【翻訳者が語る】Conflict ―関係性の4つのフェーズを見極め、あらゆる対立の場に変容をもたらす

松村 憲 バランスト・グロース・コンサルティング 取締役

バランスト・グロース・コンサルティング
松村 憲 取締役

【PROFILE】教育系企業(東証一部上場)にて、部長等マネジメント経験、研修や相談対応・社員面談を経験。危機管理やコンプライアンス対策も担当。その後、独立。一般社団法人日本産業カウンセラー協会東京相談室元室長。現在は、「ハラスメント・メンタル対策こそ組織のあり方を変える」をテーマに、研修・カウンセリング・コンサルティングを組み合わせて企業支援を行っている。複数の組織でハラスメント防止委員会の委員、一般社団法人日本産業カウンセラー協会産業カウンセラー養成講座協会認定実技指導者。研修:年間約120回、カウンセリング:年間のべ223人、コンサルティング:年間約70回

人間の歴史は、対立の歴史でもあります。アーノルド・ミンデル(2024年没)は、その対立を「理解し合いたいという魂の叫び」と捉え、個人から社会まで、あらゆる関係性の変容を探究し続けた心理学者です。

MITで物理学を学び、後にユング派分析家となった彼は、物理学と深層心理学、さらには量子論・仏教・先住民の叡智を統合し、独自の心理学「プロセスワーク(プロセス指向心理学)」を生み出しました。

『Conflict(コンフリクト)』は、ミンデル晩年の集大成ともいえる一冊であり、関係性の変化を「4つのフェーズ」として体系化しています。恋愛や家族、職場、チーム、組織など、あらゆる関係性は「楽しむ(フェーズ1)」「衝突(フェーズ2)」「理解(フェーズ3)」「無心(フェーズ4)」という自然の流れをたどります。

特にフェーズ2の「対立」は、多くの組織が避けがちな段階ですが、実は最も変容の可能性が高い時期であるとミンデルは説きます。そこに潜む感情や声を受け止め、対話を通じて表現することが、チームの成熟と創造性をもたらす鍵となるのです。

さらに本書では、現実・夢・本質という三層の意識を行き来しながら課題を扱う「721フィードバック」手法が紹介されています。これは、個人の内面と組織の構造、リーダーとメンバーの相互影響を統合的に捉えるための実践的アプローチであり、リーダーシップ開発や組織変革にも応用できます。

ミンデルが遺したメッセージは明快です。「私たち一人ひとりに、世界を変える力がある」。

本書は、対立の中にこそ成長と創造の芽があることを教えてくれる、現代のリーダー・人事担当者にとって必読の書です。プロセス指向心理学の創始者アーノルド・ミンデルの最新刊を英治出版を通じて刊行いたしました。

ありたい未来を目指すために避けがたい「コンフリクト」にいかに向き合い創造性に変えていくか。現代にこそ必要な指南書です。

Conflict(コンフリクト)

アーノルド・ミンデル(著)
松村憲、松井美歩(翻訳)
バランスト・グロース・コンサルティング(監訳)
英治出版
4,400円+税

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