中央最低賃金審議会の小委員会は、新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用への影響等を踏まえ、地域別最低賃金額の引上げ額の目安を示すことは困難とする方針を決定した。現行水準を維持することが適当としている。

地域別最低賃金額の改定の目安についての議論では、労働者側からは「今回のコロナ禍の中、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならない」との意見が出た。
また、「春季生活闘争では、労使の真摯な交渉を経て賃上げが行われており、この流れを最低賃金の改定により労使関係のない労働者にも波及すべき」と主張した。
一方、使用者側では「地方の中小企業・小規模事業者から最低賃金引下げを望む声が多く聞こえる中、今年度、有額の目安を示すことは、事業継続と雇用維持のため、各種給付金・助成金を受けながらかろうじて持ちこたえている多くの中小企業・小規模事業者を更なる窮地に追い込むことになる」との強い懸念が示された。
これらを受け、小委員会では「労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった」とした。
今後は、各地方最低賃金審議会でこの答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議の上、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定する。
1円以上の有額の目安を示さなかったのは、2009年度以来であり、目安が時間額に統一された2002年度以降5回目となる。
2019年の地域別最低賃金は、東京都で1013円、神奈川県で1011円、大阪府で964円、愛知県で926円などとなっている。