【キーンバウム】サステナビリティの意義が揺らぐ今、問われるリーダーシップとはーブレイブ・リーダーシップ・セッション
サステナビリティは、そもそも今も重要なのだろうか。
政治的な逆風を踏まえると、この問いは妥当に聞こえるかもしれない。しかし、最近実施された「Brave Leadership Session」において、登壇した専門家たちは明確な考えを示した。すなわち、サステナビリティは一時的な流行ではなく、企業音リーダーに対して進級の課題をもたらす永続的なテーマである、と。優れたリーダーシップにおいて重要なのは、感情的な反発のないアプローチと、矛盾に耐え、前に進む能力にある、と、彼らは指摘する。
今回のセッションは「体系的な不確実性の時代における勇気ある意思決定」と題して、Kienbaum の専門家である Kim-Sandy Eichler と Inge Wölfler が、依然として高い時事性を持つサステナビリティについて、さまざまな角度から語る2名のゲストを迎えた。Fährmann-Organisationsbegleitung の代表パートナーである Meike Frese と、ProPotsdam の 代表取締役である Jörn-Michael Westphal である。
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注意:風向きは変わる
Meike Frese は、サステナビリティとの向き合い方を説明するために、印象的な「天候」のメタファーを用いた。
2019年、EU は グリーンディール を「安定した高気圧」のもとで開始した。幅広い支持、野心的な目標、そして「世界初の気候中立大陸」というビジョンが掲げられていた。しかし2025年、EU の オムニバスパッケージによって ESG 規制は大幅に後退した。理由は6年前と同じく、「欧州経済の競争力を強化するため」である。
Frese によれば、多くの人々は グリーンディール を「壮大なアピール」と受け止め、迅速な実行を期待した。しかし問題は、アピールが大きければ反発も大きくなる、ということだ。結果として対立は深まり、雰囲気は不安定になり、「サステナビリティは官僚主義の怪物だ」と反発する層と、「規制後退は未来への裏切りだ」と憤る層の間で深い分断が生まれた。
2026年初頭の現在、私たちは「分かったようで分からない」擬似的な明朗さの中にいる。一部の規制パッケージについては企業も方向性をつかみつつあるが、長期的な見通しは依然として霧の中である。サステナビリティは一時的に勢いを失ったかもしれないが、終わったわけではない。
イデオロギーではなくレジリエンスとして捉える
リーダーシップの観点から Frese は、視点の転換を提案する。すなわち、サステナビリティを道徳的・イデオロギー的問題としてではなく、レジリエンス(適応力)の問題として捉える、ということである。
この姿勢により、「サステナビリティが良いか悪いか」という議論から、より重要な問題、すなわち「これから起こることへの備えができているか」という議論へと焦点が移るのである。
サステナビリティは天気と同じだ、とFreseは述べる。「天気は常に存在する」ものだ。それは、外部にサステナビリティに関する課題(環境、経済、社会における課題)が存在するという事実と同様に、受け入れる必要がある。これらの課題は今後も存在し続けるため、議論で解決しようとエネルギーを浪費することは賢明ではない、とFreseは述べる。必要なのはむしろ、柔軟性と曖昧さへの耐性を備えた、この問題への対処法である。
状況に応じてスタイルを切り替える
すべてのリーダーには、お気に入りのジャケットのように、サステナビリティへの向き合い方において「自分好みのスタイル」がある。迅速に行動する、つまり先駆者となるタイプもいれば、まずは落ち着いて状況を見極めるタイプもいる。どちらのスタイルにも利点がある。
重要なのは、状況が変わったときに、いつものスタイルに固執せず、別のスタイルへと切り替える柔軟性を持てるかどうかである。ゲスト2名は、この姿勢は経営陣が率先して示し、組織全体に浸透させてこそ意味を持つと一致して指摘した。これが欠ければ、抵抗や不要な内部対立が生じ、貴重なリソースが無駄に消費されるだけだという。
ProPotsdam:サステナビリティは企業のDNA
