2019年11月7日

人材不足のピンチをチャンスに変える 外国人材の採用と雇用管理の実務ポイント

 少子高齢化が急速に進む日本で企業の人材不足を補う救世主として、外国人材の活用に期待が高まっている。単なる労働力ではなく、共に働く仲間として、安心して安定的に能力を発揮できる環境を整えるために、人事担当者が知っておくべき実務のポイントを社会保険労務士の本間照美氏に解説してもらった。

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本間照美 社会保険労務士(汐留社会保険労務士法人)

 外国人材を採用する際に注意すべきポイントには、「国籍で差別せず、適性や能力評価で公平に選考をする」「募集にあたって、外国人材が理解できる方法で条件を明示するよう努める」「適正な在留資格があるかを在留カードで確認する」などがあります。

採用時に必要な適正な在留資格とは

 2019年9月現在、日本の在留資格の種類は29種類あります。まずは在留カードに記載されている就労制限の有無の項目を確認しましょう。就労に制限が無い場合は、日本人と同様にどんな仕事にも就くことができます。就労に制限がある場合は、記載された在留資格の範囲でなければ就労することはできません。

 例えば、通訳(「国際業務」)の採用に「介護」の在留資格者が応募した場合は、介護の資格のままでは採用ができないのです。転職者などを採用する場合に業務に応じた適正な在留資格があるかどうかを確認するには、就労資格証明書を提出してもらいましょう。

 在留カードが就労不可の場合は、原則として就労はできません。ただし、「資格外活動許可」を受けると「留学」や「家族滞在」でもアルバイト等で就労することができます。「資格外活動許可」を受けているかどうかは在留カードの裏書や資格外活動許可書で確認をしましょう。

 「資格外活動許可」では1週間の就労時間は28時間以内とされています。アルバイトの掛け持ちをしている場合も通算して週28時間を超えて就労することはできませんので、本人への確認も必要です。

 なお「留学」の場合、学校の長期休暇中は1日8時間以内、週40時間以内の就労が可能です。

 以前、留学生の支援をしていた時、無断で工場での夜勤アルバイトを掛け持ちしていたことが発覚しヒヤリとした経験があります。幸い冬休み期間中だったため、大事にならずに解決しましたが、信頼関係に基づく時間管理の大切さを痛感しました。

 また「資格外活動許可」での就労は風営法に抵触しない限りは職種の制限がないことも覚えておくとよいでしょう。

 次に在留期限の確認をします。採用後に期限が切れた場合もそれ以降はオーバーステイという不法就労の状態となりますので、雇用期間を通して在留期限の管理が必要です。在留期間の更新手続きには会社が発行する在職証明書が必要ですので、期限が切れる3カ月くらい前に面接などで確認しておきましょう。

 どんなに素晴らしい人材と縁があっても、在留資格が適正でなければ採用することはできません。初めて海外から招聘する場合や資格の種類を変更する場合などは、手続きに数カ月かかることがありますので、時間に余裕をもって採用計画を進めましょう。

 また許可が下りないため採用ができない事態に備えて、内定通知書等に適正な在留資格に基づく雇用が前提であることを明記して、双方で確認することも大切です。書面には日本語だけでなく、当該外国人材が理解できる言語を併記することが望まれます。

記載された在留資格の範囲内でのみ就労可

在留資格一覧

在留資格一覧

特別永住者は在留資格ではなく、日本に在留する(生活する)ための資格
社会保障協定対象国

社会保障協定対象国

日本の社会保険、労働保険への加入が原則

 日本と「社会保障協定」を締結している国は、例外的な取り扱いが認められる場合があります。これは保険料の二重負担や掛け捨ての問題を解決するため、日本と相手国の間で社会保障制度の取り扱いのルールを定めたものです。

 2019年9月に発効した中国との協定を含み、現在20カ国で協定が発効済み、2カ国との発効が準備中です。協定の対象国からの人材は社会保険の加入が免除になることがありますので、国ごとに協定事項を確認しましょう。

