2016年7月28日

「ポケモンGO」に見るビジネスモデルと新たな可能性

ゲーム、「Pokémon GO(以下、ポケモンGO)」の勢いが止まりません。拡張現実(Augmented Reality、以下AR)の技術が、ゲームプレーヤーを虜にし、企業もまた新しいタイプのゲームを利用したビジネスチャンスの可能性に熱い視線を送っています。

人々を魅了する「ポケモンGO」とは?

 (19978)

「ポケモンGO」は、2016年7月から、米国を皮切りに、世界中でスマートフォン向けに配信が始まった新感覚のゲームです。米国のNiantic Inc.(以下、Niantic)が開発を手掛け、株式会社ポケモンや任天堂もプロジェクトに参画しています。

このゲームのメーンキャラクター、「ポケモン」は、もともと人気ゲームソフト、「ポケットモンスター」シリーズに出てくる生き物のこと。ポケットに入れて持ち運びができるほどの大きさであることから、この名がつきました。

種類は豊富で、人間と暮らしているモンスターもいますが、野生で、さまざまな場所に生息しているといわれています。

ゲームの中でプレーヤーはモンスターボールを使い、ポケモンを捕まえることができます。
また、自分のポケモンと他人が持つポケモンを戦わせたり、プレーヤー同士が交流することもできるなど、「ポケモンGO」はデジタル時代の新たな価値を提供しています。

スマートフォンが誘う別世界

スマートフォンをかざせば、そこに映し出されるのは、自分が居る場所の現実の風景。

その風景を辿りながら、画面上に現れてくるポケモンンを探し出すという行為に夢中になり、プレーヤーは童心に返り、まるで宝探しをしているかのような感覚に陥ります。

ゲームを進める過程で、リアルな世界を歩き回りながら、バーチャルなモンスターとの出会いを楽しむことができるということが、人々を惹きつける要因の1つにもなっています。

「ポケモンGO」は、従来のゲームのイメージを大きく変え、未知の可能性を秘めたキラーアプリでもあるといえそうです。

米国のモバイルアプリマーケティング調査会社、Sensor Towerの2016年7月19日付の記事は、ゲームがリリースされて以降、既に3,000万回以上のダウンロードがなされていると伝えています。

日本でも同7月22日に配信が始まりましたが、大量のアクセスが集中し、ダウンロードに時間がかかるといった問題が発生するなど、その人気ぶりが伺えます。

リアルとバーチャルの両方を体感できるAR

「ポケモンGO」は、AR技術とGPS(全方位情報)による位置情報、それにスマートフォンのカメラ機能が融合したテクノロジーです。

そこで使われているのは、現実の情報にさまざまなデジタル情報を重ね合わせることで、現実の世界だけでは表現できなかった新たな世界観を生み出すことができる技術です。

たとえば、街中でスマートフォンをかざすと、画面上に自分の行きたい方向のリアルな景色が映し出されるとともに、その中にあるさまざまな店舗やビルの情報が映し出されるという仕組みもARで実現しています。

ARを体験するには特殊な眼鏡やハードウェアは不要で、スマートフォンにアプリをダウンロードさえすれば、誰でも手軽に楽しむことができるという使い勝手の良さが注目されています。

「ポケモンGO」のビジネスモデルとは?

「ポケモンGO」のビジネスモデル

「ポケモンGO」のビジネスモデルは大きく2つに分類されます。

1つは、ゲームユーザー(プレーヤー)からの収入です。ゲームの参加人口を多くするために、アプリのダウンロードや基本的なプレーを無料とし、その上で、ゲームを有利に進めるための一部のアイテムなどに課金するという仕組みです。

これは広くオンラインゲームやソーシャルゲームなどに導入されているFree-to-Playという収益モデルです。

2016年7月13日付の雑誌Forbes Japanの電子版(下記リンク参照)では、米国の調査会社のデータでは「リリースからわずか4日間で14億円の売上があると推定され」、その多くが一般のユーザーのアイテム課金からの売上でであったと指摘しています。

ポケモンGO、広告でも巨大ビジネスに 「提携店舗」受付開始へ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

ポケモンGO、広告でも巨大ビジネスに 「提携店舗」受付開始へ | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

企業も狙うポケモン特需

もう1つのビジネスモデルは、企業からの収入です。

現在、Nianticがあらかじめ選定したリアルの公園や施設などを「ポケストップ」や「ジム」といった公式スポットに認定しています。ポケモンを捕まえるために必要なモンスターボールは「ポケスポット」で手に入れることができますから、プレーヤーは、必然的に、これらのスポットに立ち寄ることになります。

