キーンバウム、ドイツの監査役会におけるAI能力は低すぎると考える経営陣が多数
サーベイ「Corporate Governance 2024」
・監査役会でAIのトピックを定期的に扱っている企業はわずか28%
・回答者の大多数がAIによる大きなチャンスを見込む一方で、破壊的な影響も懸念
・緊急に対応が必要。企業は監査役会におけるAIの専門知識を強化し、透明性の高いAI戦略を策定する必要がある
ドイツ企業の役員は、人工知能(AI)に関する監査役会の専門知識が低すぎると考えている。これは、キーンバウムが実施したコーポレート・ガバナンス調査の結果である。この調査によると、対象となった企業の80%が、AIの分野が役員会にしっかりと責任を持って確立されていると回答している一方で、監査役会がAIの話題を定期的に扱っている企業は全体の4分の1にとどまっている。
キーンバウムの調査はドイツ国内の約120人を対象に実施された。その参加者は監査役会と役員会のメンバーが同数であった。回答者のほぼ4分の3が、AIは長期的に自社の競争力を向上させる大きなチャンスをもたらすという意見を持っている。一方、半数近くが、AIが自社のビジネスモデルに破壊的な影響を与えることを懸念している。本調査によると、監査役会はまず、AI分野のスキルを緊急に強化する必要がある。
次に、役員会と監査役会の緊密な連携が重要である。AIに関する取り組みについて定期的に報告することで、十分な情報に基づいた意思決定が可能になる。そして第三に、企業はAI利用のための倫理的なガイドラインを策定し、自社のAI戦略について透明性のあるコミュニケーションを行うべきである。
キーンバウム・コンサルタンツ・インターナショナルのパートナー兼マネージングディレクターであるDr. Sebastian Pacherは、「人工知能はビジネスモデル全体を根本から変える可能性を秘めている」と語り、「そのため、企業はこのテーマを戦略的アジェンダに据え置く必要がある。すべての役員や監査役がAIに関する深い専門知識を持たなければならないわけでも、持つことができるわけでもない。しかし、適切なトピックに適切な人材を配置できるように、十分な専門知識を確保する必要がある。したがって、全体として、役員会や監査役会にもっとデジタルおよびAIの専門家を増やす必要がある。」と強調した。
調査の他の結果は以下の通り。
1. 多様性が成功のカギ:
本調査では、役員会や監査役会における出身、経験、視点などの多様性が、より良い意思決定に不可欠であることが強調されている。多様性は異なる視点を促進し、より革新的な解決策を可能にする。
2. 地政学的な課題:
半数以上の企業が、ドイツ国内よりも海外での成長が速いとしている。その結果、地政学的問題の重要性が増している。各国への依存を減らすため、投資を海外に移す傾向が強まっている。
3. 社会的議論への参加:
役員会や監査役会は政治的・社会的議論にもっと参加すべきである。回答者の70%が、これが長期的に企業を強化するために有意義であると考えている。公的議論への参加に関しては、リスクを最小限に抑えるための明確なルールとプロセスが必要である。
4. 変革の可能性をオープンに:
サステナビリティの変革には、コーポレート・ガバナンスの根本的な変革が必要である。持続可能性の基準が報酬制度に組み込まれつつあるが、多くの企業はまだその可能性を十分に活用していない。
5. ビジネス拠点としてのドイツの魅力:
参加者の大多数は、主に人材不足やデジタルインフラの不備が原因で、ビジネス拠点としての魅力はドイツにはあまりないと見ている。とはいえ、多くの企業にとってドイツは依然として魅力的な拠点であり、その魅力を確保するための新たな戦略が求められている。
本調査から引き出される提言を下記に示す。
1. 国際的な視点を取り入れる:
経営陣は、グローバル市場でより良い意思決定を行うために、国際的な視点を考慮すべきである。
2. 社会的議論への積極的参加:
役員会や監査役会は、企業の評判を強化するために、政治的・社会的議論により積極的に参加すべきである。
3. 定期的な反省と適応:
役員会の活動は定期的に見直され、変化する課題に適応すべきである。
4. サステナビリティの企業戦略への統合:
企業は持続可能性の側面を戦略的意思決定により強固に組み込み、進捗状況を定期的に見直すべきである。
5. 持続可能性指標の測定と報告:
企業は持続可能性の指標を体系的に測定し、透明性をもって提示すべきである。
6. 持続可能な行動へのインセンティブ:
ボーナスや表彰などのインセンティブ制度を導入し、持続可能な行動を奨励すべきである。
法務アドバイザリー会社Flick Gocke Schaumburgと共同で実施したこの調査結果は、ドイツの企業が幅広い課題に直面していることを示している。 しかし、特に多様性、AI、持続可能性の分野での具体的な対策を通じて、自社の競争力を長期的に向上させる大きなチャンスもあることが示されている。
サーベイはこちらから無料ダウンロード可(ドイツ語)。
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