【著者が語る】なぜあなたの組織では仕事が遅れてしまうのか?職場で起こる「先延ばし」を科学する

ビジネスリサーチラボ 黒住 嶺 フェロー

ビジネスリサーチラボ
黒住 嶺 フェロー

【PROFILE】ビジネスリサーチラボ フェロー。学習院大学文学部卒業、学習院大学人文科学研究科修士課程修了、筑波大学人間総合科学研究科心理学専攻博士後期課程満期退学。修士(心理学)。日常生活の素朴な疑問や誰しも経験しうる悩みを、学術的なアプローチで検証・解決することに関心があり、自身も幼少期から苦悩してきた先延ばしに関する研究を実施。教育機関やセミナーでの講師、ベンチャー企業でのインターンなどを通し、学術的な視点と現場や当事者の視点の行き来を志向・実践。その経験を活かし、多くの当事者との接点となりうる組織・人事の課題への実効的なアプローチを探求している。

ビジネスリサーチラボ 伊達 洋駆 代表取締役

ビジネスリサーチラボ
伊達 洋駆 代表取締役

【PROFILE】神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年にビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『イノベーションを生み出すチームの作り方 成功するリーダーが「コンパッション」を取り入れる理由』(すばる舎)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。

「なぜ、うちのチームは仕事の着手が遅れるのか」──そうした悩みの背景には、“先延ばし”という行動が潜んでいます。先延ばしとは、抱えているタスクを「やるべきだ」と理解し、遅らせるべきではないと自覚しながらも、着手を遅らせる行動といわれています。

これまで先延ばしは、本人の怠慢や意志の弱さといった「個人の問題」として捉えられてきました。しかし、本書『なぜあなたの組織では仕事が遅れてしまうのか? 職場で起こる「先延ばし」を科学する』では、その見方の根本を問い直し、“組織の課題”として先延ばしをとらえる視点を提供します。

その理由は、私たちが先延ばしの研究を進めるなかで、「本人が頑張れば改善する」といった個人の努力に依存する対策では限界があると強く感じたためです。

実際に先延ばしは、曖昧な指示や目標の不明確さ、過度な完璧主義を求める職場文化など、環境や組織構造とも密接に関係しています。また、個人の努力によって対策を進めるということは、そうした環境要因の改善が置き去りにされかねません。

すると、チームのメンバーが入れ替わりなどにより、同じ問題が再発するリスクが残ります。つまり、先延ばしを組織の課題として捉え直すことは、問題の根本的な解決へとつなげることができるのです。

本書では、こうした視点から、先延ばしに悩む19の職場のエピソードを紹介しています。例えば、失敗を恐れて動けなくなる部下に対し、どのような声かけや支援が必要なのか。あるいは、漠然とした目標やモチベーションを保ちづらいお役所仕事に向き合う上司や同僚へ、どうすれば行動を後押しできるのか。

そうした先延ばしの対策を、「構造的な課題」として見つめ直し、個人と組織がどう向き合えばよいかを具体的に提案しています。

本書は、自分自身の先延ばしに悩む方はもちろん、チームを率いるマネジャー、職場の仕組みづくりに関わる全ての方に読んでいただきたい一冊です。「誰か一人を責める」のではなく、「組織として変わる」ためのヒントが、ここにあります。

なぜあなたの組織では仕事が遅れてしまうのか?

黒住嶺・伊達洋駆 著
日本能率協会マネジメントセンター
1,600円+税

【関連記事】

▼人事専門誌「日本人材ニュース」はこちらでお読みいただけます

PAGE TOP