【ドイツのダイバーシティ事情】トップシェアリングで進歩を確実に

管理職のパートタイム化は可能か?また、どのような状況であれば、トップシェアリングは企業や経営者にとって理想的な選択肢となるのだろうか。このモデルは、企業にとっては、リスクよりもチャンスの方がはるかに高い。さらに、より多くの優秀な人材のつなぎ止めにもつながる。 

ステファニー・ユンクハンスが体調不良のためキーンバウムのイベント「Brave New Work」への欠席を決めた際、5分以内に「代役」が用意された。同僚のステファニー・フェリンガーが参加を即答し、100%その役割を果たすことができた。「引き継ぎ」なし、打ち合わせなし。というのも、この両氏は同じ知識を共有しているからだ。キーンバウムは、役職の変更さえする必要がなかった。どちらも「Head of SAP S/4HANA Organizational Development」であるからだ。

もちろん非常に小さいものではあるが、これは共同管理者「Co-Leadership」の利点である。また、社内会議やクライアントとの打ち合わせでも、一方のステファニーがすぐに他方のステファニーの代わりを務めることができるのだ。ヤニナ・シェーニッツは、同イベントで自分と同僚のミリアム・コッテについて、「私たちは何度、お互いの代理を務めたことか」と語っている。2人はドイツ鉄道「Deutsche Bahn」の「Head of Digital Transformationとして、それぞれ60%のトップシェアリングの役割を担っている。そしてどちらも、トップシェアリングという解決法は効率性が高いと主張する。

この2つの例は、以下に詳述するように、正当な理由で広がりつつあるトレンドの表れである。と言うのも、フルタイム勤務でない管理職の割合は20%未満、重要な管理職では10%を下回っており、この数字の低さは、一時的であってもパートタイム勤務を希望、あるいはそうせざるを得ない状況にある管理職の現状を反映していないのである。このことは特に小さな子供を持つ親、そして女性に当てはまる。女性は依然としてケアワークの主要な担い手であり、男性よりもパートタイムで働く比率が大きいためである。

パートタイムでのリーダーシップは不可能だと考える雇用者は多い。しかし実際はその逆であることは、トップシェアリングの成功例が増えている事実が証明している。トップシェアリングにはさまざまな形態があるが、大半の企業では労働時間の比率から、いわゆる「共同リーダーシップ」と区別される。トップシェアリングでは、例えば2人が60%ずつリーダーの責務を分担することになる。一方、「デュアルリーダーシップ」とも呼ばれる「共同リーダーシップ」は、それぞれがフルタイム勤務であっても実行可能だ。これは、SAP社のステファニー・ユングハンスとステファニー・フェリンガーが使っているモデルである。リーダーの座を分け合い、それぞれ労働時間の約半分を費やす。残りの半分では具体的なトランスフォーメーションプロジェクトに取り組むのである。

トップシェアリングは、家族と過ごす時間を必要とする管理職のみに新たな機会を与えるわけではない。様々なモデルが考えられ、特に大企業での導入が増えている。副業で活躍するため、あるいは起業のアイデアを追求するために、正社員8割、フリーランス2割を希望する人もいれば、没頭できる趣味のために利用する人もいる。「共同リーダーシップでは、仕事とプライベートを見直すことができる。これには相互に反映させることも含まれる。つまり、自分にとって本当に大切なものは何なのか、完璧な日常はどのようなものであるか、と問い直すことだ。」ステファニー・フェリンガーはこう語る。

 

パートナーは何をもたらすのか?

二人体制ではそれぞれの息が合うことはもちろん、スキルが異質であることも重要なポイントである。Gasagグループの人事部長であるマイケ・ビルケンマイヤーは、自身の経験を次のようにまとめる。「役職分担を行う場合、それぞれが長所を補完し合い、付加価値を生み出すことが重要だ。私の成功の秘訣は、『強みは違うが、同じ価値観を持つ2人』である。これにより、ひとつのポジションにおいて、1人で遂行するよりもはるかに大きな影響力と力量を持つことができる。」

ドイツ鉄道のヤニナ・シェーニッツもこの線に沿った見解を示し、「十分に同等でありながら、また十分異なっていることが必要だ。ここで言う同等とは、信頼、信用、ロイヤリティと言った点で同じ価値観を共有できることである。私たちのケースでは遠慮なく相互に頼り合っている。」と語る。例えばスキルや経験面で差があっても、これらは相互に補完し合えるものであるべきだ。「これは理想的なタスク分担の方法である。トップシェアでは、一方が他方と共に成長するのだ。」ヤニナ・シェーニッツはこのように述べる。

さて、保守的な企業では、トップシェアはまだあまり定着していない。また、トップシェアリングのポジションであることを明記しているものはごくわずかである。基本的には個人のイニシアチブが必要だ。ヤニナ・シェーニッツとその同僚は、オペレーティング・モデルで非常に分析的にこの問題に取り組んだ。上司やチームメンバーからの質問を想定してFAQを作り、それに回答を示したのである。「これにより、企業における価値を強調することができた。」多角的視点、柔軟性、スピード、欠勤リスクの軽減、成果の向上を始めとする多くのメリットを、信頼できる方法で解決したのである。「ジョブシェアリングは、ビジネス的にも合理的だ」とヤニナ・シェーニッツは言う。

 

理想的なワークフローをチームとして定義するには?

