【ジョブ型】ニューノーマル仕様の報酬制度はジョブグレーディングのスリム化から 正念場の人事制度改革

社会的なメガトレンドが働き方と労働市場に大きな変化をもたらしている。労働時間や勤務地、共同作業の形態がよりフレキシブルになり、コロナ危機も一因となって急速に加速されたこの発展は、企業にさらなるプレッシャーを与えるものだ。同時に、職務設計や職務体系も変化し、従業員の嗜好にも変化が見られる。そのため、多くの企業が雇用条件を未来志向型にすべく、インセンティブシステムを近代化しなければならないという課題に直面しているのだ。

 

ポジティブな雇用者イメージを決定づける最も重要な要素の一つが「報酬」であることは議論の余地がない。また、トップ企業の魅力のすべてが報酬であるわけではないにしても、報酬制度に弱点がある場合、それを補うことは難しい、と言うことも明らかである。純粋な報酬水準に加えて、最も重要なことは、報酬が(社内比較で)公平であると認識されること、(従来の管理職キャリアに限らず)成長見通しが魅力的であり、それが(業績に)適切な報酬に結びつけられることである。多くの企業で報酬問題がますますオープンになり、従業員が自由に給与情報を入手できるようになったことで、明確な等級制度と報酬制度へのアクセスを可能にし、報酬、キャリア、育成を確固たる基盤に据えることがますます求められている。

 

革新的でシンプルなグレーディングシステムが求められている

従来のジョブ・グレーディングの考え方は、その基本的な方法論の理解において、1950年にILO(国際労働機関)が発表したジュネーブ・スキームまで遡ることができる。そのため、多くの企業は70年近くもほとんど変わらないグレーディングの考え方で対応してきた。しかしその一方で、社会、経済、技術は大きく変化している。

 

したがって、多くの企業が新たな仕組みづくりを模索しているのは当然のことである。この展開に対して、「これだけ変化の波に耐えてきたのであるから、この方法論の枠組みはこれからも万物の尺度であり続けるだろう」という言い方もできるだろう。しかし実際の働き方の動向はこれを裏付けるものではない。数十年の間に、技術、製品、プロセスなどが持続的に発展してきたのに対し、企業の組織構造においては、「ポジション」は具体的で一定、かつ従業員に明確に割り当てることができるタスクセットとして、不動の位置を占めていたのである。しかし今日の仕事の現実は、しばしば正反対になる。新しい組織形態やアジャイルな職務内容では、活動や責任は可変的(流動的)で、従業員は異なる(臨時)役割の間を移動する。具体的な協力関係のモデルにかかわらず、速いスピードとダイナミクスの観点から、刻々と変化する展開に価値の枠組みを適応させる必要性が高まっているのである。

 

従来の評価手法は学術的な性格が強く、複雑で理解しにくいため、限界に達している。そして多くの評価担当者は、まさに「シンプルで説明しやすい」システムを希望している。これは、Kienbaumが情報ポータルのTotal Rewardsと行った調査でも確認されている。企業に透明性(への期待)がより求められていることを背景に、特に中小企業において、使いやすく、説明しやすい、よりシンプルなモデルへの志向が見られるようになった。

 

オーダーメイドのソリューション:多くの場合、予想以上にシンプル

ジョブグレーディングについては、長い間、方法論的に成熟し、できるだけ広く実践で証明された方法が王道とみなされてきた。個々のビジネスモデルへの適合性、仕事の価値観、実際の需要、効率的な適用に向けての可能性などは、たとえあったとしても、二次的な重要度として検討対象に含まれる程度に過ぎなかった。

 

「ニューワーク」の現実は、考え方に変化をもたらしている。シンプルで実用的なソリューションを求める動きが活発化するにつれて、カスタマイズされたソリューションがより良い選択肢となる傾向がますます強まっているのである。実用的なアプローチと、確立された手法の要素を併用することで、個々にカスタマイズされたオーダーメイドのソリューションは手の届く価格で実現可能となり、更に、その後の実用化において多くの利点をもたらすのである。

