【キーンバウム】第23回キーンバウム・ピープル・コンベンションを振り返る③
2024年もキーンバウムのピープル・コンベンションが開催された。このイベントは、キーンバウムが毎年開催する人事(HR)やピープルマネジメントに特化したイベントで、各業界の人事担当者や経営者が参加し、講演やワークショップを通じて最新のHRテーマについての知識や実例が共有される。今回は「Next-Gen HR: Building HumAIn Relations」をテーマとし、HR部門におけるAIの活用法、またAIがHRにもたらす影響について、講演、討論が行われた。コンベンションの概要を数回にわけて紹介する。
1.AI導入によってもたらされる課題とチャンスとは: Dr. Lena Lindemann氏の講演
ERGO グループの人事・総務の取締役である Dr. Lena Lindemann は、キーンバウム・ピープル・コンベンションにおいて、人工知能 (AI) の導入によって職場に生じる課題とチャンスについて語った。革新的で未来志向の労働文化を創造するために、ERGOがどのように取り組んでいるかを紹介する。
人工知能の活用は保険業界にとって目新しいものではなく、保険金請求処理や不正行為の検出からリスク評価まで、さまざまな場面ですでに活用されている。ここで重要になるのが、データ保護や規制に関する問題である。Dr. Lena Lindemann によれば、特に興味深いのは、いかにして AI に対する信頼と受け入れを築くかという点である。
彼女は、透明性がここで重要な役割を果たすと強調する。従業員が AI による意思決定のプロセスを理解することで、信頼を築くことができるとしている。彼女の人事部門のモットーは、AI の成長を見守るのではなく、「共に成長する」ことである。従業員は新しい技術を自ら使いこなすことで、それに対する信頼と安心感を得るべきだと述べる。
ERGOグループでは、人事分野で独自の社内GPTを開発した。このGPTは、クローズド・システムとして継続的に開発されており、26,000人の従業員が利用できるようになっている。変革の文化を創造し、ツールの使用を促進するために、同社はモジュール式の研修プログラム、プロンプトライブラリ、マーケティングおよびコミュニケーション戦略など、さまざまな施策に取り組んでいる。全従業員が新技術に慣れ親しみ、それを使いこなすことで自信を持つことが重要である。その際、コミュニケーション形式が重要な役割を果たし、他の従業員にAIについての意識を高める助けとなっている。
Dr. Lena Lindemannは、キーンバウムのディレクターであるDr. Anna-Maria Karlとの対談とそれに続くディスカッションの中で、信頼を築き、新技術に向き合い、職場の未来を積極的に形作る必要性を強調した。
ERGOの人事部門がどのように独自のGPTモデルの活用を推進しているのか、またその目標が達成されているのかについては、録画を参照されたい。
https://www.kienbaum.com/blog/dr-lena-lindemann-ueber-herausforderungen-und-chancen-von-ki/
2.AIの具体的な応用と人事への影響: Sophie von Saldern氏の講演
Kienbaum People Convention 2024のプレゼンテーションで、Covestro AGのHRグローバルヘッドであるSophie von Saldernは、AIがHRオペレーティングモデルや人間とAIの相互作用に与える影響に焦点を当てた。自社開発のAIチャットボットの経験を語る。
プレゼンテーションの冒頭で、HRグローバル責任者であるvon Saldernは、AI時代におけるHRの難しい二重の役割を取り上げている。企業の変革を積極的に支援する一方で、HR機能そのものも変革することが重要だという。
ピープル・コンベンションの他のいくつかの講演とは対照的に、Sophie von Saldernは、AIが自社のオペレーティングモデルに与える即時の影響について、より短期的な視点を示した。彼女とそのチームはCovestro社でいくつかの経験を積んでおり、影響も感じているという。例えば、Covestroが独自に開発したHRチャットボット「Tailor 」は、カスタマイズされた回答や個別のサービスを提供する。回答はまず知識ベースで行われ、次に文脈に基づいて調整がなされる。入力者のデータに基づいて、カスタマイズされた最適な提案を行う仕組みである。Von Saldernによれば、AIはデータ主導の意思決定、効率の向上、従業員体験の改善に役立つという。
Von SaldernはHRの変革について論じ、新たなスキルや職務プロファイルの必要性を強調する。また、AI導入における倫理、規制、品質保証の重要性についても強調し、AIトランスフォーメーションにおける人事部門の役割を最後に指摘した。
全講演と分析は録画でご覧いただけます(ドイツ語)。
https://www.kienbaum.com/blog/sophie-von-saldern-people-convention-ki-anwendungen-hr/
キーンバウムのピープル・コンベンション
キーンバウムが毎年開催する人事(HR)やピープルマネジメントに特化したイベントで、今年で開催23回目。最新のHRトレンドのほか、技術革新、特にデジタル化やAIのHRにおける影響や活用法に焦点を当て、企業の人事担当者や経営者による講演やワークショップを通じて知識や実例が共有される。
執筆
キーンバウム編集部
contact@kienbaum.de
本記事はニュースレター2024年第5号に掲載されたものです。
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2024/11/Newsletter_No_5_2024_JP.pdf
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【キーンバウム・コンサルタンツ・インターナショナル】
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【キーンバウムジャパン】
キーンバウムのコンサルティング業務のノウハウを活かし、日本におけるエグゼクティブサーチを目的に設立。豊富な海外ビジネス経験を背景に、クライアントのニーズを徹底的に把握し、一貫した信頼関係の中で候補者を絞り込む。雇用契約締結だけでなく長期的な人材コンサルティングのパートナーであり続けることを目標とする。
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