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キーンバウム、【欧州人事トレンド】週休3日制は利益をもたらすか?キーンバウムのパフォーマンス・マネジメント

かつて金銭との交換対象となったのは、時間やアウトプットやパフォーマンスなどであった。しかし今日では、多くの働く人にとって、週休3日制などの柔軟性の要素が重要になってきている。

優秀な人材を獲得し引き留めておくためには、非金銭的なベネフィットがますます重要となってきている。とりわけ若い世代が就職先を選ぶ際、この要素の重要性は増してきている。ターゲットを絞ったピンポイントでのオファーやコミュニケーションを通じて、企業は従業員体験と雇用者ブランディングをポジティブに強化することができ、労働市場の様々な課題に最適な状態で対処できるのである。その際重要なのは、ターゲットとなる人々の具体的な嗜好に合わせることである。かつては、時間とお金の交換、あるいはアウトプットやパフォーマンスとお金の交換が中心であった。しかし今日では、多くの従業員にとって、フレキシビリティの要素が、働く場所だけでなく、労働時間の編成にも特に重要となってきているのである。

報酬の状況(※)を分析するために必要なことは、従業員と企業、双方のニーズの比較である。柔軟性を求める原動力となるのは、嗜好、ライフステージ、収入と言った、従業員の個々のニーズである。ここでは特に柔軟で適応性の高い労働時間制度が受け入れられる。また、(心の)健康、生涯学習、生きがい選択といった側面もますます重要になってきている。ターゲットとなるグループにおけるこれらの志向をうまく実現している企業は、従業員の採用や定着において優位に立つことができる。

フレックスタイム制への対応は、企業にとって必ずしも容易なことではない。その理由は、スタッフの出勤時間を共通化することで、最適な業務編成を実現していることにある。企業側の視点からは、適切な対応と納期を含め、顧客ニーズを確実かつ経済的に満たすことがオペレーションの枠組みを支配している。では、社員の希望に応えるにはどうすれば良いのだろうか。現在、週休3日制が議論されることが多くなっている。この議論自体は以前からあったものだが、実際にこれは何を意味するのだろうか。勤務時間の縮小は、どのようなテコ入れになるのだろうか。

【週休3日制モデル】

1850年当時、炭鉱で働く人々の労働時間は週80時間を超え、そのほとんどが週6〜7日、12〜14時間程度の過酷な肉体労働であった。機械の普及や社会の価値観の変化により、労働時間は最初は10時間、後に8時間に短縮された。1960年代から70年代にかけて、ドイツでは週40時間制が定着した。そして今、労働時間の更なる短縮は、どのようなものとなるのだろうか。

様々なシナリオが考えられ、メディアの議論でも論点が入り乱れていることが多い。肝心なのは、具体的な労働時間と賃金の構成要素である。実用段階では、次の4つのモデルが確認できる。

・労働時間を4日間32時間に短縮し、それに伴い給与を直線的に削減する(パートタイムモデル)。
・労働時間を4日間で32時間から36時間に短縮し、給与は変更しない(ワーク・コンデンス)
・労働時間を4日間で32時間から36時間に短縮し、減給分を労使で折半する(参加型モデル)。
・通常の労働時間(例えば40時間)を4日間に変更し、給与は変更しない(勤務時間移転)。

最初のモデルは、すでに多くの企業でパートタイム形式として長く普及しており、従業員と雇用者の双方で定着し、認知されている。第2モデルと第3モデルについては、ナレッジワークの分野で、生産性と満足度という観点から白熱した議論が展開されている。様々な研究から、人は限られた時間しか集中できないことが明らかになっており、1日の労働時間が8時間(または第2モデルのようにそれ以上)であっても、労働時間を基準に安定した生産性の出力は得られないことが示唆されている。また、イギリスのある調査では、約2000人のオフィスワーカーを対象にした匿名調査で、回答者の日中の実働時間が3時間をさらに下回っていることが明らかになっている。

このことは、4日間で40時間を維持することが、4日間で32時間から36時間の労働時間と比較して、実際の生産量の増加を示すだろうか、という問いにつながる。この複雑な問題に対する最終的な答えはまだ出ていないが、最初の実用例はすでに存在するので、そこから手がかりを探ってみたい。

【週休3日制 – 実務での事例】

2021年6月、独立系シンクタンク「オートノミー」がアイスランドの労働時間短縮に関する調査結果を発表した。2500人以上が、賃金は据え置きで、週40時間の労働時間を35〜36時間に短縮し、週4日だけ働くようになった。その結果は一貫してポジティブなものであった。