 

ジョブグレーディングのカスタマイズ過程と、正確に調整されたグレーディングが企業にもたらす具体的な付加価値について、具体的に2つの実例を挙げて下記に説明する。

 

ベストプラクティス:Gropyus社における「ぴったりフィット」するレベル体系

資源保護と持続可能性に特に重点を置き、高品質で手頃な価格の住宅づくりに注力するプロップテック企業(※1)Gropyusは、280人の従業員を擁する。しかし、著しい成長と、多くの社員が大企業やDAX上場企業から採用されたため、明確な等級体系や昇進条件の透明性を熟知していることから、現実的で拡張性のある構造が必要となった。

 

目標は、競争力のある報酬(※2)と業績管理のための明確な仕組みの作成、有効なパフォーマンスマネジメントの確立、従業員に対するキャリアパスの明示、業績に対する報酬、優秀な人材の特定および育成の促進、である。

 

このような要求に応える基礎となるのが、企業の状況にぴったりと合ったレベルシステム(企業のさらなる成長余地が配慮されたレベル数)である。ここでの課題は、方法論的に健全で、職務の多様性と組織のダイナミックな成長、そして俊敏性(アジャイル)に対応できるシステムを開発することであった。

 

同時に、各職務レベルを明確に定義し、運用する際の論理を管理者や従業員がすぐに理解できるようにする必要があった。そうすることで初めて、適切な報酬、一貫した業績評価サイクル、キャリアマネジメントのための強固な枠組みとして、レベル体系が持続的な付加価値を生み出せるからである。その手順は以下の通りである。

  • 大まかなレベル分類のモデルとして重要な役割を果たしたのは、キーンバウムの「KRIEM(Kienbaum Role Impact Evaluation)(※3)スプリント」の方法論であった。4つの基準からなるこの分析評価手法は、特に無駄がなく、使いやすい。これは、大きな「設定作業」を必要としない実用的かつ基礎的なツールであり、同時に、非常に差別化され、理解しやすく、方法論的に検証された結果を得ることができる。

 

  • 各職務はシステムに沿って分析、評価され、定義されたジョブレベルに割り当てられた。同時に、この4つの分析基準は、個々の職務レベルを明確かつ分かりやすく記述し、さらなる作業の基礎として機能する。このようにして、レベル分類は確固たる方法論の上に確立され、この分析を基礎として、カスタマイズが行われるのである。

 

自動車業界におけるハイブリッド型分割グレーディング

ある大手自動車会社の子会社は、アジャイル型の仕事を行う部門において、従来型の組織構造と組み合わせ共通の枠組みを作成する、という課題に直面していた。ここで特徴的なのは、新しい協力体制と構造モデルの枠組みの中で、従業員の責務は多くの場合、恒常的というよりむしろ臨時的なものが多いということであった。

 

この特徴を踏まえて、概要職務評価の理解に基づき、2つの異なる領域に分けたソリューションが開発された。すなわち、実務的なレベルシステムへの基本的なグループ化と、(臨時の)追加職務である。

 

  • 基本的なグループ化
    「正しい処理(ノウハウ)」「自律的判断(自律性)」「複雑性への対処(複雑性)」という3つのシンプルな基準に基づいて開発されたレベル構造を用いる。基本的な職務内容に焦点を当て、職務記述は具体例を含む運用可能なマトリックスで包括的に行われた。このように作成された「ロードマップ」により、ある職務を担う社員が、個々のキャリアステージでどのように成長していくかが明確化された。同時に、戦略的・組織的な必要性に応じてポジション数を制限することで、レベルアップの難しさを戦略的に示すことも可能となる。更に、レベルが上がるごとにより大きな責務を負うことも明確化される。

 

