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【キーンバウム】国際チームの構築とマネジメント: 日独の視点

グローバル化が進展する中で、企業は、国際チームをいかに構築・運営し、成果に結びつけるかが問われている。2025年10月14日、NRW.Global Business Japanが都内で開催したイベント「Globalisation and Managing Global Teams」において、その論点が検討され、冒頭の基調講演にはキーンバウムジャパンのシニアコンサルタント則満大輔が登壇した。
以下にその要点を紹介する。

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文化を理解する為の座標軸

言わずもがなであるが、異文化理解に正解があるわけでも、万能薬があるわけでもない。とは言え、ある程度の理論的な座標軸が不可欠である。その代表例として先ず挙げるべきなのは、ヘールト・ホフステードの「6次元モデル」であろう。オランダの社会心理学者ヘールト・ホフステード(1928-2020)が提唱した、国ごとの文化の違いを6つの次元で数値化・比較したフレームワークである。

①個人主義/集団主義、②権力格差、③男性性/女性性、④不確実性の回避、⑤長期志向/短期志向、⑥人生の楽しみ方、という6つの指標で社会の価値観を捉える。

また、非常に実践的・実用的で分かり易いものとして、エリン・メイヤーの「カルチャーマップ」がある。

これは、米国中西部出身でフランス在住、INSEAD教授、異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門とするエリン・メイヤー(1971-)が、異文化間のコミュニケーションスタイルやビジネスの進め方の違いを観察、検証した結果をまとめたフレームワークである。

以下では、この「カルチャーマップ」に沿って、日独について考えてみる。

尚、この種のフレームワークを扱う際に注意すべきは、文化の違いを語ることでステレオタイプが助長される危険性である。結果として個人を「一般的な特性」という枠に押し込めてしまうことになりかねない。杓子定規に捉えず、あくまで一人の個人として判断することが重要であろう。また、文化的な違いや個人差は、国民文化だけでなく、組織・業界・職業、その他の様々な集団の違いとも密接に絡み合っている。例えば、「ヒエラルキー重視」と言われる日系企業の中にあっても、ホンダのワイガヤ文化やTDKの機能平等の精神がある。

一方で、例え話としてよく言われるとおり、「魚は、水の外に出て初めて、自分にとって水が必要であることに気付く」、「私たちの文化も、魚にとっての水のようなものである。私たちはその中で生き、呼吸している」。一人の個人であろうとも、文化から完全に切り離された存在にはなり得ないのである。

更に、予め留意点として挙げておくべきことがある。

・「○○国では」とひと言で言い切ったとしても、個人一人ひとりが違うのは当然である。一方で、そのばらつきはある程度の正規分布となることから、ここでは、その平均値でもって示すこととする。

・ある国の指標について捉える際、他国との比較において理解する必要がある(例: フランス人は、インド人について「時間を守らない」と思っているかもしれないが、そのフランス人について、イギリス人は「時間を守らない」と思っているかもしれず、ドイツ人は、インド人もフランス人もイギリス人も「時間を守らない」と思っている可能性が高い)

① コミュニケーション(ローコンテクスト/ハイコンテクスト)

日独の違いが、最も明確に表れる指標と言える。
「ミーティングで発言しない」ということが、ドイツ人の上司からすれば、「特に発言する(beitragen = 貢献する、という意味合いもある)ことがないのであれば、次からは出席しなくて構わないよ」ということに繋がる。(注意しているわけでも意地悪なわけでもなく、純粋に、「出席する必要がない」と言いたいだけ)

② 評価(直接的/間接的ネガティブ・フィードバック)

この指標も、日独で違いを感じ易い部分であろう。
ドイツ人上司によるフィードバック面談で、ほとんど喧嘩なのか、罵倒されているのか、と日本人であれば思えてならないものであっても、その後では2人ともケロッとして、一緒に仲良くランチに出掛けるという光景は、決して珍しいものではない。

③ 説得(応用優先/原理優先)

実は、異文化間で作業するメンバーをなるべく少なくすることで時間を節約できる。また、異文化チームを立ち上げる以前に、何が目的であるのかを再確認することが重要である。目的がイノベーションや創造性であれば、プロセスが管理できる限り、文化的多様性は高いほど良い。しかし、目的がスピードや効率である場合は、多文化よりも単一文化の方が適している可能性が高い。

④ リーダーシップ(平等主義/階層主義)

ドイツは階層主義に寄っている、と思われがちである。20年前には、ビジネスにおいて、「Du (おれ・お前)」を使うことは稀であったし、「Herr Dr. ○○ / Frau Dr. ○○」と呼び掛けることも一般的であった(ドイツ語では「Dr.」が名前の一部とされる)。ところが、少なくともここ10年程でかなりフラットになった印象がある。業種や企業風土にもよるが、英米蘭のように、上司部下の間柄でもファーストネームで呼び合う習慣が多少とも浸透してきたと感じている。

