業調査」

オンライン研修で問われる研修会社の対応力

 社員教育では特に緊急性が高かったのが新入社員研修の対応で研修会社への相談が相次いだ。

 講師派遣型と公開型の両方で多くの顧客を持つ大手研修会社インソースは、Web会議システムを使った研修サービスを提案し、研修担当者向けに体験会を開催するなどして顧客企業をサポートした。

 全国9都市の常設セミナールームで開催していた公開型研修も政府の緊急事態宣言の対象地域の拡大に合わせてオンラインへ切り替え、1日で40回同時開催可能な設備増強を完了している。同社では「予定していた研修が開催できなくなり、代替案を検討している」「自宅待機時に新人に行う教育テーマが尽きてきた」などの相談の増加に対応するためラインナップや実施回数を日々増やし、4月21日時点で5〜6月はオンライン公開講座を約900日程開催する予定だ。

 状況が刻々と変わる中で対応に追われる同社のオンライン教育事業責任者の松木宏明氏は「オンライン研修を支援する中で感じているのは、研修会社にはより高いサービス品質と組織対応力が求められるということです。専用コンテンツの開発、教材のデリバリー、研修進行、フォロー教育、教育管理システムなど、研修効果を最大化するためのノウハウが一気通貫で必要とされるからです」と話す。

 オンライン研修では特にシステムサポートが欠かせず、実施規模や対象地域、受講者の環境はさまざまで研修会社にとってもオペレーションの負担は大きい。同社では生産性の高い働き方を推進するために以前からWeb会議システムを社内で活用してノウハウを蓄積し、東京五輪開催時に研修会場不足などで集合研修が難しくなることも見越してオンライン研修に対応する準備を進めていた。そのため、Web会議システムを活用して双方向のコミュニケーションが可能なオンライン研修をスピーディーに提案できた。

 オンライン研修に対する今後の企業の活用見通しについて、松木氏は「新人研修は落ち着きつつありますが、先を見据えている人材育成の担当者の方は、あらゆる教育テーマについてオンラインでの実施を前提とした準備をすでに進めています」と説明している。

双方向のコミュニケーションが可能な研修を実現

●インソースが提供するオンライン研修の活用事例

●インソースが提供するオンライン研修の活用事例

在宅勤務中のスキル習得にオンライン教育を活用

 在宅勤務が長引く中、社員が今後の業務に活かせるスキルを習得できるようにオンライン教育を導入する動きも広がっている。

 今、多くの企業が必要としているデジタル人材の育成では、外部ベンダーの提案や見積もりの目利きができる社員を増やすための教育ニーズが出ており、AI開発コンペティションサイトを運営するSIGNATEは、オンラインAI教育システム「SIGNATE Quest」の提供を昨年秋に開始した。同社の夏井丈俊COOは「在宅勤務の増加も契機となって、内定者や新入社員をはじめ全社員のAIリテラシーを高めるためのオンラインプログラムを求める動きがさらに広がっています」と話す。

 また、高度な専門性を持つデジタル人材は各社が争奪戦を繰り広げるなど人材不足が顕著だ。デジタル人材の採用支援も手掛けている夏井氏は「データサイエンティストなどAI系の人材採用は絶対に職種別採用でその部門が取り組むべきで、専門知識がない人事は、職種別採用を行っている外資系企業のようにコーディネート役となる必要があります」と助言する。

 グローバル事業の拡大を目指す企業では、社員の英語力強化が喫緊の課題だ。英語学習アプリ「スタディサプリENGLISH」を提供するリクルートマーケティングパートナーズには、集合研修が困難になった新入社員向けなどで「今すぐサービスを利用したい」という人事担当者からの問い合わせが増えたという。同サービスは概ね5営業日以内には利用が始められ、リーズナブルな料金も導入しやすさにつながっている。

 社員一人一人の活躍や定着を重視する企業ほど、感染防止で業務が制限されたり、リモートワークが拡大する中でも教育は継続しなければならないという意識は強い。そのため、場所や時間を選ばず学習できるサービスへのニーズはさらに伸びていく。

社員のエンゲージメント向上が課題に

 新型コロナウイルスの感染防止への対応で、多くの人の働き方が大きく変わった。パーソル総合研究所が全国約2万5000人を対象とした調査(4月10 〜12日実施)によると、正社員のテレワーク実施率は東京都では49.1%となっている。

 企業のテレワーク導入を支援しているキャリア・マムの堤香苗代表は「『社員を評価しづらく、モチベーションの低下が心配』という相談もあります。テレワークを行う上でエンゲージメント向上は今まで以上に重要です。ゴールを設定して日報で進捗を管理し、短くても毎日コミュニケーションを取ることを推奨しています」を話す。

