キーンバウム、「すぐに話し合ってよかった」~人事評価面談に関する調査結果【キーンバウムのショートサーベイ「人事評価面談」】
キーンバウムは2023年3月、353社を対象に、現在の人事評価面談の仕組みについて調査を行った。頻度や柔軟性などにおいて、希望と現実はまだ大きく異なるものの、「評価面談において最も重要なのは謝意を表すことである」という点では、調査対象企業の意見は非常に一致している。タスクや目標の管理、あるいは給与決定やキャリアステップに関する話し合いは、どちらかと言うとそれほど重視されていないようだ。このショートサーベイの検証結果は以下のとおりである。
感謝のフィードバックが中心
回答者の大多数にとって、人事評価面談の中心にあるのは、達成したこと(何を)とそれを達成した方法(どのように)に関する従業員への感謝のフィードバックである。加えて、能力開発に関する議論やそのための具体策の提示を充実させることで、バランスの取れた「感じの良い(feel goodな)」対話を目指しているようだ。人手不足の時代には、評価面談は一貫して、管理や給与についての話し合いの場とは対照的に、定着とモチベーションに焦点を当てたものとなっている。OKR (Objectives and Key Results)やアジャイル・プロジェクトマネジメントのようなスピーディーな管理ロジックを背景に、柔軟なタスクや目標管理が日常業務の一部となっていることを考えれば、このことはよく理解できる。こうして、人事評価面談では、タスクや目標についてあまり語らず、協力やリーダーシップについての相互フィードバックに重点を置くことができるのだ。
業績管理は随時の柔軟な形式に移行
人事評価面談の頻度に関しては、希望と現実の間に明確なギャップがある。現在、面談は「まだ」主に年1回行われている(調査対象企業の71%)が、将来も引き続きこの方法で実施したいと考える企業は38%と少ない。多くの企業が、頻度や内容だけでなく、面談方法の設計や実施に関しても、より柔軟な対応の必要性を感じている。ここでは、年に一度という期間に縛られず、短い期間での定期的または随時の面談や報告と言ったマネジメント方法で評価する形式が、特に効果的であろう。これにより、コントロールとパフォーマンスフィードバックの両方が得られるわけだ。実際の面談は、より短く、未来志向で、よりリラックスしたものとなる。このようにして、システムに柔軟性がもたらされる。本調査参加者の理想像や実際の実務で、人事評価面談は、トピックごとに的を絞ったいくつかの形式に分散して実行可能であることが次第に明らかになってきている。
短時間、高頻度形式の利点は、年1回の正式な評価面談という堅苦しい枠組みを回避し、それを日常業務に統合することである。定例会議や定期的なチェックインによって、公式な場にとらわれず効果的なマネジメントが可能になる。また、即時のインパルスフィードバックの人気もますます高まっている。これは、同僚がアプリを通じて直接デジタルフィードバックを提供できるもので、年1回の全体的な業績評価の代替として利用できる。このアプローチは、人事評価面談の古典的な内容を打破し、年間を通じて臨機応変に対応することを目的としたもので、効果が期待できる。
「何を」よりも「どのように」のフィードバック
KPI、成果、目標の達成の3点は、依然としてパフォーマンスマネジメントにおける業績、フィードバック、給与やキャリアの決定に不可欠な要素であるだろう。しかし、重要性をますます高めているのは、期待される能力とスキルの達成である。これらはパフォーマンスとモチベーションを持続的に構築する不可欠要素であるためである。したがって、人事評価面談において、これらの内容を通して能力開発やモチベーション向上を促進したいと言う意向が高まっているのは納得できる。人事評価面談では、協力やフィードバックについての議論を深めたり、キャリア開発について話し合ったりしたいという願望がはるかに顕著である。かつては評価面談のメインテーマであった目標設定や給与調整と言った側面は、別の場所で扱われ、評価面談におけるこれらの重要性は奪われた形となっている。
包括的なフィードバックが望まれる
これまで、人事評価面談は主にマネジャーの視点と従業員の自己評価に基づいて行われてきた。しかし、今回の調査では、より広い範囲でのフィードバックが強く望まれていることが明らかになった。これは、特にプロジェクトチームやアジャイル組織で多くの業務が行われている企業で顕著である。これにより、的確なフィードバックを行うためには、対象の従業員と十分なコンタクトがあるさまざまなグループをフィードバックプロセスに統合することが重要となる。このような形式によるフィードバックを公正で有意義なものとするために、企業は、プロセスの管理、頻度、求められる内容、異なるグループからもたらされるフィードバックから予測される結果について、事前に熟考する必要がある。
人事評価面談:アナログとデジタル、どちらでも問題ない?
現在、人事評価面談の約半数はアナログ形式で実施され(45%)、残りの半数はデジタル形式で行われている。22%の企業が確立されたデジタル・ソリューションを使用し、6%が独自のデジタル・ソリューションを使用、更に28%がフォームのデジタル提供など、プロセスの少なくとも一部をデジタル化している。最終的に、人事評価面談の成功を左右するのはプラットフォームではなく、面談の内容、焦点、プロセス、管理である。デジタル・ソリューションは、面談を効果的にサポートし、さまざまなプロセスを効率的につなげ、対話が望ましい付加価値を提供し正しく実施されるよう支援することができるが、必須というわけではない。
結論
このショートサーベイは、人事評価面談が従業員とのコミュニケーションを促進し、フィードバックを提供し、能力開発の機会を示す不可欠なツールであることを示している。一方では、年次評価からの切り離しと、より焦点を絞った特定のアプローチへのニーズが存在し、また他方では、パフォーマンス評価を複数の担当者に分散させる必要性もある。同時に、給与調整のような関連トピックが体系的に議論されるようにしなければならない。効果的なパフォーマンスマネジメントには、パフォーマンスと従業員の視点を効果的に統合するための関連構造、ツール、プロセスを確立することが必要である。このプロセスにおいて、人事部は、ビジネスのイネーブラー兼コーチとして重要な役割を果たし、人事評価面談のプロセスを成功させ、効果的なものにすることができる。
本ショートサーベイは、ドイツ、オーストリア、スイスのキーンバウムが協働で行った。
Alfred Berger | オーストリア
Timon Forrer | スイス
すべての調査結果はこちらから:
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次回のウェビナー「Praxis Performance Management」は2023年11月15日午前9時より開催です。(ドイツ語)。お申し込みはこちらから。
https://www.kienbaum.com/de/leistungen/compensation-performance-management/performance-management/
執筆
Lina Hovestaedt
Associate Consultant
Lina.Hovestaedt@kienbaum.de
Hans-Carl von Hülsen
Senior Manager | Compensation & Performance Management
Hans-Carl.vonHuelsen@kienbaum.de
オリジナル記事(ドイツ語):
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