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キーンバウム、Catch24 – 効率化の圧力、人材不足、AIの波の狭間にあるHR。ドイツのHR事情

近年、企業内でのHR(人事)の評価がますます高まる中、HRが対処しなければならない社会的および技術的な変化によって、課題も増え続けている。キーンバウムのマネージングディレクター兼パートナーであるProf. Dr. Walter Jochmannは、2024年のキーンバウム・ピープルコンベンションにおいて恒例の「HR界の現状演説」を行い、現在のHR「ピープルマネジメント」の役割について報告している。

今年のJochmannの講演タイトル「Catch24」は、HRおよび社会全体が2024年に直面しているジレンマを言葉遊び的に表現したものだ。過去数ヶ月で、昨年までの数年間のHRブームとは異なる変化が見られたという。「私たちは砂嵐に巻き込まれ、板挟みになっている」。厳しい人材不足は続いており、人件費は大幅に上昇した。さらに、急速なデジタル技術の発展、依然として続くエネルギー危機、気候変動、そして人々の心の中でますます顕著になっている政党、宗教、国家間の分断といった外的要因がある。この厳しい「BANI(Brittle脆弱、Anxious不安、Non-Linear非線形、Incomprehensible理解不能)」な情勢の中で、雰囲気はますますもろくなり、人々は不安を抱き、多くの人にとって全体の状況が理解不能となっている。経営者はこうした現実を認識し、対応しなければならないのだ。

このネガティブな動きは、ビジネス拠点としてのドイツにも相応の影響を及ぼしている。経済紙エコノミストのポータルサイトでは、ドイツのスコアは3.4にとどまっている。また、ドイツ企業の投資決定が依然として信頼できる人材の可用性に大きく依存しているため、この厳しい環境全体において、HR機能は非常に重要な役割を果たすのである。

AIがもたらすチャンスはリスクを上回る

さらに、人工知能/生成的知能の応用が、ほぼすべての企業および市場プロセスにおいて非常に重要な技術要素として、中心的な位置を占めるようになった。人工知能のブームは「楽観主義者によれば、4-7%の経済成長」をもたらす可能性がある。すでに多くの企業が営業・マーケティング、研究開発、IT、生産などの分野でAIソリューションを研究・導入しているが、これは当然、コンテンツ生成、採用・学習支援、プロセス最適化、データ管理などのHR機能にも当てはまる。キーンバウムが実施した調査によると、HR担当者が認識しているチャンスは、懸念されるリスクを大幅に上回っている。

とはいえ、共同決定には包括的な関与が必要となり、結果、データとパフォーマンスに関する導入プロセスを遅らせるだろう。そのため、今すぐHRデジタル戦略を策定し、それを「後でUターンすることなく 」効率的に実施することがより重要になる。残念ながら、この点において多くの企業で願望と現実の間にまだ大きなギャップがある、とJochmannは批判する。これらの戦略や目標に積極的に取り組んでいる企業はごく少数だからだ。

このことから、ソフトウェア市場の動向を注意深く見守る必要がある、とJochmannは指摘する。ChatGPTのようなアシスタントやオートパイロットなど、現在はまだ孤立しているソリューションの多くが大規模なスイートに統合されるとJochmannは予測する。「それでもなお、企業ごとの最先端ソリューションの需要は常に存在する。新しいテクノロジーを理解し、導入し、最終的に価値を生み出すために、HR部門でもITスキルの重要性が増しているのだ」とJochmann。「人材育成のみでは不十分だ。HRは明らかにより技術的になっており、これらの能力を持つプロファイルが必要なのである。」

Jochmannによると、HR部門の従業員の10~20%はデジタル人材であるべきという。これは現在まだ達成されていない値だが、これは不可欠である。IT変革がより大きなインパクトを与えており、HRはこれを関連する社内の他の部門に助言しなければならないからだ。「HRが本当に必要とされているのはここなのだ。しかし、HR自身もそのテーマを理解しなければならない。」スキルが欠けている場合、HRはこの時点では適切で信頼できるパートナーではなく、付加価値を提供できないことが多い、とJochmannは強調する。

HRのオペレーティングモデルの変更

Jochmannの調査によれば、技術的変化は業務モデルの大幅な変化を期待させるものではない。依然として世界的に普及しているピラー・ロールモデルや機能モデルに加え、アジャイル組織やコンサルティング組織、トライブモデルへの移行を望む動きも一部で見られる。「キーンバウムが推進するのは、組織というよりむしろ、人材部門とビジネスモデルという考え方だ」とJochmannは述べる。具体的には、サービス/オペレーションビジネス、人材サプライチェーン・マネジメント、トランスフォーメーション・コンサルティングなどが挙げられる。「サービスエンジン」は、あらゆる人事管理プロセスや、サポートやコンサルティングのためのインプットチャネルを運営し、「人材サプライエンジン」は、採用から退職までの完全なhire-to-retire process(採用、オンボーディング、タレント開発、ラーニング、パフォーマンス、配置、人事業務計画、リテンションを含む)を扱う。残りの「トランスフォーメーションエンジン」は、ビジネス戦略と人材戦略を統合し、文化プロジェクトおよびリーダーシッププロジェクトを実施し、すべてのビジネスプロジェクトに付加価値を提供し、戦略的人材計画およびトランスフォーメーションを共同で策定する。

Jochmannは特に次の2つの進展に前向きだ。DAXの女性採用比率は前年に比べてさらに上昇し、65%に達した。さらに、重要なHRポジションに就く際には、HR分野での深い経歴が再び重視されるようになり、これがトップからボトムまでの業務に顕著な好影響を与えていることだ。「ヒト」の関与、すなわちピープル・タッチは、成功するHR業務の中心的な要素であり続けるだろう。「HRが自動化され、人がいなくなり、すべてが仮想化されることを目指しているのではない。顧客分野、そしてリーダーシップやタレントの分野に、より大きな存在感を示すことが必要だ」。永続的なサンドイッチ的役割から抜け出し、価値貢献に関する必要な議論を、自信を持って成功裏にリードできるようになるためには、HRは今後、明らかにより技術志向、コンサルティング志向を強めていかなければならないだろう。困難な課題だが、大きなチャンスが待っている。

講演の全編(動画、ドイツ語)はこちらから:

https://www.kienbaum.com/blog/walter-jochmann-people-convention-hr-effizienzdruck-talentmangel-ki/

キーンバウムのピープル・コンベンション

キーンバウムが毎年開催する人事(HR)やピープルマネジメントに特化したイベントで、今年で開催23回目。最新のHRトレンドのほか、技術革新、特にデジタル化やAIのHRにおける影響や活用法に焦点を当て、企業の人事担当者や経営者による講演やワークショップを通じて知識や実例が共有される。

講演

Prof. Dr. Walter Jochmann

Managing Director & Partner | Kienbaum Consultants International

執筆

キーンバウム編集部

contact@kienbaum.de

オリジナル記事(ドイツ語):

https://www.kienbaum.com/blog/walter-jochmann-people-convention-hr-effizienzdruck-talentmangel-ki/

本記事はニュースレター2024年第4号に掲載されたものです。

https://international.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2024/09/Newsletter_No_4_2024_JP.cleaned.pdf

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