 「エンゲージメント」は最近の人事キーワードになっており、多様な支援サービスが提供されるようになっている。

 例えば、アジャイルHRが提供する「1on1navi」は、上司と部下の対話を支援するアプリで、在宅勤務で離れた場所にいてもつながりを維持し、個人と組織のパフォーマンスを向上させることが狙いだ。

 また、NEC VALWAYは、社員が悩みを安心して相談できる窓口代行サービスを提供している。6月から企業に義務化されるパワハラ防止策でニーズが高まっていたが、メンタルヘルスに関する相談窓口としては2015年からの豊富な実績がある。
 今回の対応をきっかけに、コロナ収束後もテレワークの活用や多様な働き方が進んでいくことも予想される。社員の活躍をさらに引き出すためのマネジメントに向けて、人事データ活用の必要性なども高まりそうだ。

一体感や意欲の低下を感じている社員が3割超

●テレワーク実施前後の変化

●テレワーク実施前後の変化

(出所)パーソル総合研究所「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

◆◆◆専門家に聞く Web面接、オンライン教育、テレワークを成功させるポイント◆◆◆

Web面接ツールの特徴を理解した上で選考フローを見直す

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manebi 田島 智也 代表取締役CEO

 Web会社説明会・面接ツールに関する2月の問い合わせ数は1月の10倍以上に達しました。新卒採用での対応が迫られる中、経営トップや人事責任者の強い指示で導入が決まるケースも相次ぎ、そうした企業では2月はWeb会社説明会の実施方法、3月以降はWeb面接の実施の相談がメインでした。

 Web面接を成功させるためには、面接ツールの特徴(メリット・デメリット、機能)を理解した上で、選考フローの見直しが必要になります。そのため、これまでの自社の採用活動全体を見直すきっかけともなっており、当社への相談に関してもツールの提供にとどまらず、採用プロセスの設計やWeb/対面面接において面接官が見るべきポイントの整理など、サポートを求められる範囲が広がっています。

研修効果を最大化するためのノウハウを研修会社から得る

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インソース 松木 宏明 執行役員 オンライン教育営業部 部長

 オンライン研修を支援する中で感じているのは、研修会社にはより高いサービス品質と組織対応力が求められるということです。専用コンテンツの開発、教材のデリバリー、研修進行、フォロー教育、教育管理システムなど、研修効果を最大化するためのノウハウが一気通貫で必要とされるからです。特にIT力は重要ですが、当社では生産性の高い働き方の推進で以前からZoomを活用していたことや、60人以上在籍しているITエンジニアのスピーディーなシステム対応によって、今回の緊急対応の要請に対していち早くサポートを実現できました。

 新人研修は落ち着きつつありますが、先を見据えている人材育成の担当者の方は、あらゆる教育テーマについてオンラインでの実施を前提とした準備をすでに進めています。

オンラインの特長を活かし、スキル向上・維持の機会を用意する

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SIGNATE 夏井 丈俊  取締役副社長COO

 当社のオンラインAI教育システム「SIGNATEQuest」には、単元で学ぶ「Gym」と、プロジェクトで学ぶ「Quest」の2つのプログラムがあり、AIを基礎から学べると言うことで、企業のみならず国・行政・地方自治体からも引き合いが多くなっています。

 デジタルトランスフォーメーションに取り組む企業のAI人材ニーズは年々高まっていますが、在宅勤務の増加も契機となって、内定者や新入社員をはじめ全社員のAIリテラシーを高めるためのオンラインプログラムを求める動きがさらに広がっています。

 学ぶ機会を単発で終わらせてしまうとスキルを業務で発揮することができません。オンラインの特長を活かし、スキルを向上・維持するための機会を継続的に用意することが大切です。

テレワークを手段として、企業がどう成長していきたいかを描く

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キャリア・マム 堤 香苗 代表取締役

 テレワーク導入の必要性が高まり、導入支援コンサルティングの相談が増えています。企業からは「仕事が属人化しているため、社員を出社させなければ仕事が進まない」という声が聞かれますが、誰がどこにいてもすべての仕事がこなせるよう業務の棚卸しを行い、社員同士で共有することが欠かせなくなっています。

 また、「社員を評価しづらく、モチベーションの低下が心配」という相談もあります。テレワークを行う上でエンゲージメント向上は今まで以上に重要です。ゴールを設定して日報で進捗を管理し、短くても毎日コミュニケーションを取ることを推奨しています。

 テレワーク導入がゴールではありません。テレワークを手段として、企業がどう成長していきたいかを描くことこそが重要でしょう。
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