2020年1月6日

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 人材需要と採用の課題」景気の先行き懸念で雇用改善は転換期に

2020年の人材需要と採用の課題を、企業の人材採用を支援する主要コンサルティング会社の事業責任者を対象にアンケート調査で聞いた。

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 本誌が実施した主要人材各社の事業責任者に対する調査では、今年の日本の雇用情勢は「良くなる・やや良くなる」という回答が24%、「横ばい」が64%、「やや悪くなる・悪くなる」が12%となった。過去5年間の調査では「良くなる・やや良くなる」がいずれの年も5割以上だったことから、雇用改善が転換期に差し掛かっていると見ている事業責任者が多いことが分かった。

 企業の人材採用数の予測に関しても、昨年まで高い割合を示していた「増加・やや増加」が新卒、中途ともに5割を下回った。

 企業成長をけん引する高度人材の争奪戦や、慢性的な人手不足の業界からの求人は継続すると予測される一方で、「五輪経済に沸きつつ、不動産市況のピークアウト、レガシーな製造業関連の減衰などがどちらかといえば経済面への影響を強くする」(経営者JP井上和幸社長)、「製造業を中心に企業の人材需要は上がらない見込み」(パーソルキャリア勝野大常務執行役員)など、景気や企業業績の先行きを懸念するコメントが例年以上に多かった。
2020年 日本の雇用情勢・人材採用の増減(回答集計)

2020年 日本の雇用情勢・人材採用の増減(回答集計)

多様な人材の活躍で人手不足を解消

 4月からは「同一労働同一賃金」がスタートし、雇用形態による不合理な待遇差が禁止される。少子高齢化で若年労働力の確保は一層困難となっており、今年は70歳までの就業機会の確保を企業に求める法改正案が国会に提出される予定だ。

 多様な人材の活用を促す近年の労働政策によって、企業は人事戦略の再考が急務となっている。キーンバウム ジャパンの鈴木悦司社長は「女性、高齢者就業者、急増している外国人就業者にとって快適で魅力的な労働環境、労働条件の整備が重要課題」と指摘する。

 年齢にとらわれず一人一人の能力を見極めて採用する企業も出てきている。MS-Japanの井川優介取締役は「組織の屋台骨となる管理部門でマンパワー不足が顕在化している。即戦力の30代・40代はもちろん、経験豊富な50代・60代といったシニア世代を募集対象にするのは一般的になってきている」と説明する。

 働き方改革の推進によって、働く時間や場所に制約がある人を意識した業務内容の見直し、テレワークやモバイルワークなどの導入、副業やフリーランスなどの雇用の多様化が進みつつある。ヒューマンリソシアの御旅屋貢社長は「これまでとは異なる価値観やスタンダードの出現、従来の職種やポジションにとらわれない働き方や人材ニーズがより一層広がりを見せる」と予測する。

 これまで以上に多様な人材に活躍してもらうための環境を整えていくことが人手不足の解消には欠かせなくなっている。

デジタル&グローバル人材は争奪戦

 企業の採用ニーズの中で著しい伸びとなっているのが、デジタル分野の人材だ。デジタル技術とビジネスモデルが結合することによって、これまでと異なる分野からの参入や業界を越えた競争が起こり、デジタル活用による事業構造の変革を意味する「デジタルトランスフォーメーション」の推進が多くの企業で経営課題となっているためだ。

 優れたスキルと経験を持つ人材には複数企業のオファーが集中し、従来の採用手法では人材を確保できない企業が続出していることから、「テクノロジー領域では、大学や大学院で能力を身に着けた優秀な学生をその価値をフェアに評価するベンチャー企業、グローバル企業が高待遇で獲得していくことになるだろう。これまでの『報酬』『評価』の仕組みを変えなければならない時期に入った感がある」(A・ヒューマン髙橋英樹社長)との声が上がる。