Jörn-Michael Westphal は、サステナビリティを「選択肢」ではなく「存在理由」とする企業の視点を示した。ProPotsdam は 18,000戸の住宅を所有する10社の社会住宅事業会社からなる企業グループであり、その名称にはすでに社会性と経済性が表れている。また、環境的に持続可能な活動を行うことは、経営陣の意志であると同時に、法的規制にも起因している。3つの柱のいずれかを疎かにして目標を達成できなければ、将来的に建設資金調達が難しくなる可能性がある。
ProPotsdam はさらに一歩進み、「参加」をサステナビリティの第4の柱として位置づけている。
2007年には、同社は全従業員を映画館に招き、映画『不都合な真実』を上映し、改善案を募った。入居者にもアンケート調査を行い、多少のコスト増があっても再生可能エネルギーへの切り替えに前向きであることが明らかになった。長年にわたる一貫した取り組みの結果、1990 年比で 85% の CO2 削減を達成(市および市営企業と協力)、複数の KfW 賞の受賞、高齢者による小さな住宅への引っ越しを容易にする居住面積ボーナスなどの革新的な手段の導入、といった成果が実現した。これは高齢者にとっても、より広い居住空間を必要とする家族にとっても、そして CO2 排出量削減にとっても良い結果となっている。
目標の矛盾を受け止め、議論で回避しない
両名のゲストは、サステナビリティとは常に「社会・経済・環境」の三つ巴で絶えず生じる目標の矛盾を意味すると指摘する。重要なのは、この矛盾を解消することではなく、それを受け止め、建設的に取り組むことである。
この文脈において、「勇気」という概念は、頑固に何かを押し通す個人の勇気として理解すべきではない、と、Westphal は説く。ProPotsdam では、むしろ、リーダー層の綿密な連携、定期的なプロジェクト会議、参加型の意思決定、を重視しており、それが組織全体の一体性を高め、全体として「勇気ある組織」をつくっているという。開放性、創造の余地、賢明なフィードバックの習慣、心理的安定性は、そのための重要な基盤である。
曖昧さへの耐性が鍵
この複雑な状況下で、リーダーに求められる能力とは何か?2名のゲストは口をそろえて、「曖昧さへの耐性」と「不確実性への向き合い方」、と答えた。ここでFreseは、ある繊維企業の経営責任者のエピソードを紹介した。同社は野心的なサステナビリティ戦略を打ち出していたが、その半ばで、フェアウェア(完全にサステナブルな衣料品)のリーダーとなる、という目標は野心的すぎると判断し、目標の取り下げを検討した。しかし、サステナビリティチームは12ヶ月の猶予を求めた。この経営者は不安を抱きつつも、耐えて支援を続けた。結果、同社は実際にフェアウェアの牽引企業となったのである。
「それがこの経営者の“変革の瞬間”であった」と Freseは語る。「その時、彼女は勇気とは何なのかを理解したのだ。」
結論:感情に流されずに舵を取る
今回のセッションから明らかになったのは、サステナビリティは形を変えても存続し続けるという事実である。問題は企業がそれに「取り組むべきかどうか」ではなく、「どのように取り組むか」である。Westphal は、サステナビリティとは本質的には「長期的成果に向けた先見的な企業行動」であると述べた。
そのように捉えると、人々はサステナビリティをそれほど否定的に感じなくなると Frese は言う。重要なのは、人々の感情を受け止め、発言権なく強制されているように感じさせないことである。
サステナビリティの文脈における 「Brave Leadership、勇気あるリーダーシップ」 とは、感情的反発に巻き込まれず、冷静に舵を取り、参加を真剣に受け止め、目標間の対立に耐え、天候の変化に応じてジャケットを着替える柔軟性を持つこと、である。
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執筆
キーンバウム編集部
オリジナル記事(ドイツ語):
https://www.kienbaum.com/blog/brave-leadership-mutige-fuehrung-nachhaltigkeit/
本記事はキーンバウム・ニュースレターNo.1/2026に掲載されたものです。ニュースレターは下記リンクからご覧いただけます。
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2026/03/Newsletter_No_1_2026_JP.pdf
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https://international.kienbaum.com/japan/
(4月15日の同社プレスリリースより転載)



