2016年11月17日

頻発するテロやトラブルから海外駐在員をどう守るのか オオコシセキュリティコンサルタンツ 大越修社長

世界中でテロや事件が頻発するようになり、日本人の海外駐在員や出張者がテロの犠牲になる事件が起きている。ヨーロッパでもテロが相次いで発生しており、もはや世界に安全な地域はなくなった。海外勤務者をどのように守ったらよいのか、日本の企業セキュリティの草分けオオコシセキュリティコンサルタンツ社長の大越修氏に聞いた。

 (10800)

大越修 代表取締役社長

【プロフィル】
警視庁に20年間在籍。この間、3年間外務省へ出向し領事としてニューヨークへ。海外におけるセキュリティを経験すると同時にFBI、NY市警など米国の法治機関と親交を持つ。帰国後、1987年からエッソ石油に入社、セキュリティ部門を設立。その後、JPモルガン銀行、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)にてセキュリティマネージャーを務める。米国の危機管理専門会社クレイトン・コンサルタンツ(トリプルキャノピーグループ)のシニアコンサルタントを経る。米国務省が支援するOSAC(Overseas Security dvisory Council)日本支部の運営委員、日本セキュリティ・マネジメント学会、危機管理システム研究学会会員。世界的なネットワークを持つ日本の企業セキュリティの草分け的存在。

これまでどのようなセキュリティ上のトラブルや事件が起きているのでしょうか。

 当社が扱った案件で一番多いのは、会社の業務に関連した脅迫です。例えば、下請け業者が契約を切られたことに不満を抱いて、日本人駐在員を殺そうとするような案件です。これはかなり多く、インドネシア、韓国、ベトナム、フィリピン、タイと、どこの国でも起きています。

 同じ脅迫でも、発展途上国の場合は少しタイプが違っています。例えばアフリカでは最近、駐在している日本人駐在員が誘拐されるリスクが極度に高まっています。誘拐事件の交渉では時間も長くかかりますし、誘拐された駐在員の方の命の危険もあります。

 犯人側の要求にどう対応するか、かなりの注意が必要となります。その時はすぐに当社から専門のコンサルタントを派遣して、現地のセキュリティの状況をチェックするとともに、現地の警察や日本大使館とも連携して事件解決の全体的なマネジメントを行いました。

 当社がお客様にお願いしているのは、まだ危機的状況に発展するか分からない状況でも異常な事態になったら、とにかく一刻も早く連絡いただくことです。私どもには今までに培ったノウハウがありますから、推移を見守っていていいのか、早く手を打たなければいけないのかの判断がつきます。

 もし危機的状況にあるならば、専門のコンサルタントを現地に派遣するといった対応をしています。本来は、そういったトラブルが起こらないようお客様の注意を喚起して自衛していただくことが一番ですが、残念ながら起こってしまった時の対応も万全にしています。

テロが相次いで発生していますが、いま世界で起きていることをどう理解したらよいのでしょうか。

 世界中でイスラム過激派によるテロが頻発しています。7月14日の仏ニースのテロ事件では、花火見物客の列にトラックが突っ込み300人近い死傷者が出ました。その他のヨーロッパでもテロが頻発しており、もはや安全な国はありません。

 外務省でも注意喚起を行っているように、世界中のどこにいたとしても、日本人もISのターゲットになるような状況になってきています。今までは日本人というと、「我が国によくしてくれるから」といった理由で許されている一面もありましたが、今後はそうはいかないと思います。

 特に心配なのはアジアの状況です。ISを支持するイスラム過激派組織が、アジアにはいくつもあります。9月2日には、フィリピンのミンダナオで「アブ・サヤフ」という組織がテロを起こし80人以上が死傷しました。

 7月1日にバングラデシュの首都ダッカでは外国人向けレストランが襲撃され20数人が殺害され、このうち7人は日本企業のビジネス関係者でした。

 この東南アジアを拠点としている犯人グループのジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラディシュについては日本企業の人質が「日本人だ、撃たないでくれ」と叫んでも殺されてしまった事件として、過激派が日本人を特別とは見ておらず、攻撃のターゲットとなっていることが明らかになった象徴的な出来事だと思います。

 中東やヨーロッパを拠点とするイスラム過激派グループは、銀行強盗をしたり、石油プラントを強奪したり、支配地域から税金をとったりして活動資金には困っていません。そのため、新たに支持者として加わった戦闘員に給料を出すこともできる。

 それに対して、東南アジアを拠点とするグループはお金がないんです。活動資金を得るため、すぐお金が手に入る手段として身代金誘拐事件を起こすのではないかという懸念があります。

 ダッカの人質事件では、凄惨さや残虐性を示すための殺害が目的でした。彼らがなぜ残虐性をアピールするのかといえば、その後、自分達の要求を相手に飲ませることも一つの目的のためなんです。