⑤ 意思決定(合意志向/トップダウン)

日本の特徴として、階層主義であるにも拘らず合意志向が強いことは、例えばドイツ人を混乱させ易いポイントと考えられる。「根回し」や「稟議」といった単語を、いわゆる知日派と言われる外国人が好むことも、その証左であろう。

⑥ 信頼構築(タスクベース/関係ベース)

タスク寄りとされるドイツではあるが、ランチやディナーの重要性も相応に認識されている。

⑦ 意見の相違(対立型/対立回避型)

上述のコミュニケーションとも関連するが、「人格」と「意見」を完全に切り離して捉えているか、ということが大きいと思われる。一方で、ドイツ語で「Nimm das bitte nicht persoenlich =個人的に取らないでね」という表現がある通り、完全に対立型に振り切ることが良いとも限らない。もし自分の文化よりも対立的な文化の人と仕事をする場合、自分にとって自然以上に強い言葉で反論することは避けた方がよい。傍から見ても「何故にそこまで強い表現で突っ掛かるのだ」、「きつい」と思われてしまうことが、実際には多々ある。

⑧ スケジューリング(直接的な時間/柔軟な時間)

スケジュール管理の方法について事前に明確に話し合っておくことで、後になって生じるかもしれない誤解や不満、軋轢を回避することに注意したい。合意の枠組み、つまり「自分たちのチームの文化」を設定し、それに沿って活動することが肝要である。

日独の比較

一般的に、「似ている」とよく言われる日独ではあるが、カルチャーマップとしては、指標によっては相応の違いが表れていることへの留意は重要である。

実務への示唆

成果を着実に生み出す為には、先ず到達すべき目標を明確に定義することが不可欠である。その上で、目標に至るまでの道筋を示し、関係者全員が共通認識を持てる形で整理する必要がある。更に、個々のアクションについて「なぜそれを行うのか」という目的を丁寧に共有することで、業務は単なる作業ではなく、意味のあるプロセスへと昇華される。

その為に求められる姿勢

こうした実践を支える基盤として、他者の考えや意見を受け止める素直さとオープンな姿勢が求められる。同時に、自身の判断が偏見や思い込みに基づいていないか、一歩立ち止まって省みる冷静さと謙虚さも欠かせない。加えて、価値観や考え方の違いを楽しむことのできる好奇心とある程度のユーモアが、前向きな対話を促す。何よりも、自分の「当たり前」が必ずしも他者にとっての「当たり前」ではないという認識を持ち、想像力を働かせることが、協働の質を高める鍵となる。

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NRW.Global Business – ドイツNRW州貿易投資振興公社

NRW州政府傘下の対外経済振興公社NRW.Global Businessは、NRW州への投資・進出を始め、成長市場の開拓や国際ビジネスパートナーとのネットワーク作りなどを支援する。ドイツ最大級の経済拠点であるNRW州への投資を通じ、企業のグローバル展開を後押しする。https://www.nrwglobalbusiness.com/ja/ 

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執筆
Daisuke Norimitsu 則満 大輔     
Senior Consultant | Kienbaum Japan            

本記事はキーンバウム・ジャパンのニュースレターNo.6/2025号に掲載されました。 
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2025/12/Newsletter_No_6_2025_JP.pdf

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【キーンバウム・コンサルタンツ・インターナショナル】

キーンバウムは1945年にドイツで創業された、欧州発のHR専門コンサルティング会社。世界4大陸・26都市に拠点を持ち、グローバルな人材・組織支援を展開する。「人と組織に未来を」という理念のもと、エグゼクティブサーチ、リーダーシップ&マネジメント・コンサルティング、報酬・人事制度設計、キャリア支援など、HR領域全般にわたる総合的なサービスを提供する。日系企業の欧州進出支援にも注力しており、異文化統合や現地人材の活用に強みがある。国際経験豊富なコンサルタントが、言語・文化の壁を越えた支援を行う。

【キーンバウム・ジャパン】

キーンバウム・ジャパンは、2006年に設立された日本法人で、グローバル人材に特化したエグゼクティブサーチを中心にサービスを展開している。また、報酬制度設計やパフォーマンスマネジメントなど、コンペンセーション領域のコンサルティングも提供し、企業の人材戦略を多面的に支援する。外資系企業やグローバル展開を目指す日本企業を対象に、経営層や専門職の採用支援を実施。異文化理解や海外経験を重視した人材の発掘に強みがあり、欧州・アジア市場への進出支援においても高い専門性と実績に定評がある。リテイナー型のサーチを基本とし、採用後も継続的なパートナーとして企業を支援する。
https://international.kienbaum.com/japan/

(2月4日の同社プレスリリースより転載)