2017年9月11日

対日投資拡大でバイリンガル人材の採用激化

 外資系企業の日本への投資は拡大傾向が続いており、バイリンガル人材の需要が高水準となっている。海外事業を強化する日系企業とも採用で競合するケースが増えており、バイリンガル人材の給与水準や採用コストが上昇している。

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バイリンガル人材の給与水準や採用コストが上昇

 今年度に入ってバイリンガル人材の採用はより一層難しくなっている。「年俸500万円のバイリンガルのスタッフを年俸800万円で引き抜かれた」(上場企業幹部)というようなケースも出てきている。

 経済産業省の「外資系企業動向調査」によると、外資系企業の日本のビジネスコストにおける阻害要因については「人件費」と回答した企業が71.3%と最も多く、前年から1.9ポイント上昇した。日本人を採用確保する上での阻害要因は、1位が「英語でのビジネスコミュニケーションの困難性」(56.3%)、2位が「給与等報酬水準の高さ」(53.3%)で、この二つが最大の悩みだ。
 さらに、3位以下には、「労働市場の流動性不足」(34.1%)、「募集・採用コスト」(31.9%)、「厳格な労働規制」(22.4%)などが挙がる。特にバイリンガル人材の採用ニーズが高まることによって、「募集・採用コスト」(前年比2.7ポイント増)は年々上昇している。

 外資系人材紹介会社ロバート・ウォルターズ・ジャパンがまとめた「グローバル給与調査」によると、2016年はバイリンガルで専門的な分野での知識・技術を持つ人材の給与に著しい伸びが見られたことが明らかになっている。例えば、セキュリティ/リスク関連のITスペシャリストの給与は前年から最大25%も上昇した。
 デイビッド・スワン同社社長は、7月末に発表した17年第2四半期採用動向レポートにおいて、「少子高齢化などによる人材不足は加速しているが、英語・日本語の両言語に堪能で特定の専門性を備えたバイリンガル人材の需要は高止まりの状況が続いている。このスキルセットを持ち合わせた人材の供給が需要に満たないことから給与水準の増加は下半期も続いている」と解説している。
専門性の高いバイリンガル人材は争奪戦

専門性の高いバイリンガル人材は争奪戦

●バイリンガル人材の需要

(出所)ロバート・ウォルターズ・ジャパン「グローバル給与調査2017」

バイリンガルの求人倍率は多くの職種で高水準

 実際に、外資系企業が必要とする専門性の高いバイリンガル人材は奪い合いの状況となっている。バイリンガル人材の求人サイト「Daijob.com」の転職求人倍率(2カ国語以上の言語でビジネスレベル以上のスキルを条件とする求人と、そのスキルを持つ転職希望者の需給バランス)は6月末の時点で、「電機(電気/電子/半導体)技術系」(7.10倍)、「メディカル/医薬/バイオ/素材/食品技術系」(6.17倍)、「マーケティング/PR」(4.71倍)、「IT技術系」(4.45倍)、「総務/人事/法務」(3.96倍)、「営業」(3.28倍)、「財務/会計」(3.24倍)と、多くの職種で高水準だ。
 大手人材会社パーソルキャリア(旧インテリジェンス)の人材紹介サービス「バイリンガル リクルートメント ソリューションズ」のナイーム・イクバルマネージング・ディレクターは、「自動車、化学、機械、コンサルティングなど、幅広い業種の外資系企業からバイリンガルの求人が出ている。特に、本国とのスムーズな連携や日本の優れたメーカー、サプライヤーとの関係を強化するために、技術が分かり、コミュニケーション力の高い人材を求める企業は多く、外資系企業の高い採用意欲は当面継続する」と見込んでいる。
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●職種別グローバル転職求人倍率

(出所)ダイジョブ・グローバルリクルーティング「グローバル転職求人倍率」

外資系企業の日本での設備投資や雇用が拡大

 バイリンガル人材の採用が難しくなっている背景には、外資系企業の日本での投資が伸びていることがある。外資系企業の設備投資額は2013年度が9995億円、14年度が1兆1394億円、15年度が1兆5928億円と、3年連続で増加している。国内の外資系企業数は16年3月末時点で3410社。前年から181社増えた(経産省調べ)。

 政府は戦略特区の優遇措置などで2020年までに対日直接投資倍増を打ち出しており、外資系企業を積極的に呼び込む考えだ。

 欧米企業だけでなくアジア企業の日本進出が増えており、例えば、中国の通信機器大手ファーウェイは年内に日本で大型工場を新設する予定で日本の技術を取り込むための採用を強力に進めている。日本での研究開発、営業・サプライチェーンの体制強化、日系企業への資本参加やアライアンスなどの動きが活発になれば人材需要はさらに拡大する。
 外資系企業の15年度の常時従業者数は62.4万人で、製造業の従業員数がほぼ横ばいで推移する一方、非製造業は過去5年で10万人以上増加した。中国や東南アジアからの観光客が至る所で日本製品を買いまくる“爆買い”は落ち着いたように見えるが、今年上半期の訪日客数は前年同期比17.4%増の1376万人に達し、訪日外国人観光客は増え続けている。免税小売店の新規出店や売り場面積の拡張などが相次ぎ、多言語対応が可能な販売員や商品説明のためのコールセンターなどでインバウンド需要に伴う人材ニーズが拡大している。

 今後1年間の雇用見通しについても3割以上の外資系企業が増員を予定している。

 こうした外資系企業の採用動向について、人材紹介大手ジェイ エイ シー リクルートメントの松園健社長は、「日本は依然として世界有数の消費市場であり、充実したインフラが整っている点も外資系企業にとって魅力的だ。日本にフィットするサービスを提供している外資系企業は事業を拡大させており、大規模採用を行っている。高齢社会で需要が見込まれる医療サービスやIT分野のスタートアップの参入も増えている」と話す。
外資系企業の日本への投資は拡大傾向

外資系企業の日本への投資は拡大傾向

●設備投資額の推移

(出所)経済産業省「外資系企業動向調査」
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●今後1年間の雇用見通し

(出所)経済産業省「外資系企業動向調査」
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