 手続きには相手国の関係機関が交付した「適用証明書」が必要となります。事業所調査などで有効な適用証明書が確認できないと、遡って日本の制度に加入することになる場合がありますので、有効期間内の適用証明書を必ず備えておきます。

 また、対象者に被扶養配偶者がいる場合は、同様に日本の社会保障制度への加入が免除されます。

 社会保障協定以外で例外的な取り扱いの対象者にワーキングホリデー制度による入国者や駐在員などがいます。ワーキングホリデーはその目的が日本で休暇を過ごすことにあり、働くことが目的ではないため要件に該当しても雇用保険の被保険者になりません。また駐在員なども母国の失業補償制度の適用を受けていることが立証された場合には雇用保険に加入しません。

 外国人材の世帯には、夫婦、親子の姓が異なるケースがよくあります。扶養に入れる場合は、住民票等で会社側が続柄を確認する必要があります。なお要件を満たしていれば、海外居住の親族を被扶養者にすることもできます。しかし、2020年4月1日からは要件に原則として「国内居住」が追加されますのでご注意下さい。

外国人雇用状況報告は事業主の責務

 特別永住者や在留資格が「外交」・「公用」以外の外国人材の雇入れと離職の際には、氏名、在留資格などを管轄のハローワークへ届け出ることが義務付けられています。

 雇用保険加入者の場合は、資格取得届や喪失届の所定欄に必要事項を記載して届け出ます。また非加入の場合には、「外国人雇用状況届出書」を雇入れと離職の日のそれぞれ翌月末日までに届け出ることになっています。これを怠ると「30万円以下の罰金」が科せられます。

 最後は退職時の留意点です。日本の年金制度に6カ月以上加入して帰国する場合は、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に脱退一時金を請求できます。ところが加入期間が10年以上の場合は制度改正により将来日本の年金を受給できるようになったため、脱退一時金の請求はできなくなりました。

 退職して帰国する場合に住民税の問題もあります。住民税は1月1日時点で前年度の所得に対して課せられますので、年度の途中で非居住者になっても免除されず、帰国後であっても納税義務があります。

 そのため退職前に課税の仕組みを説明して、最終給与から一括で徴収し、納付することが望ましいといえます。帰国前に本人が納税管理人を選任し、市町村や税務署に届出をしておくと、本人に代わって税金の納付や還付金の受け取りなどを代行してもらえます。

在留カードで就労有無や在留期限を確認

「 在留カード」の主な記載内容

「 在留カード」の主な記載内容

(出所)出入国在留管理庁「 在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方

共に働く仲間として・・・

 厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」では、採用時の労働条件の明示などについては母国語や平易な日本語を使用するなど、理解しやすい内容で説明することが努力義務となっています。

 言語に加え、出身国の生活習慣や文化を理解しようとすることで信頼関係が増幅し、外国人材が安心してその能力を発揮できるようになるかもしれません。例えば、旧正月を祝うアジアやクリスマスを大切にする欧米からの社員は、年末年始とは異なる時期の休暇を希望するでしょう。

 2019年4月に施行された有給休暇取得の義務化を活用するのも1つの方法です。外国人を10人以上雇用する場合には、人事課長等を外国人労働者の雇用労務に関する責任者として選任することとなっています。相談や苦情の窓口体制をつくって、安心して働きやすい職場環境に
つなげていきましょう。

19年1月に公表された昨年度の外国人労働者数は約146万人、前年比約14%増の過去最高となりました。4月に創設された在留資格「特定技能」により、ビルクリーニングや飲食、建設を含む14の特定産業分野に今後5年間で最大34.5万人の受入になると見込まれています。

 現在、外国人材を雇用していない企業でも雇用の機会が増大すると考えられます。外国人材は単なる人材不足の救世主だけではなく、増加する訪日外国人対応や企業の海外進出時の即戦力など、ピンチをチャンスに変える「人財」としてますますその活躍に期待が高まることでしょう。

すべてチェックされていることが外国人雇用の基本

外国人材雇用管理にかかるチェックリスト

外国人材雇用管理にかかるチェックリスト

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