そうしたスポットや、周辺の店舗などでは、ポケモンをおびき寄せることのできるツールなどを用いて、プレーヤーを集客したり、キャンペーンを展開するなどして、店舗への誘導を行い、そこで提供するサービスや物品を消費してもらうおうと、さまざまな工夫をこらしています。

国内では、日本マクドナルドが、同社の全国約2,900店舗の内、400店舗を「ジム」に、残る2,500店舗を「ポケストップ」としました(2016年7月22日付同社ニュースリリースより)。プレーヤーを店舗に立ち寄らせることで、売上の増加につなげようという狙いがあります。

このように、「ポケモンGO」に対する企業の期待が高まっていることから、Nianticは企業からスポンサー料を受取る、いわゆるスポンサードロケーションを将来始めることで、「ゲームユーザーへのアイテム課金とは別の収益源を確保することを計画している」(2016年7月13日付Financial Times電子版)と同社のJohn Hanke氏は述べています。

地方創生やマーケティングの起爆剤として

本ゲームが集客力に絶大な効果があることは、すでに世界中で実証されていることから、日本でも多くの企業が、このゲームを新たなビジネスチャンスにつながる重要なツールであると捉えていることは容易に推測できます。

いくつかのビジネスが想定できますが、集客力に優れている特性を活かし、インバウンド(外国から日本への訪問)の観光分野への活用が考えられます。

また、地方の観光地への誘導や過疎地でのイベント開催、また、オリエンテーリングやハイキング、そしてウォーキングなどと組合せれば、地区町村が行う住民向けの健康増進策にも一役買うことになるかもしれません。

ゲームをしながら楽しく運動を

実際、Web解析企業である、Similar Webの 2016年7月8日付のデータによれば、「ポケモンGO」ユーザーの1日の平均利用時間は、43分23秒となっています。

このデータに基づき、筆者が計算した結果によれば、体重60㎏の人が楽しみながら1日43分のウォーキングを7日間継続すると、消費カロリーは1,106kcal(安静時の消費カロリーは考慮しない)となり、これは直径8.5㎝、重さ56g、210kcalのドーナツ約5個分のカロリー(下記リンク「簡単!栄養andカロリー計算」掲載のドーナツを参考にした)に相当します。

性別や歩く速度、そして継続時間などで消費カロリーは変動すると考えられますが、このゲームを利用することで、一定の運動量を確保することができれば、メタボリックシンドロームなどの予防にも応用できるようになるかもしれません。

また、テクノロジーを駆使したマーケティングへの活用も考えられます。

たとえば、IT/ICTを利用した屋内外測位技術(位置情報を利用して屋内外の人や物の動線、位置などを計測する技術)を用いて、「ポケモンGO」による人の流れや、人数、日時、場所、滞留時間といった情報と連動させることができれば、ビッグデータとして営業戦略やキャンペーンの展開といったマーケティング活動、延いては企業経営にも活かすことができるようになる可能性も考えられます。

5 Charts That Show Pokémon GO's Growth in the US

5 Charts That Show Pokémon GO's Growth in the US

簡単!栄養andカロリー計算

簡単!栄養andカロリー計算

事故が続出、過熱するゲームには懸念の声も

「ポケモンGO」は屋外を散策しながら楽しめることから、健康的なゲームであるとの声がある一方で、ポケモンを探すことに熱中するあまり、プレーヤーが交通事故に遭い、怪我をするなどのトラブルが世界各地で続出するなど、問題が発生しています。

また、「ポケストップ」などに大勢の人が集まることを知り、強盗が待ち伏せするなどの行為や、ゲームをしながら、いつの間にか私有地や立入禁止区域に迷い込んでしまうなど、プレーヤー自身のマナー違反も指摘されています。

今後、幼い子供がポケモン探しに没頭し、夕暮れ時に街を徘徊している間に誘拐されたり、不特定多数の人が集まる場所を狙い、テロや凶悪犯罪の標的にされるなどの可能性が全くないとはいえないでしょう。

国内では、歩きながらスマートフォンを操作する、いわゆる「歩きスマホ」が社会問題化していています。その利用について、「ポケモンGO」の公式ホームページには、ガイドラインや利用規約が掲載されています。

繁華街などでも注意喚起をするなど、徐々に対策は進んでいるようですが、老若男女が楽しく遊べるように、自分のためにも、そして、周囲の人のためにも安全な使い方を心掛けたいものです。
21 件