8割の企業が賃上げ実施 理由は“業績回復”ではなく“人材確保”のため
2016年の賃上げ実施企業は8割に達していることが東京商工リサーチ(東京・千代田、河原 光雄社長)の調査で分かった。賃上げを実施した理由は「業績が回復したため」が3割にとどまり、「従業員の定着・確保を図るため」が7割に迫る勢いとなっている。
今年度、賃上げを実施した企業は8097社中6483社(80.0%)で8割を占めた。
その実施方法は「定期昇給のみ」37.0%が最も多く、次いで「定期昇給+賞与・一時金の増額」11.2%、「ベースアップのみ」10.1%となった。
資本金1億円以上の企業の83.3%が賃上げを実施したのに対し、資本金1億円未満では79.0%にとどまった。
ベースアップを実施した企業は、資本金1億円以上は26.9%だったのに対し、資本金1億円未満は24.6%となっており、小規模資本の企業は固定費の増加に繋がりやすいベースアップをしにくい状況がうかがえる。
賃上げ幅は「月2500円未満(年3万円未満)」が約半数
賃上げの理由で最も多かったのは、「従業員の定着・確保を図るため」で67.8%だった。資本金1億円以上が55.2%だったのに対し、1億円未満は71.9%と7割を占めている。
中小企業ほど人材確保に苦慮し、他社の賃上げ動向を見ながら自社の賃上げで従業員の流出を抑えるように努めているようだ。
賃上げを実施した企業の賃上げ幅は「月2500円未満(年3万円未満)」が49.1%とほぼ半数を占めた。資本金別では1億円以上で49.9%、1億円未満で48.8%とほぼ同率だった。
一方、「月2500円以上(年3万円以上)」では、1億円以上が36.7%だったのに対し1億円未満は46.7%で、10ポイント上回りった。
賃上げを実施しなかった理由は、「業績低迷」が42.3%と最多だった。次いで「財務体質の強化を優先したため」が23.2%、「現在の従業員の雇用維持のため」が23.2%と続いた。
2017年4月に予定されていた「消費税率の引き上げに対応するため」と回答した企業も2.3%あった。
4年連続で賃上げを実施した企業が4割超
2013年以降の賃上げ回数は「毎年(4回)」の42.5%が最多。次いで、「2回」が12.8%、「実施しなかった(1回もなし)」が12.4%と続く。この4年間で何らかの賃上げを実施した企業は76.4%で約8割に上った。
資本金別で1回以上の賃上げを実施した企業をみると、1億円以上は67.5%だったのに対し、1億円未満は79.1%と小規模資本の企業ほど賃上げに積極的な結果となっている。
調査は2016年5月26日~6月9日、インターネットでアンケートを実施し、8097社から有効回答を得た。