【キーンバウム】ハイブリッドワーク、ニューワーク時代を成功に導くデジタルコンピテンス

デジタルコンピテンスは、デジタルの世界で働く従業員や労働者にとって最も重要なスキルの一つである。Dr. Walter JochmannとLukas Fastenrothによる本記事では、デジタルコンピテンスの測定方法と社内での開発の仕方について説明する。
KienbaumとStepStoneによる調査(2020年)では、90%の従業員が、デジタルコンピテンスが仕事上の成功に決定的な影響を与えると回答している。しかし、デジタルコンピタンスを成功要因と捉えているのは、従業員だけではない。企業にとっても必要不可欠なものとなっているようだ。キーンバウムは、Ibe (Institut für Beschäftigung und Employerbility – 雇用・就業力研究所)とともに、2019年から2020年にかけて、有名企業の高位人事責任者やCEOの計20名に、成功に不可欠な将来のコンピテンスについてインタビューを行った。この中で、3人に1人以上がデジタルコンピテンス、4人に1人がデータコンピテンスとデジタルリテラシーが企業の成功に不可欠であると回答している。

デジタルコンピテンスとは何か?
デジタルコンピテンスは、デジタル社会の仕事において最も重要なコンピテンスの一つとして認識されているようであるが、その理解は曖昧なことが多いように思われる。Kienbaum Institute @ ISMは、数年前からこのコンセプトに取り組んでおり、その結果、非常に興味深い洞察を得ることができた。デジタルコンピテンスは、知識、スキル、マインドセットの3点で構成されており、これらの各分野は、デジタル社会の仕事において、仕事の成功、ひいては企業の成功に不可欠なさまざまな関連スキルや考え方を包含している、というものである。
ここで強調すべきことは、デジタルコミュニケーションやデジタルアプリケーションのスキルといった純粋な技術的スキルだけでなく、イノベーション力、顧客中心主義、コラボレーションなど、技術に関係ないスキルも重要である、と言う点だ。特にテクノロジー関連のスキルは、新しい重要技術の理解と応用につながるため、「新しい」スキルであることが多い。一方、技術に関連しないスキルは、デジタル化や技術の進歩がなくても、常に関連性があると捉えられがちである。
例えば、イノベーション力は、企業にとって常に必要な重要な能力であると見なされてきており、これはまず原則であろう。したがって、キーンバウム研究所@ISMの観点では、デジタルコンピテンスは、デジタル化以前には誰も持っていなかった根本的に新しいコンピテンスとして理解されるべきものではない。むしろ技術の進歩に適応する「新」と「旧」のコンピテンスの構成であり、したがって個人と組織の競争力にとって不可欠なものとして理解されるべきなのである。
デジタルコンピテンスは決して静的なものではなく、デジタル化やデジタル技術に対応するために常に新しい経験を必要とし、ゆえにデジタル技術そのものと同じくらいの速度で発展する。
特にマインドセットは、考え方の基本として、デジタル技術を扱う経験を積み、それを維持する上で重要な役割を果たすものである。デジタル技術に対応する準備ができていない、デジタル技術に興味を示さない、デジタルトランスフォーメーションの枠組みの中で改革のプロセスに前向きでない人は、デジタルコンピテンスを構築することはまずできないと言って良い。これは従業員にとっては、自身の労働市場における競争力低下を意味する。また、企業にとっても、デジタルコンピテンスの低い社員は競争力の低下を意味するものである。したがって、デジタルに強い社員の人材争奪戦が本格化するのは当然といえるだろう。

デジタルコンピテンスが今こそ重要である理由とは?
企業におけるデジタルコンピタンスの構築と維持は、パンデミックの影響により、急激に重要性を増した。企業は、ビジネスの継続のために、従業員のリモートワークの方法を確保する必要があった。つまり、今回のパンデミックは、企業のデジタルトランスフォーメーションの実行の遅れを示し、それを大きく加速させたのである。
特にナレッジワークの分野では、バーチャルワークやリモートワークへの転換を余儀なくされた。しかし、在宅勤務下で部署ごとの決定、共同作業、コミュニケーションには、強力なデジタルスキルを必要とする。社員はTeamsやZoomなどのデジタル技術を駆使してコミュニケーションを図らなければならない。更に、このコミュニケーションは単なるビデオチャットにとどまらず、ワークショップやプレゼンテーション、イベントなどが仮想空間で行われるようになった。MiroやMuralなどの適切なツールを使えば、クリエイティブでコラボレーティブなプロセスをバーチャルに行うことが可能である。
デジタルコンピテンスの必要性にパンデミックが加わった状況下で、とりわけ急遽バーチャルワークに切り替えなければならなくなった企業は、困難な状況に直面した。新しいバーチャルな職場環境に対応できるように、専門職や管理職に研修を行う時間はほとんどなかった。加えて、社員教育や育成プログラムもデジタルで行わなければならず、困難の一つとなった。しかし、とりわけ残念なことは、研修や能力開発のニーズが高いにもかかわらず、その機会は、デジタル化が進んだとはいえ、全体としては少なくなってしまっていることだ(cf. Kienbaum & StepStone 2021)。

