2021年1月5日

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 人材需要と採用の課題」新卒売り手市場は終焉 即戦力人材の採用拡大

2021年の人材需要と採用の課題を、企業の人材採用を支援する主要コンサルティング会社の事業責任者を対象にアンケート調査で聞いた。

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 新型コロナウイルスの影響で企業業績が悪化する中、本誌が実施した調査では、2021年の日本の雇用情勢は「良くなる・やや良くなる」という回答が32%、「横ばい」が31%、「やや悪くなる・悪くなる」が37%となった。感染拡大の第3波を受けて予測は難しい状況になっており、今後の収束次第で雇用情勢は大きく左右される。

ポテンシャル人材よりも即戦力人材の採用が優先

 企業の人材採用数は、新卒採用が「減少」(43%)、「やや減少」(29%)と減少予測が7割を超え、これまでの売り手市場の終焉を印象づける結果となった。人手不足を背景に拡大してきたアルバイト・パート、人材派遣も減少の見通しとなっている。

 一方、中途採用では「減少」(9%)が少なく、「増加」(9%)、「やや増加」(30%)となり、約4割が採用数の増加を見込んでいる。

●2021年 日本の雇用情勢・人材採用の増減(回答集計)

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2021年の中途採用マーケットの特徴について、「より需要の伸びる業界・職種と今後需要の減っていく業界・職種の差が、はっきりしていくものと考えられる」(KMF PARTNERS吉田亜紀子director)、「IT業界、ベンチャー企業など採用ニーズが旺盛な業界では積極的な採用活動が行われている」(MS-Japan井川優介取締役)など、コロナ禍の影響は業種や職種、さらに企業によって差が大きく、採用意欲の濃淡がよりはっきりしてくる。

 そして、企業が求める人材については「即戦力性の高い人材に需要が集中すると予想される。コロナショックによるダメージから立て直せず、社内教育コストを減らさざるを得ない企業が多くあると予想されるため」(セールスキャリアエージェント斎藤信人社長)、「OJT等対面での教育が必要となる新卒等の人材の需要が減少し、その分即戦力となるキャリア人材の需要が増加するものと見ている」(プロフェッショナルネットワーク木村善行職業紹介責任者)など、新卒をはじめとするポテンシャル人材よりも、専門性や経験を持つ即戦力人材の採用がこれまで以上に優先されていく傾向が共通の見方となっている。

DX関連、高度技術者、経営人材、巣ごもり需要で採用ニーズ

 2021年に人材需要が期待される分野として多く挙がっているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するための人材だ。

 「データサイエンティスト、データアナリスト等の優秀人材は引く手数多。AI関連案件・人材ニーズも同様」(エリメントHRC清水潤次執行役員)と、専門人材は引き続き奪い合いとなっている。

 コロナ禍によって、本格的にDXを推進する企業がさまざまな業種にわたって増えているが、こうした企業の中には社内の人材育成が十分でないことも多いため、ウィンスリー黒瀬雄一郎代表は「DX系人材は枯渇しており、この分野はかなりの人材需要が出てくる」との見通しを示しており、社外から即戦力人材をスカウトする動きがさらに活発になってくる。

 同時に、DXの取り組みを外部から支援するサービスの拡大も進むことから、リネアコンサルティングの大森崇社長は「コンサルティング業界は引き続きDX関連のニーズが増加。今まではDXを活用した業務改革やRPAの自動化などが主流だったが、今後はトップラインを重視した事業開発やIoT、Analyticsなどの専門性の高い人材ニーズが高まる」と説明する。

 DX関連以外でも高度技術者や経営人材のニーズは堅調で、「環境問題に対する取り組みを加速させ、例えば、自動車業界ではe-mobilityへの移行が加速する結果、AI、センサー技術、HMI分野の技術者」(キーンバウム ジャパン鈴木悦司社長)、「将来に向けた企業活動の根幹をなす研究開発や先端技術の開発者」(テクノブレーン北川太代表)、「新規事業開発や既存事業の構造改革をリードできる経営人材・即戦力人材」(コンコードエグゼクティブグループ矢田真奈エグゼクティブコンサルタント)など、次世代に向けた事業開発に必要な人材への投資に企業は積極的だ。

 また、ロバート・ウォルターズ・ジャパンのジェレミー・サンプソン社長は「在宅時間が増えたことでオンラインサービスとエンターテインメントの利用が急増したため、eラーニング/医療テック/フードデリバリー/ eコマース/ゲーム/モバイルアプリなど」のコロナ下における巣ごもり需要で急伸したサービス分野の求人は2021年も伸びると予測している。

Web面接の導入が進み、採用難易度は上昇傾向に

 2021年の採用課題では、感染防止対策で導入が進んだWeb面接を踏まえた採用プロセスの工夫、柔軟な雇用形態を用意するなど、自社が必要とする人材に多くの企業の中から選ばれるための採用への転換が急務となっている。

