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正しく使いたい成果主義と能力主義の違い、賃金制度の基本である「職務給」の考え方を理解する

成果主義が浸透するなか、管理職層を中心に導入が進む「職務給」。人事制度においては「職能給」と比較衡量され使用される言葉であるが、その意味をしっかりと把握している人は思った以上に少ない。この記事では、成果主義的賃金の「職務給」の概要を職能主義的賃金の「職能給」とを比較して解説する。

「職務給」とは何か?

「職務給」とは、仕事の“価値”に重点を置いたもの。ビル清掃員を例にとって説明しよう。ビル清掃員の多くは50代以上の年配者でパートまたはアルバイト。時給は1000円程度が普通だろう。

パートまたはアルバイトである限り、20代の若者でも同給与だろう。つまり、年齢により給与が変動することはない。年配者は、これまで相応の職業経験を得ているが、それが給与に反映されることは一切ない。

「ビル清掃」という仕事の“価値”が同じだからだ。もちろん、仕事の出来、不出来により給与に差をつけることもできるが企業にとってそれはかなりの労力になる。

「職能給」の考え方を今一度整理

「職能給」とは、“職務遂行能力”を重視するもの。その人固有の能力にフォーカスし、給与を決定する。

大半の日本企業は「職能給」を採用している。「職能給」は「ストック型雇用制度」とも評され、勤続年数が長くなればなるほど“職務遂行能力”が向上していると考えている。

よく考えてみると、毎年「職務遂行能力が上がっている」というのは幻想に過ぎない。ルート営業マンを例にとって説明しよう。入社一年目は、さまざまなことを吸収し、学習効果も働き、職務遂行能力は当然向上するだろう。

しかし、二年目、三年目はどうだろうか。ルート営業の仕事は、どちらかといえば、既存顧客の御用聞きに近い。だから、二年目、三年目もほぼ同じ仕事をすることになるだろう。よっぽど意識しない限り、飛躍的に職務遂行能力を向上させることはできないだろう。

それでも、日本企業の多くが「職能給」を導入しているのは、人事異動で役立つからだ。例えば部長職まで昇進した人がいたとしよう。この人を異動させる場合、ほかの部署の部長にさせるか、部長職から降格させ課長にさせるか、どちらかを選択することになる。

降格させる理由が説明できない「職能給」

先の例の場合、ほとんどのケースで前者を選択することになる。というのも、課長に降格させる合理的な理由が説明できないからだ。

一般的に“職務遂行能力”は、低下しないものだと考えられている。そのため、“職務遂行能力”を重視する「職能給」では、いったん部長に昇格した人を会社の都合で降格させることは難しい。

課長としてほかの部署に配置することは、実際には可能ではあるが、部長職のまま課長になるというちぐはぐな状況が生まれる。そして、課長の役割しか果たさないこの部長には、部長職の給与が支払われるわけだ。

「職能給」のデメリットを解消する「職務給」

上記のような状況になると、課長の仕事しかしていない人に部長の給与を支払うことになり、総人件費が増大することになる。

かつてのように右肩上がりで成長していた時代であれば、「職能給」により総人件費が増大しても何ら問題はなかったであろう。しかし、低成長時代においては、「職能給」の硬直的な部分が目立ってきたのである。

こうしたなか、注目されるようになったのが「職務給」である。「職務給」は前述の通り、仕事の“価値”に重点を置くものであり、年齢や職務遂行能力に依存するものではない。そのため、同じ仕事であれば同じ給与を支払うと説明でき、総人件費をコントロールしやすくなる。

管理職層ほど「職務給」の比率が高くなる

日本生産性本部の調査によると、非管理職層では職能給が81.1%、職務給は58.0%となっている。一方、管理職層は職務給76.3%、職能給69.2%と逆転現象が起きている。

部下やプロジェクトなどを「管理する」仕事に重点を置いて、企業が賃金制度を構築している姿が垣間見える。「職務給」は、成果主義と相性がよい。それだけに、管理職層への導入が多くなっている。

「職務給」がより一層広がる可能性も

「職務給」は、年齢や職務遂行能力に依存しないだけに明快で導入しやすいものだ。中小企業など経営が不安定なケースほど「職務給」を採用しているケースが多い。一方、経営が比較的安定し、従業員に対して長期勤務のメリットを出しやすい「職能給」は、大企業ほど採用比率が高い。

最近、よく聞くようになった「同一労働同一賃金」。「職務給」はこの概念を色濃く反映したものだ。非正規従業員と正規従業員の格差がよく議論されているが、実際は解決が難しい。というのも、非正規従業員には明確な「職務給」が適用され、正規従業員には「職能給」が適用されているからだ。

現在、安倍内閣では「働き方改革」を標榜し、労働市場に対し、新たな施策を講じるとしているが、今後どうなるのか。「職能給」と「職務給」というキーワードに注視しながら、分析すると思わぬ発見があるかもしれない。

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