スポットボーナスはただの誇大広告?それとも本物の代替となるか?【ドイツの報酬事情・キーンバウム】

スポットボーナスは、従業員の内発的なモチベーションを高めるために役立つ。専門誌「COMP & BEN」1/2022年2月号では、キーンバウムの報酬スペシャリストが、スポットボーナスをより効果的にするためのルールをまとめている。

スポットボーナスは、多くの企業で金銭的報酬のポートフォリオの一要素として普及してきている。実際には、小さな表彰から高額な一時金まで、スポットボーナスの形は無数にある。スポットボーナスの効果を持続的に保つためには、報酬ポートフォリオの中での明確な位置づけだけでなく、分かりやすく「見える化」した配分方法も必要となる。すなわち、他の報酬要素のコントロール効果を打ち消すことなく、うまくバランスをとる必要がある、ということだ。業績と報酬とは密な相互関係になければならない。仕事の世界においてこの考えは今日でも広く受け入れられている。しかし、モチベーション、パフォーマンス、マネーという要素が無限ループでつながっていると考えると、この原理がどこまで通用するのか、疑問が生じる。

業績に対する金銭的インセンティブ、特に業績目標に連動した変動報酬によって個人のモチベーション向上につなげようとしても、限界がある。このことは近年、多くの企業が認識している。個々のボーナスというシステムは、エゴイズムや官僚主義に阻まれ、不評の一途をたどっている。これは現在、雇用者の分配原則に反映され、コントロール変数の集計へのシフトが起こっている。これは変動報酬の構成要素を集団化することで、個人の自己最適化やサイロ思考を抑制し、より強力な協力体制と起業家的思考を促進することを目的としたものだ。一方、パフォーマンスへの直接的なフィードバックでは、自発的かつ機会に応じたフィードバック形式が、モチベーションやコントロールの面で最も効果的であると考えられている。このような背景から、スポットボーナスの存在は報酬における新たな「期待の星」的存在として分類することができる。この形態は、一方では年度中途、自発的、物質的、という要望に応えた報酬システムであり、また他方では、トップパフォーマーをより平等に、集団指向のシステムにおいて正当に評価できるものである。しかし、本当にスポットボーナスは、分配原則が集団制御変数に移行する過程で、制御損失を補うことができるのだろうか。

スポットボーナスの仕組みは?

シンプル、タイムリー、直接的、即時的。このような評価が(機会ごとの)スポットボーナスの役割である。また、企業の業績管理ポートフォリオにおいて、固定的なインセンティブ要素として利用されることも多くなっている。個人目標に対する金銭的ボーナスの損失を補う代替インセンティブとしてだけでなく、特別なタスクやプロジェクトの実行に対するハイパフォーマーへの報酬としても重要性を増している。スポットボーナスの魅力は、基本的にサプライズ効果があることと、業績達成後すぐに支給されることにある。予期せぬ報酬は、従業員やグループ内に躍動感や感動を生み出すことができる。またこれは、当面は報酬の金額に関係なく、仲間からのちょっとした評価が、莫大な金銭報酬と同様の効果をもたらすということも意味する。

プロセスの「見える化」が必要

ただし、ここで気を付けなければならないことは、金銭的報酬は業績に見合った金額としなければならない点である。報酬を受ける側の給与と関連付けて賞与の金額が定められる場合は、特に重要となる。スポットボーナスの魅力は、その自発性と即時性にあるとしても、その授与は透明で規則的なプロセスに従うべきである。そうでなければ単なるごまかしのための措置、または主観に基づくアンフェアな措置、として信用性を失う危険性がある。また、スポットボーナスの大きなデメリットも看過できない。それは、後付けの業績評価となるため、業績管理には不適だという点である。つまり、サプライズを目的とするため、目標に向かって行動するように社員を導く影響力を持たないのである。したがって、行動管理や業績管理はこれとは別途行われるように手配し確認することが必要となる。

