人事担当者に衝撃を与えた牛丼チェーン「すき家」の店舗閉店
上場企業のゼンショーホールディングスの100%子会社ゼンショーが運営する牛丼チェーン「すき家」が労働力不足によって、店舗の一時的な閉店や時間帯休業に追い込まれた一件は人事担当者に大きな衝撃を与えた。
労働需要の急激な高まりによる人材の採用難が売上や利益を圧迫しただけでなく、これまで成長を支えてきたビジネスモデルそのものに影響を与えたからだ。
「すき家」では人手不足と従業員の負担軽減のための改装などで、今年2月から4月にかけて最大123店舗で一時休業や時間帯休業(1日のうちで1時間でも休業した店舗は計上)の措置を取った。
また、それ以外に124店舗でこれまで24時間だった営業時間を、夜22時から朝9時までの深夜・早朝営業を休止した。
その後、「2月から3月にかけて流通産業全体に及ぶ折からの人手不足と、仕込みにこれまで以上の手間を要する新商品の導入に伴い、『すき家』従業員の負担増が深刻化した」として、店舗の労働環境改善による従業員の負担軽減を経営の最重要課題に設定した。
6月1日、全国7地域で運営会社を分社化。「地域正社員制度」を導入して同一地域内での転勤が可能なマネジャー(地域正社員)の採用を始め、解決を図ろうとしている。
デフレ時代の価格競争で人件費にまで及んだコスト削減が、景気が回復する局面になって人材への負荷が一気に不満となって噴出した格好だ。
こうしたことは、価格競争の激しかった牛丼チェーン業界でまず始めに起きたことであり、ゼンショーに限ったことではない。人材不足と採用難という問題によって経営戦略の変更を迫られる企業が続出しそうだ。そして、人材戦略もまた見直す時期にきている。
景気は回復しているが人口減少で国内マーケットが縮小する上、人件費は上昇傾向にあるため採用基準を下げてまで正社員を採用するのは経営リスクが大きい。
必要な人材を確保するためには、もう一度正社員の業務を見直した最適な配置によって、正規・非正規社員を含めた多様な人材を活用する必要がある。
求人倍率の改善で人材不足はより深刻に
労働市場の状況は、昨年後半から人材不足が顕在化しており深刻化する一方だ。有効求人倍率はリーマン・ショック以前の高水準となっている。
すでに、採用の現場では「東京五輪を控え、依頼される仕事は多いが人手不足で受注することができない」(建設会社人事担当)、「景気が回復しているのに期間工が採用できない」(大手自動車メーカー採用担当)など、深刻な人手不足に悲鳴が上がっている。