  • 臨時役割のグループ化
    プロジェクト、人事、プロセス、顧客窓口などの追加職務は、アジャイルな世界ではむしろ一時的なものであり、逆に従来型の組織では恒久的に位置づけられる傾向にあるため、従来型のグレーディング分類とは切り離して扱う。従来の評価モデルでは、これらの要素は先述の3つの基礎分類(ノウハウ、自律性、複雑性)と合わせて総合的な職務分類となるところである。我々のクライアントのモデルでは、硬直した連動性を打破し、分類、キャリア管理、報酬の決定において、より柔軟性を持たせることが可能となった。また、追加職務についても、それぞれ概要化した上で、個々の特性を包括的なレベル構造と関連付けた。

 

これにより、どの職務をどの担当者に割り当てるかが明確になる。既存の職務レベルの枠組みの中で、ある程度の追加の責務が期待されることとなる。更に、いくつかのポジションでは、既存の分類枠を超える役割が分担されるようになる。このように、役割分担が明確なプロセスで規定されていれば、論理的根拠が与えられ、高い潜在能力を持つ人材の更なる育成に非常に有効である。(一時的に)上位レベルの職務に就くことが明確になることで、固定給の増額、ボーナスの増額、スポットボーナスなど、短期的な金銭的報酬が可能となる。ただしこれは、直接レベルアップにつながるというわけではない。長期的に、より高い責任を伴う活動を実証的に行ってきた場合に、結果としてレベルアップにつながるものである。

 

結論

この例から、特にアジャイル構造においては、構造や秩序に対する要求が高く、評価基準に頼ることでそれに応えることができることがわかる。しかし、現代の組織の要件を満たさない、硬直した自動化を避けるために、それぞれの企業の状況に応じて、実用的かつ柔軟にこれらを適用していくべきである。このような組織モデルとキャリア・業績・報酬管理を直接連動させ、総合的なソリューションを形成することが、組織の成功の中心的な要素となるからである。

※1 https://www.kienbaum.com/de/branchen/real-estate/
※2 https://www.kienbaum.com/de/leistungen/compensation-performance-management/
※3 https://www.kienbaum.com/de/leistungen/compensation-performance-management1/kriem-kienbaum-job-grading/

本記事はComp&Ben 4号/2022年8月号に掲載されました。https://www.totalrewards.de/comp-ben/magazin/

 

キーンバウムのジョブグレーディング・システム、KRIEMについての詳細はこちらをご参照(ドイツ語)、または日系企業グループまでお問い合わせください。https://www.kienbaum.com/de/leistungen/compensation-performance-management1/kriem-kienbaum-job-grading/

 

執筆

Nils Prüfer
Director | Compensation & Performance Management

Thomas Thurm
Senior Manager | Compensation & Performance Management

 

オリジナル記事(ドイツ語):

https://www.kienbaum.com/de/blog/hr-in-der-crunchtime-schlankes-job-grading-als-rueckgrat-und-treiber-fuer-die-neuausrichtung/

 

本記事はニュースレター2022年No.4に掲載されたものです。ニュースレターは下記よりご覧いただけます。

https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2022/06/Newsletter_No_2_2022_JP.pdf

 

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全世界4大陸に計22の拠点を持つドイツ最大手、ヨーロッパ有数の人事およびマネジメントコンサルティング会社。創業以来75年以上、クライアント企業との信頼関係を基礎に、組織における人材の能力を最大限に引き出すことを目標とする総合的コンサルティングを提供。

 

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キーンバウムのコンサルティング業務のノウハウを活かし、日本におけるエグゼクティブサーチを目的に設立。豊富な海外ビジネス経験を背景に、クライアントのニーズを徹底的に把握し、一貫した信頼関係の中で候補者を絞り込む。雇用契約締結だけでなく長期的な人材コンサルティングのパートナーであり続けることを目標とする。
https://international.kienbaum.com/japan/

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