東京商工リサーチの調査によると、2022年上半期(1~6月)に早期・希望退職者を募集した上場企業は25社となり、新型コロナ感染が拡大した2020年以降では、社数、募集人数がそれぞれ最少を記録した。

2022年上半期(1~6月)に早期・希望退職者募集を実施した上場企業は25社(募集人数4515人)で、前年同期(56社、募集人数1万2813人)と比べると減少した。
上半期ベースの早期・希望退職の実施企業は、リーマン・ショック直後の2009年に146社を記録した。その後、減少をたどり、2015年は19社と20社を下回り、2018年は3社にとどまった。
しかし、コロナ禍での外出自粛に伴う消費低迷や遠出需要の落ち込みなどで、アパレル、旅行、小売、交通インフラの業績を直撃し、2020年は41社、2021年は56社に急増した。ようやく停滞していた経済活動が動き出した2022年は、コロナ禍の経営への影響も限定的となり、コロナ禍が直撃した業種でも減少に転じた。
だが、一方で東京商工リサーチでは「新たに円安、資源高、ウクライナ情勢など、経済活動に大きな影響を及ぼす事態が生じ、内需型産業で希望退職を実施するなど予断を許さない状況が続く」と分析する。
業種別でみると、アパレル・繊維製品、電気機器、機械が各3社で最多だった。
催事の中止や外出自粛等の煽りを直に受けたアパレル・繊維製品は2020年6社(通年18社)、2021年8社(同11社)で、3年連続で業種別の最多となったが、2022年の募集ペースは緩やかに転じた。
また、外食や航空・鉄道を含む運送、小売などコロナ禍が経営を直撃した業種は、2022年に入り募集した企業はゼロだった。コロナ禍も3年目に入り、こうした業種での募集に一服感が出ている。
一方、電気機器、機械、医薬品、金属、国内外に拠点を構える製造業で募集が目立つ。今後、長引く資源高や円安加速を背景に、募集が増勢に転じる可能性も出ている。
早期・希望退職の募集が判明した25社の直近の通期損益は、約半数の12社(48.0%)が黒字企業だった。赤字企業は13社(52.0%)で、アパレルや観光、紙・パルプなどコロナ禍が直撃した業種が占めた。
募集人数1000人以上の大型募集は1社で、少人数の募集が集中した。
最も大型募集となった富士通は、50歳以上の幹部社員(一般に管理職相当)と定年後再雇用従業員ら3031人。3000人以上の募集(応募含む)は2016年の東芝(3449人)以来、6年ぶり。
次いで、パチンコ台メーカーの平和が250人で、300人以上1000人未満の募集はゼロだった。
100人未満の募集が12社(48.0%)とほぼ半数を占め、2022年は少人数の募集に集中した。
近況について東京商工リサーチでは「コロナ禍も3年目に入り、コロナ直撃業種の人員見直しは一服している。だが、一方で業績が比較的な堅調な企業による“黒字募集”が目立ち始めた」と指摘する。
今後については「資源高や円安加速、ウクライナ情勢など、コロナ禍以外の影響も深刻さを増している。事業のコストアップで、企業は一段の経営合理化を求められている。このため、業績が堅調な企業・業種でも人員削減や拠点の見直しなどに着手する可能性もあり、上場企業の人員施策はしばらく不透明な状況が続きそうだ」とした。