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「脱時間給制度」のメリット、デメリット ホワイトカラーにとって対岸の火事ですむのか!?

安倍内閣が推進している「働き方改革」。その目玉のひとつが「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」で、労働時間の長短に関わらず、成果に応じて給与を支払う仕組み。この記事では、「脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)」の概要について解説する。

「脱時間給制度」を盛り込んだ労働基準法改正案は見送りに

労基法改正を検討する過程で「脱時間給制度」は、「高度プロフェッショナル制度」と名付けられた。この制度の対象となるのは、「年収1,075万円以上の高度な職業能力を持つ労働者」。

厚生労働省の資料によると、例えば下記のような労働者が該当する。

・金融商品開発者
・金融商品のディーリング担当者
・市場分析などを担当するアナリスト
・各種コンサルタント
・薬剤の研究開発者

今年に入り、政府は「脱時間給制度」を盛り込んだ労働基準法改正案を通す予定であったが、野党の反発などにより見送りとなった。とはいえ、安倍内閣の「働き方改革」断行のなかでホットなテーマであることは間違いないだろう。

「脱時間給制度」の導入には労働者の合意が必要

場合によっては、これまでとは違う働き方を強いられることから、「脱時間給制度」を導入するには「本人の同意」に加え、下記のもののうちいずれかが必要だ。

・年104日以上の休暇
・1か月の在社時間などの上限
・就業から翌日の始業までに一定時間の休息

ディーラーや研究開発者などは一度業務に没頭すると、時間を忘れて取り組む人たち。「脱時間給制度」を導入する場合は、こうした労働者の特性を鑑み、一定の休息を義務付けることとしている。

「脱時間給制度」のメリット、デメリット

「脱時間給制度」には、どのようなメリット、デメリットがあるのだろうか。労働者側と企業側に分けて概観しよう。

【メリット】
《労働者側》
1.残業時間が減る
日本企業の悪習である「付き合い残業」。たいしてやることもないのに同僚に付き合って残業することを言う。「脱時間給制度」では、成果が重要。成果に直結しない「付き合い残業」が減り、労働者のワークライフバランスが改善する。

2.働き方の自由度が高まる
出社せずとも成果を出していれば何も言われない。場合によっては、テレワークや在宅勤務など柔軟な勤務体系のなかで働くことが可能だ。

《企業側》
1.給与支払い額が減る
成果が上がらない労働者に高い給与を支払う必要がなくなる。これまでは働いた時間に応じて給与を払っていたため、「付き合い残業」など無駄な労働時間を排除することができなかった。

2.人事評価がしやすくなる
成果にフォーカスして評価すればよいため、人事評価基準を定めやすくなる。

【デメリット】
《労働者側》
1.給与が減る
今まで支払われてきた残業代がなくなることで、給与が減少するケースも。「脱時間給制度」導入時は、短時間で成果を上げた者にインセンティブを支給するなど何らかの激変緩和措置が必要かもしれない。

2.長時間労働が慢性化する
定められた成果を上げるため、際限なく働く労働者が出てくる可能性もある。産業医による健康診断やストレスチェックなど健康確保措置の導入も必要だ。

《企業側》
1.人事制度の再構築が必要
職能資格制度で人事制度を運用している場合など「脱時間給制度」にそぐわない企業では、人事制度の大幅な見直しを迫られるだろう。

2.個別の労務管理が必要
「脱時間給制度」は、個人の成果にスポットをあてたものだ。ここでの主役はあくまで個人。対象者が多い場合、労務管理が煩雑になり、人事部門の負担が増える可能性もある。

企業側は導入に前向き

みずほフィナンシャルグループや三井住友銀行、大和証券など金融専門職を多数有する企業は導入に前向き。

武田薬品工業のような研究開発者を擁する製薬企業も「脱時間給制度」の趣旨に賛同している。年収1,075万円以上の労働者は、限られている。国税庁の調査によると186万人しかおらず、このうち68万人は役員という。役員クラスであれば、成果に応じて役員報酬を支払うという考えはフィットするかもしれない。

残り約120万人の大半は、課長以上の管理職だという。「脱時間給制度」の適用対象となるのは専門職。実際のところ、適用対象となるのは20万人程度と言われている。

営業職の一部も「脱時間給制度」の対象になるかも

政府は、一定の専門知識を持つ法人向けの提案営業職も対象に加える方針。企業の資金調達を支援する銀行員や基幹システムの営業職などが検討されている。

ここまで来て「脱時間給制度」は、大半のホワイトカラーには無関係な話と思えるかもしれないが、それは誤りだ。

「成果に応じて給与を支払う」という考え方の根底にあるのは、「労働生産性の向上」や「ワークライフバランスの充実」だ。いずれのテーマも今後の人事施策において議論が避けられないものとなるだろう。

「脱時間給制度」の導入は対岸の火事では決してない。動向を注視しながら、自分の働き方についてもしっかりと考えるべきだ。

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