東京商工リサーチの調査によると、2022年1~9月に早期・希望退職者を募集した上場企業は33社となり、新型コロナ感染が拡大した2020年以降、1-9月累計では、社数、募集人数がそれぞれ最少を記録した。

2022年1~9月に早期・希望退職者の募集が判明した上場企業は33社、募集人数は5000人だった。社数は、年間80社を超えた2020年、2021年から大幅に減少し、コロナ前の2019年(通年)と同水準で推移。募集人数は、通年ではコロナ前の2019年(通年35社、1万1351人)を下回る可能性も出てきた。
現況について東京商工リサーチでは、「コロナ禍が直撃した業種での募集が一服し、人員削減の波は抑制されている」と分析する。
業種別でみると、「アパレル・繊維製品」と「機械」が各4社で最多だった。次いで、「電気機器」、「医薬品」、「情報通信」が各3社。
業種別の動向について東京商工リサーチでは「外食、小売などコロナ禍の直撃を受けた業種は9月までに募集が判明した企業はなく、コロナ前と同様に製造業を中心とした募集に再び戻った格好だ」と指摘する。
だが、今後については「加速する円安や資源高、物流価格の高騰が長引くと、製造業や卸売業からサービス業まで幅広い業種でコストアップと需要減に伴う採算悪化で、増勢に転じる可能性を残している」とした。
早期・希望退職の募集が判明した33社の直近の通期損益は、半数以上の18社(54.5%)が黒字だった。黒字企業の実施が赤字企業を上回るのは、2019年以来3年ぶり。富士通や日本ペイントホールディングスなど増益企業で将来を見据えた人員構成の是正などが散見された。
赤字企業は、販売不振が長引くアパレルのほか、中堅規模の製造業が人件費削減に取り組むなど、実施企業の“二極化”が進んでいる。
早期・希望退職を募集した上場企業の市場区分は、東証1部がコロナ前の2019年に24社(68.5%)と全体の7割弱を占め、コロナ禍の2020年も69社(74.1%)、2021年も60社(71.4%)と2年連続で7割を超え、“大企業”で目立った。
2022年は、大企業で構成されるプライム市場が18社(54.5%)と5割にとどまる一方、中堅企業で構成されるスタンダードが13社(39.3%)と4割に迫った。
実施企業のうち、募集人数が判明した24社では16社(66.6%)が100人未満の募集で、従業員数が数百人規模の中堅企業による実施が多かった。