リブ・コンサルティング
権田 和士 常務取締役兼CHRO
組織という名のモンスターに立ち向かう
「組織で生じる様々な問題に特定の戦犯はいない」。それが、数百社の人事組織を見てきたコンサルタントとして実感するところです。
人事部門に属する皆さんであれば、日常的に耳にするであろう組織の問題の多くは、「組織」という実態のないものを擬人化し悪者にした不平不満ではないでしょうか。例えば「本社は何もサポートしてくれない」「あの支社は全く言うことを聞かない」「営業部は我儘ばかり言う」「開発部はちっとも融通が利かない」等。まるで「本社」「支社」「営業部」「開発部」が人格を成しているかのような口ぶりですが、そこに実体はありません。
「組織」という偶像を悪者にすることで、不満を口にしやすくしているに過ぎないのです。こうして意識の中で自己増殖していく組織という名のモンスター(偶像)にどう立ち向かうべきかを、組織にありがちな問題にフォーカスしながら描こうと考えました。
組織論はストーリー(物語)で学ぶことに意味がある
本書は、当社が携わった実例を元にした8つの組織変革ストーリーで構成されています。物語形式にこだわった理由は、人や組織の問題は一般論で語れるものではなく、経験値がものをいう世界だと考えるからです。その経験値を補うためには、ケーススタディという方法で様々な事例を疑似体験することが効果的だと考えています。
例えば若手の離職率が高い組織をとってみても、根本的な問題が「上司のマネジメントスキル」、「仕事内容と本人特性の不一致」、「評価が適正でない」、「キャリアパスが魅力的でない」、あるいはその全てなのか様々です。従って、評価制度を変えれば解決されるなどということはなく、その企業の理念や目指すビジョン、戦略との一貫性も踏まえれば、解決手段は組織の数だけ存在します。つまり「正解」はなく「最適解」を選ぶしかないのです。
本書を通して、人事の専門家である皆さんの経験という名の引き出しを補うことができれば幸いに思います。
リブ・コンサルティング 著
権田和士 監修
実業之日本社、1,700円+税
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