 特に日本においては2020年に東京オリンピックが控えていますから、イスラム過激派にとっては自分達の存在を全世界にアピールする絶好の機会と捉えているはずです。日本や東南アジアにおいて日本人を狙ったテロの可能性は高まっています。日本企業もテロに備えておかなければなりません。

テロやトラブルに対してどのように海外駐在員をサポートしているのでしょうか。

 テロ対策だけでなく、海外に出ている日本人社員の方やご家族の方に、犯罪や事故などセキュリティ上の問題が起きた時のサポートも行っています。
 また、医療が未発達の国では、病気やケガ、交通事故でも対処の仕方次第では命にかかわることもあり、すべてが完備されている日本の環境とはまったく違っています。事件や事故が起きたときはすぐに連絡していただき、適切に対処することがとにかく重要です。
 事故を誘発しないためには、普段から防止するための準備が必要なんです。一つは、海外赴任や出張前の研修です。そこで、日本とはどういう部分が違うかを知っていただき、海外に行かれる方ご自身やご家族の意識を高めていただきます。
 二つめは、お客様の会社がいざという時に対応できるような体制を作り上げること。
 三つめは、お客様の会社のオフィスや工場といった海外拠点、駐在員住宅、駐在員の方がよく足を運ぶショッピングセンターやスポーツクラブ、通勤経路などのセキュリティのチェックを当社で行い、治安面で問題があれば報告して改善していただく。そういった多方面からの準備を行うことで、やっと海外での安全な活動や、もしもの時の対応ができるようになります。

オオコシセキュリティコンサルタンツのサービス内容について話が聞きたい

オオコシセキュリティコンサルタンツのサービス内容について話が聞きたい
担当者からご連絡を差し上げますので、こちらからお問い合わせください。
30 件

この記事が気に入ったら
「いいね!」しよう

日本人材ニュース|人材採用と人材育成の人事専門誌

関連する記事

【海外出張者と駐在員のリスク管理】ラスベガス 野外コンサート会場へ向け男が銃を乱射 59人死亡 527人負傷

【海外出張者と駐在員のリスク管理】ラスベガス 野外コンサート会場へ向け男が銃を乱射 59人死亡 527人負傷

世界中でテロやトラブルが頻発している中、海外出張者と駐在員のリスク管理を今まで以上に徹底していく必要がある。危機管理のプロであるオオコシセキュリティコンサルタンツの廣瀬シニアコンサルタントに、ラスベガス銃乱射事件の概要と共に考察と対策について寄稿してもらった。
【海外出張者と駐在員のリスク管理】ロンドン地下鉄爆弾事件 2人目の容疑者逮捕でテロ警戒レベルを引き下げ

【海外出張者と駐在員のリスク管理】ロンドン地下鉄爆弾事件 2人目の容疑者逮捕でテロ警戒レベルを引き下げ

世界中でテロやトラブルが頻発している中、海外出張者と駐在員のリスク管理を今まで以上に徹底していく必要がある。危機管理のプロであるオオコシセキュリティコンサルタンツの廣瀬シニアコンサルタントに、ロンドン地下鉄爆弾事件の概要と共に考察と対策について寄稿してもらった。
【海外出張者と駐在員のリスク管理】海外駐在員の身近にある危機 中国湖北省で内装業者を装った麻薬製造組織を摘発

【海外出張者と駐在員のリスク管理】海外駐在員の身近にある危機 中国湖北省で内装業者を装った麻薬製造組織を摘発

世界中でテロやトラブルが頻発している中、海外出張者と駐在員のリスク管理を今まで以上に徹底していく必要がある。危機管理のプロであるオオコシセキュリティコンサルタンツの廣瀬シニアコンサルタントに、中国湖北省で内装業者を装った麻薬製造組織が摘発された事件の概要と共に考察と対策について寄稿してもらった。
【海外出張者と駐在員のリスク管理】15人の犠牲者を出したバルセロナ・車両突入テロを分析

【海外出張者と駐在員のリスク管理】15人の犠牲者を出したバルセロナ・車両突入テロを分析

世界中でテロやトラブルが頻発している中、海外出張者と駐在員のリスク管理を今まで以上に徹底していく必要がある。危機管理のプロであるオオコシセキュリティコンサルタンツの廣瀬シニアコンサルタントに、15人の犠牲者を出したバルセロナ・車両突入テロ事件の概要と共に考察と対策について寄稿してもらった。
グローバル人材の新卒採用は増加するも、7割の企業で不足

グローバル人材の新卒採用は増加するも、7割の企業で不足

 グローバル人材の採用は5割の企業で増加しているものの、いまだに約7割の企業が不足していると感じていることが、総務省が発表した「グローバル人材育成の推進に関する政策評価」で明らかとなった。

この記事のキーワード

この記事のライター

編集部(インタビュー担当) 編集部(インタビュー担当)

サイト会員限定記事

セミナー・イベント

プレスリリース