デジタルコンピテンスを身につけるには?
キーンバウムとキーンバウム研究所@ISMは、「パンデミックにおけるバーチャルワーク」というテーマでさまざまな企業にインタビューした結果、将来の働き方はハイブリッドであることを突き止めた。大半の企業が、オフィスフロアを縮小し、週2〜3日のモバイルワークを意図している。残されたオフィススペースは、主に共同作業やクリエイティブな仕事を行うことを目的としている。社会的つながりを可能にし、「文化的イメージの発信源」として機能すべきものとなるだろう。
したがって、以前の仕事の仕方に逆戻りすることはほぼあり得ない。つまり、デジタルスキルの育成と維持は将来の競争力に関わる大変重要なものであるということを、この展開は企業に示しているのである。
デジタルコンピテンスは、デジタル技術を扱った経験により向上するもの、つまり開発可能なものであり、企業と従業員の双方が責任を持つものだ。技術、開発機会、研修の提供は企業が責任を持って行う必要がある。これにより、社員がデジタル技術の経験を積み、広げていくことができる環境が整備される。また、短期的に実行可能な知識やスキルを伝授する単発の研修だけでなく、マインドセットの面で個人の能力開発をするための長期的な学習機会も含まれるべきである。
デジタルコンピテンスを戦略的に育成するにはどうしたら良いだろうか。これまで様々なクライアントとプロジェクトを遂行した経験から、3つの連続したステップをお薦めしたい。
1. デジタルコンピテンスの重要性および用語の理解
まずきわめて重要なことは、デジタルコンピテンスが企業の将来の競争力にいかに重要であるかをトップマネジメントに明確にすることである。これには、用語の明確化も含まれる。
2. 現状分析
第2ステップでは、現状分析を行い、社内のデジタルコンピタンスがどの程度であるかを把握する必要がある。デジタル・レディネス・チェックのようなツールを使えば、標準化されたオンラインアンケートを通じてデジタルコンピテンスを評価することが可能だ。この分析により、部門間や外部のベンチマークとの比較を行うことができる。
3. 学習・開発機会の導出
現状分析に基づき、特定の部署(部門、ビジネスユニット、チームなど)における特定のコンピテンシーに関するデルタが特定される。これにより、具体的な開発ニーズの優先付けや、学習・開発の道筋を導き出すことができる。

デジタル・レディネス・チェック
デジタル・レディネス・チェックは、仕事におけるデジタルコンピテンスを評価するための、科学的根拠に基づいたオンラインアンケートだ。このアンケートはデジタルコンピテンスにおけるキーンバウムモデルに基づいたもので、4つの主要なディメンション(People Mindset, People Skillset, Business Mindset, Business Skillset)から形成されている。これらの各スキルセット、マインドセットは、さらにそれぞれ4つのファセットに分かれており、スペシャリスト、管理職の両方の階層に同様に関連するものとなっている。
このアンケートには、上記のほかに、特に管理職向けに更なる主要なディメンションであるデジタルリーダーシップが含まれている。これにもまた、4つのファセット(4つの主要ディメンションの各領域に一つずつ)が置かれている。さらに、具体的なデジタル技術を選択し、その技術を扱う際の知識、実務経験、使用頻度などを評価できるオプションもある。選択肢は顧客ごとに設定できる。
デジタル・レディネス・チェックは、心理測定学的な品質基準に従っており、パンデミック時に実施された調査から現在のベンチマークを利用することが可能だ。アンケートに回答後、参加者全員に結果報告書が自動送信される。このベンチマークデータをもとに、参加者はノービス、エキスパート、パイオニア3つのコンピテンスレベルのいずれかに分類される。さらに、結果報告書では、全ディメンションについてベンチマークとの比較結果が表示され、第一歩として推奨する開発事項が提示される。全社的な集計結果レポートは、調査後に顧客の協力を得てKienbaum Institute @ ISMが作成する。アンケートの詳細についてはこちらを参照されたい(ドイツ語)。

デジタル・レディネス・チェックは、現状とそれに伴う開発ニーズを特定するための全社的なアプリケーションに加え、デジタルコンピテンスに関する既存のトレーニングや資格認定制度におけるフィードバック手段として利用することも可能だ。これらのプロジェクトでは、スペシャリストや管理職が研修グループとしてデジタル・レディネス・チェックを行い、その中で個人の結果レポートを確認することができる一方で、研修コーチは集計した総合結果をグループに提示し、グループ内での話し合いを行うことができる。
デジタルコンピタンスやデジタル・レディネス・チェックに関するご質問、ご提案、ご意見がございましたら、ぜひお寄せください。

【執筆】
Prof. Dr. Walter Jochmann | Managing Director
Lukas M. Fastenroth | Akademischer Leiter Consulting, Kienbaum Institut

オリジナル記事(ドイツ語):
https://www.kienbaum.com/de/blog/digitalkompetenz-als-erfolgsfaktor-in-der-neuen-hybriden-arbeitswelt/
本記事はニュースレター2022年No.2に掲載されたものです。ニュースレターは下記よりご覧いただけます。
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2022/06/Newsletter_No_2_2022_JP.pdf

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japan@kienbaum.co.jp
【キーンバウム・コンサルタンツ・インターナショナル】
全世界4大陸に計22の拠点を持つドイツ最大手、ヨーロッパ有数の人事およびマネジメントコンサルティング会社。創業以来75年以上、クライアント企業との信頼関係を基礎に、組織における人材の能力を最大限に引き出すことを目標とする総合的コンサルティングを提供。

【キーンバウム・ジャパン】
キーンバウムのコンサルティング業務のノウハウを活かし、日本におけるエグゼクティブサーチを目的に設立。豊富な海外ビジネス経験を背景に、クライアントのニーズを徹底的に把握し、一貫した信頼関係の中で候補者を絞り込む。雇用契約締結だけでなく長期的な人材コンサルティングのパートナーであり続けることを目標とする。
https://international.kienbaum.com/japan/

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