2018年8月17日

賃金アップによる待遇強化で、待遇差のある各種手当の廃止へ

働き方改革関連法の柱の一つである「同一労働同一賃金」について、正規と非正規の待遇差見直しに向けて各社は対応を進めている。今回は、その中でも従業員のうち非正規雇用社員が約半数を占める日本郵政グループの対応について解説する。(文・溝上憲文編集委員)

同一労働同一賃金に向けて、自社の見直しが進む

 「働き方改革関連法」が2018年6月29日に国会で可決・成立した。

 大きな柱の一つである「同一労働同一賃金」についてはパートタイム・有期に雇用労働法の制定と改正労働者派遣法が施行に向けて動き出した。また6月1日には正規社員と非正規社員の待遇差を巡って争われていた長沢運輸訴訟とハマキョウレックス訴訟の最高裁判決が下された。

 今後は法律の趣旨や指針(同一労働同一賃金ガイドライン)、最高裁が示した判断基準に沿って自社の正規と非正規の待遇差の見直しを進めることになる。だが、今年の春闘ではすでに先取りした労使交渉も始まっている。とくに話題になったのが日本郵政グループの諸手当に関する取り組みだ。

日本郵政グループでは各種手当が論点に

 日本郵政グループは2007年10月の民営化以降、非正規雇用社員が増大し、現在はグループ全体の従業員数約42万人のうち半数近い約19万人を占める。

 今年の春闘では「同一労働同一賃金ガイドライン案」や不合理な待遇差を禁じた労働契約法20条を巡る裁判例等を指標に本格的な交渉が行われた。

 日本郵政グループ労働組合(JP労組、組合員数約24万人)がターゲットにしたのは、正規社員に支給され、非正規に支給されない「扶養手当」「住居手当」「寒冷地手当」「年末年始勤務手当」「隔遠地手当」(日本郵便のみ)の5つ手当と「夏期休暇」「冬期休暇」「病気休暇」の3つの休暇である(ただし、扶養手当については19年春闘での継続協議となった)。

一般職5000人の「住居手当」を廃止

 同社の「住居手当」の毎月の支給額は賃貸住宅で最高2万7000円。持ち家は購入から5年間に限り6200~7200円が支給されている。労組は非正規にも支給することを要求した。これに対し、会社側は①住居手当は正社員としての優秀な人材の確保と定着を目的にしたものであり、定年までのインセンティブであること、もう1つは②転勤がある正社員に対する住居費の補助の目的で支給している――という2つの合理的理由があるとして非正規雇用社員には支給していないと主張した。

 その上で会社側は「転居転勤のない一般職に支給している現行制度は、社員間の均衡の面から再考が必要」とし、一般職の住居手当の廃止したい」と逆提案をしてきた。同社の一般職は約2万人。そのうち自宅から通勤している社員は住居手当が支給されていないので、支給対象者の5000人について廃止したいと主張した。

 組合員の一般職の中には2万7000円を受給している人もおり、生活に与える影響は大きい。労組は手当を廃止するのはおかしいと主張したが、最終的には10年間の減額による経過措置を設けて、廃止することで決着した。

正社員の「寒冷地手当」を減額

 次に正社員のみに支給される「寒冷地手当」について会社側はこう主張した。

 「正社員は全国一律の基本給を定めたうえで、地域の物価水準などの違いを反映し、社員間の均衡をはかるために調整手当や寒冷地手当を設けている。一方、非正規のベースである地域別最低賃金は各地域の生計費(光熱費を含む)も考慮したうえで決定している。よって非正規には寒冷地手当は支給していないのは合理性がある」

 ちなみに非正規社員の賃金は地域別最低賃金をベースにした時給制である。つまり、正社員の寒冷地手当は物価水準や生活事情を考慮した手当であるが、最低賃金にその分が含まれているので支給する必要ないという判断だ。

 会社側はその上で「正社員の住宅環境が昔に比べて改善しているので石炭や灯油などの燃料費的性格を持つ寒冷地手当を3年で廃止したい」と、住居手当と同じパターンで逆提案してきた。

 それに対して労組は実際の各地域の燃料費を含む家計調査を実施し、交渉の結果、手当の額を50%に減額し、引き下げ分については5年間の経過措置を設けることで妥結に至った。
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