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【キーンバウム】4日勤務制:理想か、それとも現実的な選択肢か?

4日勤務制は、現在多くの注目と議論を集めている制度である。労働者の約半数がこの制度を「魅力的な雇用主に期待する」と回答している一方で、実際に導入している企業はごくわずかにとどまっている。では、短縮労働は真に成功するモデルなのか、それとも単なる願望に過ぎないのか? 本稿では、導入モデルの多様性を紹介し、生産性の低下や人員・能力不足といった現実的な課題を分析しつつ、成功に導くための具体的な提言を示す。

4日勤務制は、企業と労働者の双方にとって関心の的である。Kienbaumが1,643名の労働者を対象に行った調査によれば、約半数が「魅力的な雇用主には4日勤務制を期待する」と回答している。また72%が「個人的にこの制度を魅力的に感じている」とした。週に1日

多く休める点は好意的に受け止められており、福利厚生の中でも人気上位20にランクインしている。一方、600社超の企業に福利厚生の内容を尋ねた別の調査では、4日勤務制をすでに導入していると答えた企業は6%にすぎなかった。また、我々のコンサルティング現場でも明らかになっているのは、労働者は「給与据え置きで自由時間を増やす」ことを夢見ている一方で、企業側は「それが本当に現実的なのか」「生産性や競争力にどう影響するのか」という疑問を抱いているという現実である。

まず注目すべきは、「4日勤務制」という言葉の意味が人によって大きく異なる点である。この制度は基本的に「週の勤務日数を4日に短縮する」ことを指すが、その具体的な形態はさまざまに解釈され得る。

一つの見解は、「労働時間を短縮しても給与は同じ」というものである。労働者は労働時間を減らしても、経済的な損失を被ることはない。もう一つの見解は、「同じ仕事量を4日間でこなすが、給与は変わらない」というものである。つまり、同じ労働時間をより少ない日数に圧縮する(例:1日10時間を4日間)。

1,643人の労働者を対象とした我々の調査では、労働者の間で非常に異なる認識が存在することが示された。「4日勤務制のために、現在の給与の何パーセントまでなら減額を受け入れられるか?」という質問に対する回答は、驚くほど多様であった。一部の回答者は、すでに80%の勤務(実質的に4日間労働)をしていると答えた一方で、他の回答者は、同じ仕事をより少ない日数で行う場合でも、1ユーロたりとも給与を減らすことはできないと述べた。平均すると、回答者は約8%の給与削減を受け入れる意向を示した。この結果は、4日間勤務制に対する統一された理解が存在しないことを明確に示している。

企業側の主な課題

4日勤務制の導入にあたり、企業が乗り越えなければならない課題の一部を紹介する。

■ 生産性と効率性の確保
制度推進派は「労働時間を減らすことで生産性はむしろ向上する」と主張する。実際、ドイツ(※1)やイギリス(※2)の調査では、労働時間を削減することで効率が高まるという結果が出ている。

しかし、企業にとってこれはあくまで「期待」であり、実際には積極的な取り組みがなければ生産性の損失というリスクが残る。つまり、企業は業務プロセスを最適化し、作業手順をより効率的に整備する必要があるということだ。

■ キャパシティの不足
店舗、製造、サービスなど、現場での常時対応が求められる業種では、4日勤務制の実現はより複雑になる。たとえば、機械を毎日保守点検する技術者が週に1日抜けることは業務上支障を来す。こうした場合には人員の増強やテクノロジーによる代替が不可欠となる。

■ 残業と勤務時間管理の課題
すでに多くの企業では、労働者が所定労働時間を超えて勤務しているとの報告がある。業務量を減らさずに4日勤務に移行すれば、結果的に残業が増えることになりかねない。これにより、時間外労働が勤務時間管理の「見えない貯金」になってしまい、長期的にはさらなる問題を引き起こしかねない。

成功に導くためのポイント

では4日勤務制の導入にあたり、企業が取り組むべき事項とは何だろうか。その一部を以下に紹介する。

■明確な枠組み設定
多くの労働者が4日勤務制でも同じ給与を期待しているが、企業は現実的な条件を定めなければならない。まず問うべきは、「労働時間と給与を比例して削減するのか?」「あるいは生産性の低下を他の施策で補うのか?」という点である。共通の定義――すなわち、企業として「4日勤務制とは何か?」――を明確にする必要がある。

■職務ごとの実現可能性の検討
すべての業務が4日間にうまく収まるわけではない。企業は、どの職種や部署が4日勤務制の恩恵を受けられるかを精査し、どこに代替モデル(例:フレックスタイム制)がより適しているかを見極める必要がある。

■テクノロジー支援の活用
デジタル化やAIによる効率向上は、同じ成果をより短い時間で達成する助けとなる。企業は、業務プロセスを自動化し、従業員の負担を軽減するテクノロジーへの投資を検討すべきである。

■パイロットプロジェクトとフィードバック
いきなり全社導入を目指すのではなく、まずは個別のチームで4日勤務制を試験導入することが望ましい。その際には、効率性や満足度を測定するための定期的なフィードバックループを設け、必要に応じてモデルを調整していくことが重要だ。

結論:4日勤務制には個別対応が不可欠

4日勤務制は、労働者と雇用主の双方に利点をもたらし得る興味深い選択肢である。ただし、適切に実行されることが前提だ。企業にとって重要なのは、画一的なアプローチではなく、職種ごとに調整された個別対応である。人事部門はこの点で中心的な役割を担っており、柔軟な思考と現実的な条件設定によって、従業員の満足と企業の成功とのバランスを取ることが求められている。

【注釈】
※1 https://www.intraprenoer.de/4tagewoche 
※2 https://autonomy.work/wp-content/uploads/2023/02/The-results-are-in-The-UKs-four-day-week-pilot.pdf 

執筆

Dr. Michael Kind
Director | Compensation & Performance Management

Felix Nickel
Manager Client Development | Compensation & Performance Management

Holger Jahn
Executive Director | Compensation & Performance Management

オリジナル記事(ドイツ語):
https://www.kienbaum.com/blog/4-tage-woche-wunschvorstellung-oder-realistisch/

本記事はニュースレター2025年第2号に掲載されたものです。最新版は下記リンクでもご覧いただけます。
https://international.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2025/05/Newsletter_No_2_2025_JP.pdf

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【キーンバウムジャパン】

キーンバウムのコンサルティング業務のノウハウを活かし、日本におけるエグゼクティブサーチを目的に設立。豊富な海外ビジネス経験を背景に、クライアントのニーズを徹底的に把握し、一貫した信頼関係の中で候補者を絞り込む。雇用契約締結だけでなく長期的な人材コンサルティングのパートナーであり続けることを目標とする。

https://international.kienbaum.com/japan/

(6月5日の同社プレスリリースより転載)