【小売・流通分野の中途採用】異業種に転職する経験者が多く、異業種からの転職者は増えず採用難

日本人材ニュース

パーソルキャリア
桜井 貴史 doda編集長

【PROFILE】新卒で大手人材会社に入社し、一貫して国内外の学生のキャリア教育や就職・転職、幅広い企業の採用支援事業に携わる。2016年11月、パーソルキャリアに中途入社。同年、ベネッセホールディングスとの合弁会社、ベネッセi-キャリアに出向、新卒オファーサービス「dodaキャンパス」の立ち上げを牽引し、初代dodaキャンパス編集長に。その後、同社商品サービス本部本部長として、キャリア講座やアセスメントをはじめとした、大学生向けサービスの責任者を務める。2023年4月、doda副編集長兼クライアントP&M本部 プロダクト統括部エグゼクティブマネジャーに就任し、法人向け採用支援プロダクト全体を管掌。2024年4月、doda編集長に就任。サービスを通じてこれまで60万人以上の若者のキャリア支援に携わり、Z世代の就職・転職動向やキャリア形成、企業の採用・育成手法に精通している。

小売・流通業界はともに売り手市場で、採用難易度が高い状態が続いています。コロナ禍を経た2021年以降、求人数は増加する一方で、勤務条件を理由に異業種に転職する経験者が多いことや、異業種からの転職者が増加していないことなどが考えられます。

小売業界においては、円安・物価高を受けた内食・中食需要を背景に、大手総合スーパーが地方に多数出店し、管理職から現場スタッフポジションまで幅広い求人が増加傾向にあります。流通業界でも、業界全体の平均年齢が上昇していることから、若手層や未経験者の採用に力を入れています。

また小売・流通ともに、品出しのロボット化・自動運転の試験開始などIT活用による業務効率化が進んでいます。転換期となる現在は、残業時間削減を目的に販売やドライバーをはじめとする現場スタッフの採用が活発な状況ですが、今後はITの専門職などの採用ニーズも増加していくでしょう。

個人側ではキャリア形成やはたらき方の柔軟性を求めて経験者の多くが異業種に転職する傾向があります。例えば小売では、はたらく場所や時間を固定したい・年収を上げたいという希望や、キャリアパスが頭打ちになる不安などが背景にあります。流通では、ドライバーを中心に体力面の不安や25年問題の残業抑制による給与低下などが転職理由として挙げられています。

ビジネスモデル上、全国転勤を伴う就業形態も多い小売・流通業界が採用成功を目指すためには、都心部ではいかに他企業と年収面で戦えるか、地方では多くの応募を集められるかがポイントになります。転勤の可能性や期間は事前に打診時期や目安となる勤務年数を伝えるなど、個人の希望を踏まえた上で解像度高く説明することが重要であり、これにより転勤を受け入れて採用につながったケースもあります。

また最近では、ベースアップや成果主義を取り入れるなどの待遇改善を行う企業も徐々に増えてきています。さまざまな課題に着実に対応していくことで、採用成功につなげられるのではないでしょうか。

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