・パフォーマンスと生産性は維持され、さらに向上も見られた。
・非正規の時間外労働の増加は見られなかった。
・作業工程は通常、問題なく適合させることができた。
・従業員の健康と福祉が向上した。

この結果を受けて、アイスランドでは多くの雇用者と従業員が労働時間の短縮に取り組み、現在では働くアイスランド人の約86%が労働時間を短縮している。

もう一つ有名なのは、日本のマイクロソフトの例である。2019年、2300人の社員が給与据え置きで週4日労働となった。ここでも、従業員の生産性が明らかに向上し、前年同期比で約40%のパフォーマンス増加が見られた。

さらなる手がかりは、2022年11月まで実施される英国での調査によって得ることができるかもしれない。非営利団体「4 Day Week Global」の取り組みには、70社以上、3300人以上の従業員が参加している。この試みも、賃金を据え置いたまま労働時間を短縮(この場合は32時間まで)するものである。ここでも生産性が維持されるか、あるいは向上するかは、実験終了後に判断することになる。

ドイツ語圏では、採用難に悩む中小企業を中心に、週休3日制を導入しマーケティングツールとして活用しているケースが見受けられる。このような場合、週休2日制に比べて労働時間を少し減らし、賃金は変えないというモデルが最も広く使われている。企業側の報告によると、従業員の満足度が向上し、求人の応募が増えたという。また、機械メンテナンスのコストも削減されたと言う。生産性が低下したとしても、ここで相殺が可能である。

しかし、週休3日制に前向きな企業の中でも、部署間の公平性が崩れ、問題が起こる可能性が高いという意見もある。ナレッジワーカーや比較的自律的な部署では、製造部門や顧客志向の強い部署に比べて、導入がはるかに容易だと考えられるからである。部署によるフレキシビリティの違いから生じる社内構造の二分化は、機会均等の感覚、ひいては従業員の総合的な満足度にマイナスの影響を与える可能性があるのだ。したがって、週休3日制の導入は、多面的に検討する必要がある。

【代替モデル】

プロジェクト作業や労働が集中する期間のある企業において、労働時間をより柔軟にするために普及している長期特別休暇は、依然として魅力的な選択肢となり得る。週休3日制を導入できない企業では、これまで通り休日を増やすことで、少なくとも部分的には、自由時間を確保したいという希望に応えることができる(「夏休み」「フリーフライデー」「グッディデー」等)。また、サバティカル休暇や教育訓練休暇は、柔軟性を求める声や個人の能力開発の必要性が高まりを考慮したシステムである。同時に、これらの特典は雇用者ブランディングという観点からも有益である。ソーシャルデイ、つまり社会貢献のための休暇を「タイムギフト」として提供することも可能である。これは、企業の社会的インパクトを高めると同時に、個人のフレキシビリティを高めることにもつながる。

【結論】

このように、週休3日制への移行について、最初の実用例ではポジティブな効果をもたらすという結果が得られている。しかし、このトピックについての完全な調査はまだ始まったばかりであり、ドイツにおいて企業がどのような形式で導入できるのかについては、まだ検討の初期段階にある。生産性を維持しながら労働時間を具体的に短縮することは、組織のあり方として興味深い選択肢であり、特に企業文化、産業、業務プロセスとの関連で検討する必要がある。労働時間と労働研究の発展の歴史という観点から、このトピックに対する世界的な関心と、このようなシステムを導入しようとする勇気ある試みは、興味深いステップであり、このテーマは今後数年間で重要性を増していくと考えられる。

※ https://www.kienbaum.com/de/leistungen/compensation-performance-management/

本記事はComp&Ben 5号/2022年10月号に掲載されたものです。最新号はこちらからご覧ください(ドイツ語)。
https://www.totalrewards.de/comp-ben/magazin/

キーンバウムのコンサルティング:パフォーマンス・マネジメント
下記リンクをご参照(ドイツ語)、または日系企業グループまでお問い合わせください。
https://www.kienbaum.com/de/leistungen/compensation-performance-management/performance-management/

執筆
Timo Meyer
Consultant | Compensation & Performance Management

Laura Felicitas Geyer
Manager | Compensation & Performance Management

オリジナル記事(ドイツ語):
https://www.kienbaum.com/de/blog/die-viertagewoche-eine-option-mit-gewinn/

本記事はニュースレター2022年No.5に掲載されたものです。ニュースレターは下記よりご覧いただけます。
https://media.kienbaum.com/wp-content/uploads/sites/13/2022/11/Newsletter_No_5_2022_JP.pdf

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