スポットボーナスのバリエーションは幅広い

スポットボーナスに幅広いバリエーションがあることは、キーンバウムのパフォーマンス・マネジメント・サーベイの結果にも表れている。基本的に、雇用者は次の範囲でスポットボーナスを設定する。表彰プロセス、形式、額、組織内での表彰の頻度、対象グループ(部署または個人)などである。多くの場合、スポットボーナスも、他の報酬と同様、担当上司によって与えられる。特に自主的な働き方が進んでいる企業環境の組織では、上司よりもチーム内のスタッフ同士の方が業績をよく観察できることが多い。このような企業においては、ピアボーナスの活用も適している。少なくとも、同僚に特別手当が支給されるよう、提案することは可能とすべきだ。スイスのある保険会社を例に挙げると、当該企業ではアジャイル組織化が進んでおり、5,000スイスフランのスポットボーナスを、組織内の他の部門からの承認なしにチームメンバーに割り当てることができるようになっている。このような取り決めは乱用される恐れがあるのではないか、と、多くの企業は懸念するが、今のところ確認されていない。それどころか、社員は自己組織化という新しい義務に伴って、与えられた権利に責任を持って対処していることが示されている。

スポットボーナスはどのように設定するか

スポットボーナスは、必ずしも金銭でなくとも、年度半ばの報酬として十分作用する。特に「評価」に重点を置くのであれば、金銭以外のスポットボーナス、例えば週末旅行のアレンジと費用負担、レジャー活動のためのバウチャー、追加の休日、セミナー参加などは、同等の金銭的金額よりも大きな影響を与えるため、金銭報酬のポートフォリオに追加することは有効である。このため、スポットボーナスの金銭的な幅が問題となる。大きな商談や困難なプロジェクトの達成など、理解しやすく、場合によっては測定可能な重要な成果に対して金銭的な報酬が与えられる場合、その金銭的報酬の額がもたらすインセンティブ効果に焦点が当てられる。特に個人のボーナスからシフトした場合の報酬として、少なくとも半月から1ヶ月分の給与を支給することが望ましい。また、スポットボーナスの支給頻度も企業ごとに異なる。一部の組織では、選ばれたトップパフォーマーにのみ恩恵がある一方、広く分配される組織もある。これが次の疑問につながる。つまり、報酬は個人のみを対象とすべきか、それともチーム全体が報われるべきなのだろうか? という点である。

個人とチーム、どちらにインセンティブを与えるか?

ある石油会社では、個人だけでなく、チームやプロジェクトの特別な成果に対する副賞として、スポットボーナスが用意されている。この制度は、厳しすぎると思われている年間目標賞与や業績評価制度を補完する役割を担っている。スポットボーナスは、特別大きな成功や、他のスタッフの助けとなったことを直接評価することを目的としており、全従業員を対象として良いであろう。これは、経営ルーチンに組み込まれた定期的なプロセスを通じて授与される。額は上司が提案し、経営委員会が承認するもので、500ユーロから月給総額の半分までと幅がある。一般的なガイドラインとして、スポットボーナスは、労働協約の対象となる従業員の15〜20%、労働協約の対象とならない従業員の5%を対象とする。報酬制度(※1)の他の要素と同様に、スポットボーナスを設定する際は、十分な効果を発揮できるように、その企業の独自性や企業文化を考慮して設計することが必要である。

結論

多くの企業で導入されているスポットボーナスは、既存の報酬要素に加えられると同時に、個人的なボーナスが集団的な要素に置き換えられつつあることに対する緩和策としても有効である。事務的な労力が少なく、業績に応じた報酬が迅速に得られることから、この制度の人気は高まっている。しかし、スポットボーナスは、コントロール効果がないため、本来目標設定と連動することが多かった個人賞与の完全な代替とはならない。むしろ、(金銭の形を取らない場合でも、)他のコントロール要素を補う感謝報酬、という補完的役割を担う手段である。

本記事はComp&Ben 1号/2022年2月号に掲載された。最新号はこちら。
https://www.totalrewards.de/comp-ben/magazin/

【注釈】
※1 https://www.kienbaum.com/de/leistungen/compensation-performance-management/

【執筆】
Moritz Kinkel (Business Analyst)
Selina Gampe (Consultant)
Hans-Carl von Hülsen (Senior Manager)
Kienbaum Consultants International | Compensation & Performance Management

 

オリジナル記事(英語):
https://www.kienbaum.com/en/blog/spot-bonus-fad-or-serious-alternative/

本記事はニュースレター2022年No.1に掲載されたものです。ニュースレターは下記よりご覧いただけます。
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2022/03/Newsletter_No_1_2022_JP.pdf

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