【キーンバウム】報酬の透明性:委員会報告と法整備の間で
2025年11月7日、連邦教育・家族・高齢者・女性・青少年省が設置した「報酬透明性指令の官僚主義を排した実施」に関する委員会は、長らく待たれていた最終報告書を提出した。これにより、多くの企業に広範な影響を及ぼすプロセスが動き出す。ドイツは2026年6月7日までにEU指令を国内法に移行しなければならない。同省は、今回の報告書と2024年10月の法案原案を踏まえ、2026年1月に立法手続きを開始する予定である。
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タイムラインは非常にタイトだ。2026年6月7日以降、企業には最初の義務が課される見込みであり、違反手続きのリスクを避けるため、政府は迅速な対応を目指している。しかし、その義務を果たすには、実務面・法的面で多くの課題がある。本委員会の設置は、こうした課題を整理するためであった。
多様な視点、乏しい明確性
最終報告書は、明確な行動指針というより、議論の現状をまとめたものだ。社会的パートナー、業界団体、法学者など、さまざまな立場の意見が反映されており、全員が合意することは難しかったのである。
注目すべきポイントは次の三つである。
- 情報開示権の導入時期
EU指令は2026年半ばまでの実施を求めているが、委員会の多数派は2027年6月への延期を提案している。 - 労働協約に基づく企業の扱い
労働協約を結んでいる企業はEU基準を満たしているとみなす「適正性の推定」について議論されたが、結論は出なかった。 - 報酬の定義
報告の基準を「実際の支給額(Ist-Entgelt)」にするか、「目標報酬(Zielentgelt)」にするかで意見が分かれている。この違いは、企業のデータ準備や作業負担に大きな影響を与える。
一方で、企業の負担を軽減するための前向きな提案も含まれている。例えば、社内に適切な比較対象がない場合、仮想的な比較対象を設定しなくてもよいとする考え方や、「その他の報酬要素」の扱いに柔軟性を持たせる案である。
委員会の多数派は、企業が補足的・変動的な報酬要素を合計で示すか、個別に示すかを選べる「開放条項」を提案している。このような提案は、官僚的な負担を減らす実施方法のヒントになる。ただし、政府は指令の内容から逸脱しない方針を明確にしている。
報告書が示すものと示さないもの
企業にとって明確な行動指針を期待していた場合、報告書は物足りないだろう。これは議論の記録であり、実務のためのガイドではないからである。委員会は幅広い視点を集めて構成されており、全員の合意は難しかったのである。
つまり、企業にとって不確実性は続く。何が求められるのか、義務や救済手続きの詳細、労働協約がどこまで保護になるのか――これらは法案の公表まで不明である。
そして、法律が施行されても、解釈の余地は残るだろう。完全な明確性を期待するのは難しいのである。
私たちの提言:「待つ」のではなく「行動」を
こうした状況だからこそ、企業は今の時間を活用すべきである。今後数か月を活用し、義務への準備を進め、データの不足を確認し、初期分析を実施すべきである。私たちが多くのプロジェクトで見てきたのは、早く動いた企業ほど主導権を握り、透明性を単なる法的義務ではなく、公平性や信頼性、そして雇用主としての魅力向上の機会に変えているという事実である。
報酬・パフォーマンス管理の専門家として、私たちはこの準備期間をしっかり支援する用意がある。現状の把握から、公平な報酬体系の設計、法的に確実な報告まで伴走することができる。不確実性は残る。これは今回唯一確実になったことだ。しかし、できる限り安心して行動できるよう、私たちは支援を怠らない。
今行動することで、企業は選択肢を広げ、報酬の透明性を義務ではなく、信頼性や公平性、そして採用力を高める機会として活かせる。私たちはその実現を支援する。経験と体系的なアプローチ、そして明確な指針をもって。
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キーンバウムの「イコールペイ・レディネス・チェック」
Equal Pay Readiness Check
EUの報酬透明性指令への対応準備は整っているだろうか。Kienbaumの「Equal Pay Readiness Check」を活用すれば、わずか数分で自社が今後の報告義務にどれほど備えているかを確認できる。10の質問に答えるだけで、現在の準備状況を即座に評価し、EU要件を効果的に満たすためのポイント、そして雇用主ブランドを強化するための具体的なヒントを得ることができる。チェックは無料。
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執筆
Dr. Michael Kind
Director | Compensation & Performance Management
Dr. Vera Bannas
Manager | Compensation & Performance Management
Jörg Scholten
Managing Director, Partner | Compensation & Performance Management
オリジナル記事(ドイツ語):
https://www.kienbaum.com/blog/entgelttransparenz-zwischen-kommissionsbericht-und-gesetzgeberischer-klarheit/
本記事はキーンバウム・ジャパンのニュースレターNo.6/2025号に掲載されました。
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2025/12/Newsletter_No_6_2025_JP.pdf
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【キーンバウム・コンサルタンツ・インターナショナル】
キーンバウムは1945年にドイツで創業された、欧州発のHR専門コンサルティング会社です。世界4大陸・26都市に拠点を持ち、グローバルな人材・組織支援を展開しています。「人と組織に未来を」という理念のもと、エグゼクティブ・サーチ、リーダーシップ&マネジメント・コンサルティング、報酬・人事制度設計、キャリア支援など、HR領域全般にわたる総合的なサービスを提供。日系企業の欧州進出支援にも注力しており、異文化統合や現地人材の活用に強みを持っています。国際経験豊富なコンサルタントが、言語・文化の壁を越え、キーンバウムの高品質なサポートを提供いたします。
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キーンバウム・ジャパンは、2006年に設立された日本法人で、グローバル人材に特化したエグゼクティブ・サーチを中心にサービスを展開しています。また、報酬制度設計やパフォーマンスマネジメントなど、コンペンセーション領域のコンサルティングも提供し、企業の人材戦略を多面的に支援しています。外資系企業やグローバル展開を目指す日本企業を対象に、経営層や専門職の採用支援を実施。異文化理解や海外経験を重視した人材の発掘に強みがあり、欧州・アジア市場への進出支援においても高い専門性と実績に定評があります。リテイナー型のサーチを基本とし、採用後も継続的なパートナーとしてクライアント企業をHRのすべての面からサポートいたします。
https://international.kienbaum.com/japan/
(3月4日の同社プレスリリースより転載)