日常業務の共同作業では、どのチームも理想的なワークフローを見つける必要がある。新しい技術やポストコロナ時代のニューノーマルがこれに役立っている。例えば、ヤニナ・シェーニッツとトップシェアリングを行っているミリアム・コッテは、仮想人物「ミーヤ(MiJa)」(MiriamJaninaの略)を生み出した。ミーヤはそれぞれ一つのメールアドレスとスケジューラーを共有しているため、どちらも常に同じ情報を得ることが可能である。さらに、メモや資料を共有する高度なシステムも構築された。

しかし、どんな些細な決定でも二人で行っているというわけではない。多くの決定は二人のうちのいずれかが行い、その後、該当する部署に通知する。重要な事項については、週1回の会議で話し合う。会議の構成は明確に定義され、また準備もしっかりと行う。ステファニー・フェリンガーのケースでも、トップシェアリングの同僚と文書を共有している。さらに、朝は15分のミーティング、夜はボイスメッセージを活用する。これにより、チームや上司の安心と信用が生み出される、と言う。部下との面談も共同で準備するが、これには決定的なメリットがある。部署内で不利を感じているスタッフがいるとしよう。それについて、上司が主観的に、気分で判断している(自分の「鼻の形が気に入らない」からに違いない)からだと非難することはできなくなる。上司が二人いる方が信用度もより高くなるのである。

人事担当者や研究者によると、トップシェアリングが雇用者にもたらすメリットは他にもあるようだ。

例えば、時間的な制約や、一人では対応できない多様性が必要であるなど、職務によっては、その性質から単純に100%のポジション向きでないものも存在する。二人がリーダーシップを共有すれば、二つのネットワークをが存在することになり、社内だけでなく社外に対しても、ステークホルダー・マネジメントがはるかに効果的になる。ここでよく起こる疑問は、「誰がどのステークホルダーに対してより効果的なのか?」というものである。

 

ジョブシェアリングのデメリットとは?

共同経営、トップシェアリング反対派の典型的な意見は、「いずれにしても対立は避けられない」というものである。「もちろん、対立はある。共同リーダーシップは、戦略的な目標達成に向けた意思決定に至るために、異なる視点から問題を明らかにすることを目的としているのだ。」SAPのマネージャーであるステファニー・フェリンガーは、このように答える。つまり、対立に対処できる能力がなくてはならないのだ。そして、一定の社会的能力、好奇心、共に成長したいという意思が必要だと語る。

反対派の意見の2点目は、ポジションの労働時間の分担に関連する。一方の意見は、60%の労働時間で働く2名体制であれば、100%の労働時間をこなす1名よりも、より大きな成果が表れて当たり前のはずだ、と言うものである。他方の意見は、休暇や病欠があっても常にどちらかが稼働状態であることや、片方が退職した際、ポジション不在の状態を防げることである。トップシェアリングという選択肢があるからこそ、優秀な人材の流出を防ぎ、確保することができる、という事実とは別に、このオプションはコスト高となる。60%のパートタイムで働く2名の方が、100%勤務の1人よりも多くの管理費を必要とするためである。

更なる反論は、原則的にはパートタイム全般に当てはまるが、特に管理職に対してよく使われるのが労働時間である。管理職の職務を通常の例えば40時間+10時間の残業と異なる仕組みで行う、という考え方は、多くの人が受け入れがたいと感じている。Gasagグループの人事部長であるマイケ・ビルケンマイヤーは、特にポストコロナ時代の現在において、これは時代遅れの考えだとする。

『神は仕事を作った。それはきっちり40時間で行うものだ』と言うような神は存在しない。これは人工的な量であり、私は常に『どのようにこれをカットするか』ということを考えているのだ。

 

なぜトップシェアリングが女性だけの問題でないのか?

トップシェアリングは男性にとってもメリットが多く、例えばジュニア・シニアモデルなどにおいても企業に大きな効果をもたらす。後継者への引継ぎを最適に行うことはこれに当たる。しかし多くは、親が一時的に家庭と仕事を両立させるための理想的な手段というケースであろう。「家の仕事とキャリアを両立させるために、トップシェアリングの実現を目指す人が多い。そのため、女性の問題のように思われがちである。しかし、トップシェアリングを望む若い父親もますます増えている。」人事部長であるマイケ・ビルケンマイヤーはこのように語る。

オールブライト財団の共同CEOであるヴィープケ・アンカーセンは、この手段の価値を次のように強調する。「目標は、より多くのデュアルキャリア・モデルを可能にすることでなければならない。そして企業も、例えば、男性社員に家事へのより一層の参加や育児休暇の取得、パートタイム勤務を奨励することなどで貢献することが可能だ。しかし、ドイツではそれがあまりに少ない。」 ある男性が50%勤務を実践すれば、周りの男性にも同じように働くようになるだろう。一方、女性にはもっと勇気を出してほしいという。「女性は、もっと責任あるポストに就きたいかと問われたら、まずはイエスと答えるべきだ。考えるのはその後でも良い。」。

 

【執筆】

Thorsten Giersch | Chefredakteur | Kienbaum Conssultants International

オリジナル記事(ドイツ語):
https://www.kienbaum.com/de/blog/so-sorgt-top-sharing-fuer-fortschritt/

 

本記事はニュースレター2022年No.2に掲載されたものです。ニュースレターは下記よりご覧いただけます。
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2022/06/Newsletter_No_2_2022_JP.pdf

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