 グローバル関連の人材ニーズも引き続き強い。ジェイ エイ シー リクルートメント松園健社長は「少子高齢化による人口減が国内の経済や内需に影響を及ぼすことが明らかで、日系企業はさらに海外に活路を見出す必要性があることから、厳しい国際競争に勝つためにも高度外国人の採用も含め、採用、給与体系などもグローバル水準に合わせることも急務となるだろう」と指摘する。

 こうした専門性の高い人材の採用では、外部労働市場を意識した処遇の見直し、より早いキャリアアップの機会の提示、人材紹介の成功報酬フィーの見直し、リテインド・サーチの活用、採用キャンペーンの実施などに着手する企業が年々増えている。また、全社を挙げたリファラル採用やダイレクト・ソーシングの推進なども必須となろう。

採用力の強化と人材マネジメントの転換

 2020年も人材採用が難しい状況は継続するが、働き方改革による労働生産性の向上が企業人事にとってより重要テーマとなっており、これまで人が時間と手間を掛けて行ってきた業務にAIやロボットの導入を検討する企業が増えている。

 ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングスの渡部昭彦社長は「デジタル化の進展により事務効率は大きく改善し、単純な事務作業についての人材ニーズは充足される一方、環境変化を踏まえ自律的に対応できる裁量型の人材の確保が不可欠な状況。これら人材の争奪戦は一層厳しさを増す」と予測する。

 レックスアドバイザーズの岡村康男社長は「採用が経営の重要課題と認識し、中小企業やベンチャーでは経営者が自ら動くことが求められ、大手企業でも採用部門に有能な人材を置くことが必須と思われる」と助言する。

 求職者の活動は多様化しているため、母集団形成に苦しむ企業では採用チャネルの多様化に取り組む必要もある。“待ち”から“攻め”の採用への転換で人材を積極的に発掘する企業が成果を上げるようになっており、これを実現するためには、採用担当者のスキルアップだけではなく、全社で採用に取り組む社内の協力関係を作り上げていくことが欠かせない。

 「大手企業から大量の中間管理職が市場に出てくる。求人は増加しているものの、それらの中間管理職の職能や報酬、コンピテンス、キャリア資産を活かせる場所が極めて少なく限られている。市場が求める経営者、管理職、職能が根本的に変わっている」(アクシアム渡邊光章社長)との指摘からは、企業が求める人材の条件と求職者が保有するスキルとのミスマッチが大きいこともうかがえる。自社の事業運営に本当に必要となる人材の質と量をより慎重に見極めて採用する傾向はさらに強まりそうだ。

 また、みらいワークスの岡本祥治社長は「世の中の変化のスピードがより一層早くなる中で、正社員を前提とした人材マネジメントでは限界が出てきている。1年に1回の人事異動だけでは、世の中のスピードに追い付けないのは明らかであり、社内の人材配置サイクルの短期化と同時に、フリーランスなどの外部人材の積極活用が必要」と、企業を取り巻く環境変化に対応していくために、従来型の人材マネジメントからの転換の必要性を訴えている。

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答1)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答1)
回答社名:アクシアム、KMF PARTNERS、ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス、アンテロープキャリアコンサルティング、フジキャリアデザイン

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答2)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答2)
回答社名:イーストウエストコンサルティング、ジェイ エイ シー リクルートメント、キャリアエピソード、島本パートナーズ、A・ヒューマン

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」((各社回答3)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」((各社回答3)
回答社名:Apex、キーンバウム ジャパン、エリメントHRC、ロバート・ウォルターズ・ジャパン、パーソルキャリア

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答4)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答4)
回答社名:リクルートキャリア、ヒューマンリソシア、みらいワークス、コンコードエグゼクティブグループ、レックスアドバイザーズ

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答5)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2020年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答5)
回答社名:リネアコンサルティング、エンワールド・ジャパン、パソナ、経営者JP、MS-Japan、プライマリー・アシスト
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