 ワークス・ジャパンの清水信一郎社長は、新卒採用について「経団連が昨年9月に発表した調査では、Web面接は対面より評価が難しいと回答した企業が62.7%に上った。採用人材の成果が見えるのは入社後になるため、少なくとも次年度に向けて選考過程の納得性をより高めるために何が必要か、どんな工夫をするべきかをしっかり検討するべきだろう」と助言する。

 中途採用においても、アンテロープキャリアコンサルティングの山本恵亮取締役は「オンラインでの面接が増加していることによって、候補者は気軽に多くの企業へ同時に応募する傾向が増している。よって、採用の見込みのある人材に対しては、面接を通じて自社に興味を持ってもらえるよう働きかけることや積極的に自社についての情報開示・提供して志望度を高めていくことが求められる」と解説する。

 また、複数企業からのオファーが集中するDX人材や高度技術者などには、報酬をはじめとして新しい人事制度を用意して迎え入れる必要も出てきている。同時に、既存の社員に対しても魅力的な働く環境を整えなければ優秀な人材から流出していく可能性が高まる。

 「これまで以上に業務の効率化や生産性を考慮した採用が重要となり、高い成果に応えられる、より高度なスキルを持つ人材や高い実績を出せる人材の採用(ジョブ型採用など)を、柔軟な雇用形態で採用することが国内全体の企業の課題」(ジェイ エイ シー リクルートメント松園健社長)、「企業はいかにして人材に選ばれるか、いわゆる心理的安全性を提供できるかがリテンションに重要と考えられる。場所、時間、雇用形態にとらわれない採用戦術が差別化のカギ」(レックスアドバイザーズ岡村康男代表)というように、多様な雇用形態で人材を確保する採用や人事のあり方へと見直す時期に来ていることをうかがわせる。

社員自らが選択していく「社員が活きる」時代へ

 コロナ禍は企業活動に大きな影響を与え、多くの企業が事業戦略の再考に迫られている。今後の人材マネジメントの方向性について、ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングスの渡部昭彦社長は「イノベーティブな人材獲得のためには、従来の基準に拘らず多様性を持った柔軟な評価軸を持つことが望まれる」とし、人材評価の見直しを示唆する。

 また、経営者JP井上和幸CEOは「ウィズコロナのみならずアフターコロナに向けて、コア人材・幹部候補人材の育成・選抜・採用と余剰人材の代謝マネジメント、オペレーション人材についての自動化・無人化を、それぞれ待ったなしで推し進められるか否かが、イコール企業の存続と切り離せないものとなる」と、一貫した人材マネジメントの必要性を説く。

 みらいワークスの岡本祥治社長は「その会社だけでしか活躍できない人材育成をしながらも、業績が悪くなった時にリストラを実施するのは無責任ともいえる」と指摘した上で、「在籍する社員が『人生100年時代』を生き抜くためのサポートをするべきであり、具体的には社員に対して他の会社で戦えるような教育やセカンドキャリアに向けた自己啓発サポートをするといった活動が必要となっていくであろう」と、社員のキャリア形成に対する企業の役割を強調している。

 2021年は、新型コロナや働き方改革による社員の働き方の大きな変化を受けて、これまで会社が主体となって標榜してきた「社員を活かす」時代から、社員が主体となってライフキャリアを選択していく「社員が活きる」時代へと本質的な転換が始まりそうだ。

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答1)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答1)
回答社名:ワークス・ジャパン、ロバート・ウォルターズ・ジャパン、リネアコンサルティング、レックスアドバイザーズ、リス

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答2)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答2)
回答社名:Results、リクルートキャリア、Youth Planet、みらいワークス、プロフェッショナルネットワーク

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答3)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答3)
回答社名:プライマリー・アシスト、フジキャリアデザイン、ヒューマンリソシア、ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス、パーソルキャリア

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答4)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答4)
回答社名:パソナ、テクノブレーン、セールスキャリアエージェント、ジェイ エイ シー リクルートメント、島本パートナーズ

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答5)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答5)
回答社名:KMF PARTNERS、コンコード エグゼクティブグループ、経営者JP、キャリア・デベロプメント・ アソシエイツ、キャリアエピソード

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答6)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答6)
回答社名:エンワールド・ジャパン、キーンバウム ジャパン/K.J.コンサルタンツ、エリメントHRC、クレドス、MS-Japan

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答7)

主要人材コンサルティング会社アンケート「2021年 企業の人材需要と採用の課題」(各社回答7)
回答社名:EPIC Partners、A・ヒューマン、ウィンスリー、アンバース、アンテロープ キャリアコンサルティング
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