【キーンバウム】中小企業におけるマネジメントの報酬:課題と解決策
変革の時代において、家族経営企業は報酬制度を未来志向で調整するという課題に直面している。業績管理とインセンティブ制度の重要性は過小評価されがちだ。ファミリービジネスの戦略サミット「MY WAY」では、マスタークラスの一環として、キーンバウムで報酬を専門とするDr. Sebastian PacherとJörg Scholtenがマネジメント報酬のベストプラクティスを紹介した。以下はその主な結果をまとめたものである。
企業を取り巻く環境は、デジタル化、持続可能性、地政学的発展などにより、常に変化している。家族経営の企業においては特に、どのように報酬制度を設計すれば企業の変革を支援し、優秀な人材を継続的に引き付けることができるかという点で、特有の課題に直面している。9月中旬にベルリンで開催されたファミリービジネス戦略サミットでは、なぜ中小企業において報酬制度が重要な役割を果たすのか、その理由を明らかにすることができた。
変化するマネジメント報酬
報酬と業績管理の重要性は、家族経営企業では過小評価されがちである。コンサルティング実務における経験からすると、市場環境や企業の戦略的方向性が大きく変化しても、報酬制度は数十年間変わらない、というケースもよく見られる。企業の成功を長期的に保障するには経営者の内発的な動機付けだけで十分だと信じられがちであるが、インセンティブ制度は意思決定を左右するものであり、したがって意識的に設計されるべきである。
誤ったインセンティブをもたらす3つのバイアス
家族経営企業でよく見られる、誤ったインセンティブにつながる3つのバイアスを下記に挙げる。
1. 短期的バイアス:短期的な業績指標に注目しすぎると、長期的に必要な投資や持続可能な企業発展が妨げられる。
2. サンドバギング: 経営者は、意図的に目標を低く設定して目標達成を簡単にする傾向がある。これは特に、雇用された経営者がオーナーに対して情報面で優位に立つ企業で顕著である。
3. 過度な単純化:単純すぎる報酬制度は、数値化しやすい少数の目標に焦点を当て、全体像を見失いがちである。しかし、成功は多次元的なものであり、様々な重要な数値をバランスよく評価することが必要である。
中小企業の報酬制度に対する解決策
これら3つのバイアスに注目すれば、報酬制度を定期的に見直し、企業戦略に合致させることがいかに重要であるかがすぐにわかる。ここでは短期的目標と長期的目標を区別することが重要である。実績のあるアプローチには以下のようなものがある:
1.長期的視点を導入する: 「短期的バイアス」を減らすため、複数年にわたる長期的要素を報酬に組み込むことが望ましい。これは、長期的な業績指標に基づく参加型モデルやボーナスの形をとることができる。こうすることで、経営陣は、より長期にわたって企業の成功に役立つ意思決定を行うようになる。
2.相対的な目標設定: 絶対的な目標を設定する代わりに、市場や定義されたベンチマークと比較して企業の業績を検討する相対的な目標を導入することができる。これにより、「サンドバギング」傾向が軽減され、経営陣の野心度が向上する。
3.企業フェーズへの適応:報酬制度は、企業の様々なフェーズに対応したものとすべきである。例えば、スタートアップや成長期と、成熟期や統合期では異なるインセンティブを設定する必要がある。マスタークラスでは、スタートアップ期の企業ではバーチャル・シェアオプションなどが有効である一方、成熟期の企業では従来の変動報酬制度がより合理的、ということについて議論がなされた。
4.経営文化と価値観を取り入れる: 金銭的インセンティブに加え、リーダーシップの行動、人材育成、イノベーション能力といった側面も報酬制度に組み込むべきである。特に家族経営企業では企業文化が重要な役割を果たすため、報酬制度にはオーナー一族の長期的な価値観や目標を反映させるべきである。
結論:意識的な報酬設計が成功の鍵
家族経営企業における報酬制度は、企業の戦略目標に明確に焦点を当てて意識的に設計される必要がある。定期的な見直しと調整は、報酬が経営陣の望ましい行動や意思決定を促すために不可欠である。すべての企業にとって理想的な報酬制度というものは存在しないが、企業の個々のニーズに合わせて慎重に設計することで、誤ったインセンティブを回避し、企業の将来の成功への道筋をつけることができる。
執筆
Jörg Scholten
Managing Director / Partner | Compensation & Performance Management
Dr. Sebastian Pacher
Managing Director / Partner | Compensation & Performance Management
本記事はニュースレター2024年第5号に掲載されたものです。
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