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同一労働同一賃金が実現しない本当の理由とは?

安倍内閣が目下進めている「働き方改革」。先月28日には、「働き方改革」を議論する有識者会議の初会合が開かれ、安倍首相は「同一労働同一賃金」などの具体策を年度内にまとめる考えを示した。「同一労働同一賃金」に賛成の声が上がる一方、実現する可能性は低いという声も聞かれる。筆者は、「同一労働同一賃金は実現しない」と考えている。その理由を解説しよう。

「同一労働同一賃金」とは何か?

理由を解説する前に「同一労働同一賃金」とはどういうものか、確認しておこう。「同一労働同一賃金」とは、「同じ仕事であれば、同じ賃金を支払う」というシンプルなものだ。

この「同一労働同一賃金」が厳密に適用されているのがコンビニや飲食店のアルバイトだ。年齢やスキルを問わず、時給が支払われていることに気づくだろう。

彼らは「職務給」によって賃金が決められている。「職務給」とは、「仕事の価値」を重視する賃金の支払い方法。コンビニの仕事は、例えば950円と決められているわけだ(もちろん地域によって多少の差があるが)。

正規従業員と非正規従業員の差をどう考える?

「同一労働同一賃金」が取りざたされている大きな理由は、正規従業員と非正規従業員の待遇格差。国の調査によると、非正規従業員の賃金は、正規従業員の6割程度とも言われている。

非正規従業員から見れば、「同じ仕事をしているのに、賃金があまりに違う」と憤慨する気持ちも理解できなくはない。

しかし、話はそう単純ではない。なぜなら、正規従業員は「職能給」という賃金制度のもと別途評価されているからだ。

「職能給」が非正規従業員との賃金格差の原因

「職能給」とは、「職務遂行能力」を重視する賃金の支払い方法。「職能給」は、大企業を中心に日本企業の多くが採用している賃金制度である。

「職務遂行能力」は、入社後、仕事を行うことで向上するとされている。また、一般的には、勤続年数が増えれば増えるほど「職務遂行能力」は高まるとされている。

先ほど述べた通り、アルバイトをはじめとする非正規従業員は「職務給」によって、一方の正規従業員は「職能給」によって賃金が支払われている。

つまり、賃金の支払い方法がそもそも異なるわけだ。「職能給」のもと賃金が支払われている正規従業員は、当然、勤続年数が増えれば増えるほど「職務遂行能力」が高まり、賃金はアップする。

しかし、非正規従業員は「職務給」だから、賃金がアップする余地はないのだ。これが、正規従業員と非正規従業員の賃金格差の最も大きな原因だ。

全国転勤、サービス残業。疲弊する正規従業員

非正規従業員の賃金が低い理由はほかにもある。それは、正規従業員と非正規従業員の立場の違いから来ているものだ。

正規従業員は、「雇用期間の定めのない」従業員のこと。一方、アルバイトや契約社員などは、一般的に、何らかの雇用期間の定めがあるのが普通だ。

正規従業員は、基本的に一度雇用されるとよっぽどのことがない限り解雇されることはない。解雇される可能性があるのは、企業の業績が大幅に落ち込み、立て直すためには解雇せざるを得ないと裁判所が認めた場合に限られる。日本は「解雇しにくい国」とよく言われるが、この背景には裁判所の存在がある。

正規従業員は強力な身分保障を得る代わり、滅私奉公を強制される。サービス残業が常態化してしまうのも、正規従業員だからこそ。

自分の意に沿わない転勤も正規従業員に課せられた重荷。正規従業員は基本的に社の命令を拒否できない立場である。

一方、非正規従業員はどうだろうか。一般的に、上述したような正規従業員が抱えている義務は免除されていることだろう。つまり、正規従業員から見れば、サービス残業や転勤などの重荷を抱えていない非正規従業員の賃金は低くて当たり前という感覚が当然なのだ。

「同一労働同一賃金」を実現するためには賃金制度改革が必要

結局のところ、これまで説明してきたように、
正規従業員と非正規従業員の賃金制度が異なるため、「同一労働同一賃金」が実現できないのである。

だから、「同一労働同一賃金」の最大の壁となっている賃金制度を改革することが先決だ。とはいえ、大企業を中心に採用されている「職能給」は、長期雇用を前提とした日本型雇用と相性抜群。企業側にとっても、部署異動などで「職能給」はメリットが多く、そう簡単に変えてくるとは思えない。

このように見てくると、「同一労働同一賃金」は、単なる賃金の問題だけに留まらず、私たちの働き方にまで影響していると気づくだろう。

「同一労働同一賃金」の実現は、「職能給」から「職務給」への移行を意味する。これまで企業内で培った「職務遂行能力」が評価されないというケースもあり得るかもしれない。

安倍内閣は、パートタイム労働法や労働契約法ほか非正規従業員に絡む法律を改正することで、「同一労働同一賃金」を目指す方針。

法律改正により、どのような変化があるのか。賃金制度とともに注視することも必要でしょう。

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